1.《ネタバレ》 スパイダースというのは、そもそも存在自体が奇跡だったようなグループなのである。日本の芸能界(本来の意味)の至宝である、堺正章、井上順、かまやつひろしが、同じ画面内に存在して動いている。そのことだけでも奇跡である。そのスパイダースを、存分に映像面で駆使しようとして単純明快に作られた作品。悪い内容になるはずがない。●ただし、決してスパイダース頼りというのではなく、中身も案外(?)きちんとしている。「テレビで偶然見たチノちゃん(松原智恵子)に会うために、『一直線』に歩いていく」というただそれだけのコンセプト、それを真剣に大真面目に描こうとする制作態度(だからこそ醸し出される面白さ)。何よりも凄いのは、歩いていく七人が常に縦一列等間隔という絵面上のこだわり。「型」が存在するからこそ「型破り」が面白い、という笑いの鉄則を、とてもよく分かっていらっしゃる。●その上で、牛が列車に轢かれた瞬間にステーキになっている(それを当たり前のようにバクバク旨そうに食べるメンバー!)とか、死刑執行室の13階段まで一直線に進んでいくとか、今では誰もが委縮しちゃって手を出さないような描写まで平然と取り込んで進んでいく、膨大なエネルギー。これぞ60'sならではの熱さ。制作者は別に自分たちを熱いと思っていないのが、さらに熱い。●そして、意味もなくフル演奏(しかもステージ衣装で!)される「風が泣いている」とか、突然ゲスト的に登場するヴィレッジ・シンガーズが歌う「バラ色の雲」とか、無駄なファンサービスがさらに洒落ているのです。そこまでされたらもう何も言えん。●純粋に映画としては一応この点数ですが、この貴重な自信満々の暴走ぶりという価値においては、紛れもなく10点。●山内賢と仲間たち(ヤング&フレッシュ!)の演奏まで見られてしまうのは、もはやオマケとかサービスとかいう領域をはるかに超えているが、本職のGSより明らかに演奏が上手いのは、いかがなものかと思うぞ。