238.真っ当な“映画好き”であるならば、VFXをふんだんに盛り込んだ邦画の大作映画には、問答無用に“疑心暗鬼”になってしまうと思う。
もう4年も前になるが、今作の公開時にもその例に違うことは決してなかった。
どうせ、ハリウッド映画に対して遥かに稚拙なVFXで再現された数十年前の東京の様をこれ見よがしに見せるだけの映画だろうと思っていた。
そもそも、予告編を観ただけで、粗筋は読め、感動させたいポイントも丸分かりの映画に、興味は無かった。
だが、観もせずに「面白くない」などと決めつけることほど、愚かなことはない。
面白くない映画を観て、「面白くない」と言うことが、本当の映画好きだと思う。
そうして、4年越しの初鑑賞となったわけ。
ん、……なるほどね。
「面白いね」
本当に面白くない映画に対して、これほど好評が続くわけはなく、自分の思いとは反面予想していたことではあったのだけれど。
ストーリー展開も、感動するべきポイントも、すべてが「予定調和」の中で成り立つ。
目新しさなんて、何も無い。
ただそれこそが、この作品の魅力であり、価値なのだろうと思う。
詰まるところ、「面白い」というよりは、日本人として感動しないわけにはいかない映画なのだと思う。
すべてはラストの夕日に象徴されることだと思う。
一日の終わり、すべてを赤く染める夕日が暮れていく。その美しい光景を見て、感動しない人間なんていない。
その絶対的な普遍さの中にいつもある“感動”を、ただただ真っ直ぐに描き、映し出した映画である。
そこに、映画の試みとしての巧さなんてなく、不器用もいいところだと思う。
ただし、その不器用な試みは、圧倒的に正しい。