39.《ネタバレ》 久々に宮崎駿らしいアニメだったと思う。
これを観ると”ハウル”や”ポニョ”は少しファンタジーに傾倒し過ぎていたと思う。
宮崎駿アニメは描写力があるのでファンタジーよりも日常を軸にして描いたほうが表情が生き生きとするかもしれない。
この作品を観ると、近年の彼の作品にあった停滞感は意味があってのことだったなのだと思った。
というのもこの作品は、彼の過去の作品の多くが生かされた力作だったからだ。
宮崎駿の作品というと「大人から子供までが楽しめる」という印象がある。
しかしこの”風立ちぬ”は子供向けな作品ではない。
実際に「面白かった」と言っている子供の声も聞いているので決して断定はできませんが、この作品は子供には難しいんじゃないかなと思う。
今までの彼の作品は少年少女の視点で描かれていたが、
本作では青年の視点で青春が描かれているからかもしれない。
男のロマンや男女の純愛とかいったものは子供向けに属するはずがない。
ところでこの作品では宮崎駿監督の飛行船好きがハンパなく表れている。
彼の作品には空を飛ぶものが多い。その点では”ラピュタ”が最も評価され”もののけ姫”は不評だった。
この”風立ちぬ”ではその点はしっかりしている。
途中でなんか”ハウル”を見ているときのようなダルい疲れを感じてしまった。
これは纏まりに欠けたところが中盤にあるからだと思ったが、
もしかしたら鑑賞者である僕の問題かもしれない。
ヒロインは二人いる。メインヒロインの菜穂子は美しかった。
この作品は宮崎駿の母に対する想いが最も強く出ていると感じる。
ゆえに宮崎駿アニメ史上最も感涙必至な作品だった。
松任谷由実の歌うテーマソングを聴くとまた泣けてくる。
既に述べられていると思うけど宮崎駿の作品のタイトルには「の」が必ず入るがこの作品にはそれがない。ちょっと残念。
宮崎駿のアニメはしばしば予言説がネット上で噂されるので、それも考えると真に迫った地震のシーンなどは少し怖く感じる。
宮崎駿は最後までライバル高畑勲を意識してたんじゃないかと思う。
というのも本作の結婚式での着物姿のヒロインは宮崎アニメにしては異様な場面で、高畑勲監督が制作中の「かぐや姫の物語」からのインスピレーションはあったんじゃないかと思う。