13.《ネタバレ》 三島由紀夫の原作が'54年に刊行されて、同年(早っ!)映画化されているそうな。5回も映画化された中で小百合ちゃん版は2作目。こちらも百恵ちゃん版を先に観ている。原作から10年後、同じ神島でロケをしているので、文明に侵されていない村での素朴な暮らし、三島が島で見てきたものそのままが観られるというのは有り難い。
新治と初江のことが悪い噂になって広がるのも、娯楽のない閉塞な村社会らしく、海女のご意見番のお春婆が「正真正銘の処女の乳や!」と言い切った所で、噂をやめて丸く収めるしか無くなるところもまた村社会らしい。
とは言え原作未読。この映画の目玉の一つは「その火を飛び越して来い!」のシーンなのは間違いないだろう。
嵐を待ちわびる新治に対し、快晴が続いてヤキモキさせる演出、焦らされ具合を浜田光夫がオーバーにならずに演じていた。待ちに待った嵐。海の荒れ具合と、新治に湧き上がる期待の笑顔が実に良い。
雨に濡れた初江の髪が、普段のお下げと違い、グッと大人な雰囲気を出している。濡れた白いシャツから透ける白い腕もまた良い。スカートを脱ぐ初江の隅っこに、眠りこける新治の画もいいし、全裸になった二人の目の輝きがまた綺麗なんだ。
かなり力を入れた「その火を飛び越して来い!」のシーンだけど、不満が無くもない。どこかでセリフを聞き逃したのか、初江が海女をしていたのを、この後のシーンで知ったくらいだったので、嵐を待ちわびて空を見上げる初江の画も、入れてほしかったかな。。
原作に忠実に狭い監的哨内で撮ったためか、焚き火が小さい。二人の目の輝きのシーンは、焚き火越しにお互い真っ直ぐに見つめ合うイメージだから、小さな焚き火に視線を落とすのが勿体ないような。
焚き火を飛び越える瞬間と、抱き合う瞬間。スター俳優が裸で抱き合うシーンはさすがに制約もあったろうけど、台詞が無いと、何が起きてるのか分らない。
新治が嵐の海に飛び込むところも迫力が伝わらず。焚き火と荒波は潮騒の映像化の山場だと思うので、もう一つ迫力を出してほしかった、かなぁ。