38.《ネタバレ》 オムニバス映画といえば、真っ先に頭に浮かんでくる映画「世にも怪奇な物語」。
タイトルがそそりますし、傑作であると思っていました。今回あらためて観直して納得しました。
ストーリーが面白いというよりは、映像や雰囲気がとても素晴らしいんですね。
エドガー・アラン・ポーの原作をロジェ・ヴァデイム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニという名監督がそれぞれ映像化しています。
122分の間に3本の映画を観ることができて、とても得した気分になれます。
第1話「黒馬の哭く館」は、ロジェ・ヴァデイム監督、主演は当時、ヴァディム監督の妻であったジェーン・フォンダ、共演に実弟のピーター・フォンダというゴージャスさです。
いつの時代でどこの国かわかりませんが、お城が出てくるコスプレものです。
それにしても、姉のジェーン・ファンダは、若い頃から晩年まで確執のあった父親のヘンリー・フォンダにそっくりです。
弟のピーター・フォンダは、「イージー・ライダー」でブレイクする前ですので、まだまだ初々しくて若いですね。
ジェーンは性格の悪い館の主で貴族の令嬢を演じていますが、とても憎たらしいキャラなのに美女なので、さほど気になりません。
第2話「影を殺した男」は、ルイ・マル監督、主演はアラン・ドロン。まさに20世紀を代表する世紀の二枚目俳優アラン・ドロン。まさに水もしたたるいい男です。
自分と全く同じ名前の人物が現われ、自分の行動を諫めようとする。とうとう彼は、もうひとりの自分を殺してしまうという物語です。
アラン・ドロンという俳優は、若い頃はルネ・クレマンやルキノ・ヴィスコンティ、ミケランジェロ・アントニオーニといった世界的な巨匠と言われる映画監督の作品に意識して出演していて、今回のルイ・マル監督のようなヌーヴェル・バーグの映画監督たちとは一定の距離を置いていたため、この作品はそういう意味からも本当に貴重な作品になっていると思います。
そして、尚且つアラン・ドロンがホラー映画に出演しているのを観るのもとても新鮮でした。
まあ、ホラーと言ってもホラー度はかなり低いのですが。
第3話「悪魔の首飾り」は、フェデリコ・フェリーニ監督、主演は「コレクター」に出演してエキセントリックな個性が光っていたテレンス・スタンプ。
この第3話が、評判が一番いいようですね。ストーリー性はあまりなく、映像の力でグイグイ引き付けるタイプの映画です。
主人公がアル中で朦朧としているので、映像自体もシュールで意味不明なところが多々あります。
そして、迫力のある怖いラストシーンは、一見の価値があると思います。
3話とも、ストーリーそのものはシンプルなのですが、それぞれの演出が卓越しているので、本当に見応えがあります。
アラン・ドロンが大好きなせいか、私は彼が出演している第2話に一番心惹かれました。
オムニバス映画はあまり観るチャンスがないので、今回再び観れてとても良かったと思います。
この映画のように、不思議でファンタジックで、それでいて怖いストーリーというのは、いつの世にも作りたい、観たいという欲求があるようにも思います。
日本のTVのかの「世にも奇妙な物語」も、この傾向をモロに受け継いでいると思います。ホラー映画が苦手だと言う人も大丈夫な映画で、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニ監督のファンの人ならば一見の価値ありの映画だと思います。