184.《ネタバレ》 途中までは本格的なサスペンスを堪能することができ、結構良かったと感じていたが、オチの付け方を完全に誤ったような仕上りとなっている。
犯人に対して面白みが何もなければ、頭脳戦を繰り広げていたのに、ただの肉弾戦で終わるというのも面白くもない。
ナイフを使って殺したいのならば、このような無駄な苦労をせずに、もっと以前に可能だったのではないかというツッコミを入れられるような作品に対しては高い評価ができない。
「証拠捏造」「人間トイレ」がどうのこうのと、色々と語っていたが、犯人の動機も目的も理解できず、それほど悪くはない作品が全て台無しとなった。
それなりの知能犯と思っていたが、結局のところ昔の書物に書かれていたことを実行していたに過ぎないというのも面白くない。
全体的に犯人を追い詰めるという感覚がなく、犯人の掌で転がされているうちになんとなく事件が終わってしまったという感覚だ。
したがって、スリリングではあるものの、どことなく緊張感が欠ける作品となっている。
また、冒頭は尊厳死をほのめかしていたものの、ラストでは疎遠となっていた姉や姪と再会したり、アンジェリーナ・ジョリーと恋愛関係気味となったりと、一転して和気あいあいとしたほのぼのとした感じで終わるというのも、「これで良いのか?」という気がしてくる。
本作においては、“誰が犯人であるか”というよりも“現場の状況から犯人が残したヒントを探り出す”という点に重きを置かれていることは分かる。
それならば、スピーディーに処理するのではなくて、もう少し観客と共にじっくりと現場や謎解きを共感できるように演出した方がよかったかもしれない。
もっとも、紙の切れ端のパズルを解決したとしても面白くないネタではあり、もう少し工夫する余地はありそうだ。
オチやストーリーは面白くないが、デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーが好演している点は評価したい。
特に、アンジェリーナ・ジョリーが喜怒哀楽を上手く表現していた。
ただ、父親を自殺で失い、恋人と上手くいかず、自分に自信も持てずに憂鬱そうにしていた割には、途中からは一転して優等生に変わってしまった点は物足りないところではあるが、本作においては十分光を放っていたといえる。