2.その後の復興なった歴史を知っている者から見ると、焼け跡の風景に爽やかな解放を感じられるが、当時まだ前途真暗だっただろうから、ここに描かれる未来への希望は必死なものだったんだろう。それをコメディとして提示したとこに、庶民の底力への信頼が感じられる。中心になっているのは、不正を憎む素朴な正義感ね。ちょっと前まで異常な正義の時代が続いていて、「正義」に対する拒否反応や疑心暗鬼があってもおかしくないのに、とても健全に「正義」を信じている。というか、あの狂った正義の時代を越えて、最後にこういう素朴な正義があらゆる倫理の基礎になるべきだ、という考えに至ったんでしょうなあ。満員と行列に代表される世相描写も、同時代ゆえの手応えがある。強欲農家のシーンなどシュールな味わい。部屋の間の壁がひっくり返るようなドタバタもある。私の場合、戦後のイメージはもっぱら黒澤映画のギラギラとした世界で形作られてきたが、こういう爽やかな戦後風景もいっぱいあったんだなあと、新鮮だった。