8.「好きな映画は?」と問われると、いつも非常に困るのだが、なんだかんだ言ってもいつも5本の指に「レオン」が入ってしまう。ミーハーな映画ファンのようで気恥ずかしさも感じるのだけれど、好きなんだからしょうがない。実際、「レオン」は最高に良い映画なのだし……。
したがって、近年どんなにヨーロッパ方面でのB級アクションの製作に突っ走り、殆ど名義貸しのような形で脚本のクレジットに名を連ねる愚にもつかない作品が連発されようとも、「リュック・ベッソン」という固有名詞が目に入ると、完全には無視することが出来ないのは、彼の虜になった映画ファンの悲しい性だ。
そんなリュック・ベッソンの長編デビューである今作。
長らく作品の存在は知っていたのだけれど、中々見られる機会が無く、彼に対する世評の低下に伴い、鑑賞の意欲そのものが忘却してしまっていた。
環境破壊により文明が滅亡したのであろう世界で繰り広げられる暴力の連鎖。
全編モノクローム+台詞なしで展開するストーリーテリングには、若きベッソンの野心がほとばしっているとは思えた。
「理解できなきゃそれでいい」と開き直って、独自の世界観を見せつけている様は、このクリエイターが次期に世界的な存在になり得る可能性を充分に醸し出している。
が、しかし、一作品として観た感想としては、正直「?」の連続だった。
諸々の設定自体にあれやこれやと説明を求めることは無粋だとは思うが、「台詞なし」という荒技を駆使するにあたっては、やはり色々な部分で力不足な感じがして、映画の世界観に入り込むことが出来なかった。
盟友エリック・セラによる音楽も、おそらくは当時の流行が反映されているのだろうけれど、映画の世界観に合っているとはまったく言えず、ビビットな映像に対して興が冷める部分が多かった。
世界に残された数少ない「女性」の存在がすべての暴力の鍵になっているということなのだろうが、それであれば、もっと画面に登場するだけで魅了されるくらいの風貌を携えた女優を起用するべきだし、その女性キャラクターの描写をもっと印象的に多く用意すべきだったと思う。
「ニキータ」、「レオン」、「フィフス・エレメント」……、ヒロインの造形に定評があるリュック・ベッソンであるからこそ、その部分の映画的魅力が全く欠けてしまっているのは至極残念。