28.《ネタバレ》 エジプトの人々がイスラエルに来て地元民の世話になる映画である。製作時点より少し昔の話ということで、少なくとも1988年より後の90年代という想定かも知れない。エジプトは1979年にアラブ諸国で初めてイスラエルを承認し、大使館もあったわけだが感情的な反発は残っていたようで、IMDbの公開情報によればこの映画もエジプトでは公開されていないようだった。あくまでイスラエル側からの思いを表現した映画だったことになる。 出演者によれば台詞はないが政治性のある場面が若干あるとのことで、自分の見た限りでは序盤で壁に写真がかかっていた場面のことかと思われる。ここでの写真の人物は、1993年の「オスロ合意」でノーベル平和賞を受賞したが1995年に暗殺されたラビン首相ではないか(自信なし)。この映画ではエジプトを扱っているが、脚本兼監督の考えとしてはパレスチナ人との共存も志向していたのだろうと想像する。出演者はイスラエルの役者だが団長役はなぜかバグダッドの出身、他のアラビア語(多分)を話す役はパレスチナ人だったらしい。 人間ドラマでは、若者の恋愛指南とか作曲上のインスピレーションを得るなど一晩でかなり深めの人的交流ができていたようである。また食堂の店主は、昔の映画体験を通じてそもそもエジプトに憧れのようなものがあったらしく、初対面時にエジプトをEgyptでなくわざわざマスルと言ったり、宿泊の受け入れを決めたりしたのもそのことが動機と思われる。映画人たる監督としては、音楽だけでなく映画も境界を越えて人の心を伝えることを表現したかったかも知れない。 店主の思いとしては、団長との間でオマー・シャリフとその妻のような宗教を乗り越えた愛を願ったのかも知れないが、団長が乗って来ないのでその場にいた若い男で一晩間に合わせたということか。また団長の立場からは、年長者として若い者に任せるべきところは任せた形になっていたかも知れない。さすがに年齢もかなり上で(演者で17歳差)人生の段階も違うという思いはあったようで、個人的にもこの団長には共感させられるものがあった。 その他雑事として、地名の中に出ていたHATIKVAという言葉はイスラエル国歌の題名にもなっているので、日本でも知っている人がなくはない単語と思われる。また全くどうでもいいことだがせっかくイスラエル映画を見たので、終わってからYouTubeでMayim Mayimを聞いていたらやめられなくなった。 【かっぱ堰】さん [DVD(字幕)] 7点(2023-10-28 10:26:35) |
27.苦いコーヒーのように味わい深い作品。 哀しい経験は人を優しくする。 世界は広いが、人間は皆似たような哀しみを背負い、どこかに孤独を抱えながら生きている。 その人間たちを繋ぐのは音楽か。 【にじばぶ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2020-10-14 19:41:39) |
26.地味だが良作。 偶然の一晩の中で、それぞれが抱える心の中の一端を見せながら、それでも今後の人生がこれまで通りに(でも多少は変化しながら?)続いていく...そんな風景を観た。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-11-05 21:01:07) |
25.当時のアラブとイスラエルの国家・民族対立の背景に詳しくないとよくわからないのかも。国家・民族で対立しても個々人での交流は音楽だったり性愛だったりで可能ですよって事なんだろうけど。日本人的には日韓とか日中でリメイクすればわかりやすいのかね? |
24.唯一面白いと思ったのが経験浅い男女のデートの所くらいだった。 この後どうなるんだろう?という雰囲気は良かったが、自分の感性にはあまり合わない映画だった。 【miso】さん [地上波(字幕)] 4点(2016-11-04 02:29:33) |
23.登場人物同士の距離感の描き方がユニークだけど、それがコメディへのこだわりなのか、歴史や文化を越えた人間性がイマイチ伝わってこない。 【ProPace】さん [地上波(字幕)] 6点(2016-11-01 22:11:39) |
22.エジプトとイスラエルの複雑な関係を反映したような微妙な空気感のある作品でした。 平和条約の締結から数十年ということで、根深い対立感情はもう無いようだけど、快く迎え入れるような心の交流を描いたという感じではなく、かなり遠慮勝ちにどこまで踏み込んでいいのか探り合うようなぎこちなさがいい雰囲気を醸し出していたと思います。 あと、所々挟み込んでくるコメディ演出も冴えてて、カーレドによるパピへの恋愛指南は最高でした。 終盤はちょっと感傷的な展開だったけど、あまり深刻になり過ぎず、哀愁の漂ういい余韻があったと思います。 アラブの春以降の政情不安で、両国の関係がまた怪しくなりそうな雰囲気もあるけど、こういった民間レベルの交流は大切ですね。 【もとや】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-06-29 13:35:34) |
21.良かったです、なんとも。いわゆる"ユル邦画"に近いノリ。『オーケストラ!』みたいなコメディかと勘違いしていたので意表を突かれてまた良かった。行動する事に意義が有る、無駄なアクションなど無いのかもな、やはり人生は偶然ではなく必然なんだな、と思わせてくれる良作でした。この1日は彼らにとって無駄な日などではなく何かが少し変化した大切な迷子の1日だったでしょう。キャラが1人1人立ってて面白かった。そのどの人のエピソードも続きが気になる感じで。昔気質な男性が好きなので団長の不器用かつ寡黙なところにやられました。しかし一番若い団員はめちゃハンサムでしたね。 【movie海馬】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-07 23:11:08) |
20.《ネタバレ》 イスラエルに招かれてやってきたエジプトの警察音楽隊。しかし辺境の町に迷い込んでしまって、そこで出会った食堂の女主人に助けてもらう話。多くの登場人物が何とも言えない顔をしていてそこにあまり味わったことのない空気感や間が生まれていて面白かったです。団長が用を足しに夜中起きてそのまま用を足さずに戻ったシーンは私も同じ気持ちを味わった気がします。 【nyaramero】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-05-09 14:02:32) |
19.ユダヤ人の中に迷い込んでしまったアラブの人たち。と聞くとぴりぴり緊張しそうな設定にしておきながらも、彼ら個人個人に政治的な色はほとんど無い。迷い込んでしまった方も、急遽上がりこまれてしまった側も、お互い困惑しながら、どこまでも普通の人たちなのだった。洋の東西問わず、このあたりのぎくしゃく感はすごく良くわかって微笑ましい。何人であっても、結局は人の心って同じ動きをするもので。そんなことを、特に凝った演出もなしにところどころ笑わせながら、あっさり心地よくまとめてある。食堂の女主人の存在感抜群。ざっくりしててイイ女です。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-01-10 00:28:42) |
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18.女主人が魅力的でした。全体的におもしろかった。 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2011-12-23 22:51:10) |
17.《ネタバレ》 導入部分に顕著な絶妙な「間」と、横並びを多用した構図、そして堅苦しい制服や重そうな楽器と荒涼とした風景のギャップだけで、コメディとしては完成しているわけです。あえて一足飛びに関係を発展させることなく、ぎこちなく礼儀正しく交わされる会話にも、何ともいえない味があります。その中でも、最低限の台詞で登場人物の心理の揺れを表し切っている脚本が、よく見ると凄く練られています。また、ユダヤとアラブの対立背景を全部削ぎ落とした潔さも、かえって作品世界に緊張感を与えています。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-11-11 03:49:01) |
16.言葉が通じず、音楽でわかり合う物語かと思ってみたが、そうでもなかった。コメディと思ったのは最初の部分だけで、あとは静かに淡々と流れていく。それでいて、文化も人種も違う対立する二つ国イスラエルとエジプト、この距離感が何とも言えず良い。 少しもあきることなく、興味深く見ることができた。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-10-26 16:14:07) |
15.淡々とした地味な内容だけど一気に観れた。会話の微妙な空気が良い。 【ベルガー】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 13:19:03) |
14.これも、知らない者同士がひょんなことでの一夜を過す羽目に。何とも言えないぎこちなさがまた面白く、非常に愛想のいい食堂の女主人は魅力的でいい感じなんですが、こういう人を奥さんにしたら何かと心配事が増えそう?雰囲気や設定が「ククーシュカ ラップランドの妖精」のように暖かくて優しい大変心地いい映画でした。人間っていいですね!! 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-08-22 22:04:36) |
13.大人の映画ですねぇ。隊長と女主人の声が良い。 【まんせる】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2009-02-18 19:15:39) |
12.《ネタバレ》 エジプトの警察楽団が公演の為イスラエルを訪れる。しかし行き先を間違えて人影もまばら、殺風景な町に迷い込んでしまう。その町の食堂の女主人に助けられての(この人がすごく魅力的でした!)一夜限りの交流が淡々と描かれます。隣国とはいえ長年民族対立が続くアラブとイスラエル。その交流はどこか気まずくぎこちない。でもその内に打ち解けて「田舎に泊まろう」の様に一宿一飯の御礼はミニ演奏会!みたいな展開もアリかなと思ったのですが最後までぎこちないまま。でも、ぎこちないながらも彼らの間には確かに心の交流がありました。地味ながらもその交流の描写が微笑ましかったです。常に威厳を保ち、団員を厳しく律する団長。冒頭、ミスした若手団員にクビを言い渡してしまう。事あるごとに団長に逆らうその若手団員。一夜が明けた別れの朝、女主人に小さく手を振る団長とお前も手を振れ、と促されて手を振る若手団員。色々あった女主人との一夜を通して団長は優しく若手団員を許し、そして団長に逆らうことなく笑顔で手を振る若手団員。その別れのシーンが何とも微笑ましく、鑑賞後の余韻もとてもいい映画でした。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-01-09 23:25:45) |
11.日本人が見ればあまりにも殺風景なイスラエルの小さな町。バスを乗り間違えてこの町へ迷い込んでしまったアレキサンドリア音楽隊(エジプト人)の一行。画面の中からイスラエルの風景が持つ乾いた暖かさが伝わってきます。どこにでもあるようなとまどいとためらいの中で、かつて敵対していた人々の心が通い合い、そしてとうとう、大きな苦悩を背負うエジプト人の隊長がほんの少しだけほんとうのことを言います。それはほんの少しだけだけれども見る人に大きな感動を与えずにはいられません。エジプト人の若者によるイスラエル人の若者への恋の手ほどきの情景もほほえましく、そしてやさしく、たった一晩のできごとながら、見る者に多くの余韻を残す佳品です。 【きのう来た人】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-12-29 20:40:56) |
★10.個人的にはかなりツボにきた作品。 微妙な間や空気が可笑しくて仕方なかった。 話の内容は淡々としてるので、ドラマを求めていると厳しいかも。 【からいもの】さん [映画館(字幕)] 9点(2008-12-08 18:19:22) |
9.《ネタバレ》 真正面からおさえるキッチリした構図、ときどき入る無人の街の光景も幾何学的、そうした中で描かれるのが“人と人との気まずさ”なので、その対照が生きてくる。気まずさ、ってのは否定的なものではないんだな、と思う。思いやり、の変形なんだ。気まずい食卓の場、みんなで陰気に歌うセントルイス・ブルース、あのあともっと暗くなったかもしれないけど、でもみんなで歌ったという記憶はけっして陰気には残らないだろう。それでいいんじゃないか。無理にはしゃいで作られるワキアイアイより。恋の伝授の長回しの場、あれだって“気まずさ”の克服のモチーフだ。エジプト側からすれば迷子だが、イスラエル側からすれば一種のマレビト、恋を成就してくれた神々。ムッツリとごろごろ楽器を引っぱっている神々。イスラエル側からエジプト側に与えたプレゼントは、クラリネット協奏曲のエンディングの示唆だ。赤ちゃんが眠る小さな部屋のような終わり方なんて、うまいことを言う。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-11-18 12:17:43) (良:1票) |