35.《ネタバレ》 小津安二郎監督が「晩春」で描いた父と娘の関係を母と娘に置き換え、改めて描いた作品で、母親役を原節子が演じているのもあって「晩春」の続編とも感じられるものになっていて、実際、司葉子演じる娘・アヤ子の態度や、ラスト付近の母子の宿屋でのふとんの上でのやりとり、いちばん最後のシーンのアパートの部屋に一人残された原節子演じる母・秋子の悲しげな表情などは「晩春」をそのままなぞっている感じで、小津監督も意識しているのが分かるのだが、「晩春」ほどの深みは感じられないのが少々残念ではある。でもその分、コメディー要素が強く、主人公である二人に要らぬお節介を焼く三人のおやじ(「彼岸花」と同じく佐分利信、中村伸郎、北竜二)の会話や調子よさが見ていて楽しく、(それにしても途中この三人の出番が多く、この三人が主人公でも違和感がないのでは思ってしまった。)映画全体もユーモラスな雰囲気がずっとあって安心して見ていられた。序盤から登場していたアヤ子の友人である百合子(岡田茉莉子)の存在が後半になって大きくなり、友人のためにひと肌脱いで三人と渡り合う展開が実に気持ちよく、かっこいいし、演じる岡田茉莉子もすごく魅力的。この百合子が寿司屋で北竜二演じる平山に言うセリフがとても好きだ。屋上でアヤ子が百合子に言う「みんなだんだん離れていっちゃうのよ。」というセリフも考えさせられるものがあり、とても良かった。小津監督独特の会話のテンポも見ていて楽しく、心地いい。それから小津監督と言えば笠智衆だが、「晩春」では父親役だった彼を今回は秋子の亡くなった夫の兄役に起用しているところにもなにか遊び心が感じられる。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2024-02-18 17:56:33) |
34.《ネタバレ》 小津安二郎の後期の作品好きなんですよね~。 昭和30年代の飲食店や家屋のシーン、人々の物の考え方など、風俗史的な価値があります。 内容的には、世間的には社会的地位のある同級生おじさん3人のアホな会話のやりとりが大変楽しい。 それに加えて娘の職場友達である岡田茉莉子の存在感が凄い!性格が男前でしっかり者に加え、友達思いの優しい性格でとてもチャーミング。 おじさん3人に啖呵を切るシーンとその後の実家のすし屋でのシーンは最高に楽しい。 主人公の母娘の存在はたえず周りに振り回される存在として描かれる。 母娘の別れ、ペーソスがテーマであるが、この時代の小津作品はどこかユーモアに基点を置いているのであまり湿っぽくないのが良い。 作品中終始流れるリズミカルな音楽も心地よい。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-08-14 17:10:58) |
33.端正で全く人工的なこの映画を観ていたらいつの間にか入り込んでいたのには自分でもビックリ。そして岡田茉莉子演じる百合子にかなり共感していた。寿司屋の娘という粋な設定、サバサバしているけど思いやりに溢れた温かい心の持ち主。江戸っ子ってこういう感じを言うのかな?小津の映画はいつもの世界、いつものテーマだけど少しづつ違う。本作だとこの百合子かな。 【amicky】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-12-11 16:13:31) |
32.映画は見た時の状況で感想が大きく変わるなあと思いました。 小津の映画を何本も見直して、以前はまあまあだなと思って5点をつけた「小早川家の秋」が前に見た時より面白く感じ、最初に見た時に違和感を感じた中村鴈治郎が良かった(森繁はだめでしたが)ので、こちらも再見。 最初に見た時印象に残らなかった場面が面白く感じました。 小津らしさは少し影を潜めていますが、「そうよ」「そうでしょ」「そうよそうよ」そんな同じ会話の繰り返しが出てきて、やっぱり小津だ。小津のこういうところが好きなんだと改めて思いました。 原節子はいつみても、それほど美人だとは思えません。目も鼻も大きすぎるし全体に男っぽい。なのに、毎回素敵だなあと思ってしまいます。小津映画独特の、ちょっと見方を変えればホラーにでもなりそうな微笑みながらのセリフのせいなのかなと思ってしまいます。 【omut】さん [DVD(字幕)] 7点(2019-11-02 16:08:01) |
31.晩春と本作、配役もそうだけど、展開からコトバの言い回しまでそっくりですね。私は小津作品は序盤はどれもつまらないのですが、終盤の核心となるシーンが必ず用意されていて、それを観て、あーこの作品も良かったといつも思わされるんですが、本作もそれに漏れることなく。母の原節子、娘の司葉子の嫁入り前の最後の夜は笠智衆と原節子に似てましたが、これもまた良かったです。あとはおじさん3人衆は相変わらずの冗談と愚痴とお節介で話題に事欠かないですよね(笑) 【SUPISUTA】さん [DVD(邦画)] 7点(2018-05-28 23:42:53) |
30.《ネタバレ》 晩春の別バージョン。 コミカルで面白いけどちょっと長い。原節子は相変わらず独特の上手さがあると思う。晩春が子役で今回は親役というのはいい演出で、最後のシーンは寂しさではなく幸せな安堵感に思える。 内容とは関係ないが、佐分利信は中井貴一に似ている(?)とつくづく思った。 【simple】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-05-01 22:42:37) |
29.親子に見えない原&司、コミカルなセリフだけどぎごちない会話、原節子と佐分利信の感じ悪い微笑み、違和感を感じつつも結構癒されます。岡田茉莉子がいい感じです。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-01-22 23:57:03) |
28.《ネタバレ》 原節子への再婚話を通したか通さなかったかのすれ違いとか、実はコメディエンヌの岡田茉莉子の芝居とか、上手く煽れば上質のコメディになりうる素養はあれこれあるんです。でも、手癖のようににじみ出てくる変な情緒性が邪魔をしている。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-12-31 01:11:22) |
27.「世の中なんてキレイなものじゃない!」男女の恋愛だの、結婚なんてのはドロドロしたものでありかつ面倒なものでもあり、決してキレイなものじゃありません。幸せになれるとも限りません。という、生涯独身監督の揶揄や諦観も感じられるのだが、3人オヤジのパロディー色が強くなってしまい、肝心の母娘関係の描き方が中途半端になってしまったような。 |
26.岩下志麻、ちょい役でしたが、ダントツで一番可愛かったです。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-03-13 15:46:09) |
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25.《ネタバレ》 晩春では娘役だった原節子が母役なのが面白い。こちらのほうがコミカルで楽しいですね。 |
24.相変わらずキャラ描写やセリフ回しが面白い小津作品。 美しい未亡人と一人娘との親子の絆を描いた本作は、「晩春」にそっくりで、 父と娘が母と娘に、おせっかいな叔母さんがオジさん三人に変わっただけ。 キャスティングは「晩春」より充実しているけど、ストーリー展開がここまで同じだと、 どう評価したらいいのか難しい。もちろん作品自体の出来は悪くないので、 「晩春」未見の人なら十分楽しめると思うが、個人的にはあまりいい印象は受けない作品だった。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 5点(2012-01-18 08:42:58) |
23.《ネタバレ》 小津映画の中でも、とりわけ好きな映画。娘の幸せを願う母とその母を気遣う娘、どこにもあるような主題なのに、小津映画となるとひときわ情感がこもってすばらしい。 本人を差し置いたちょっとしたおせかっかいの行き違いなのだが、それが安っぽいコメディやドタバタ劇にならず、情緒ある独特な雰囲気につつまれる。その淡々と進む奥ゆかしさに、アクセントをつけているのが岡田茉莉子の明るく快活な現代っ子ぶり。それで調和がとれ、物語が引き締まる。彼女が三人の中年男たちと対決する(?)シーンや自分の店にすまして案内するところなど心憎い。 娘も母も一緒に片付くかと思いきや母はやはり日本古来の女性だった。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-09-30 22:23:34) |
22.これもまあ、映画の歴史において再三現れる「三人の○○」モノの一本、ですね。三人の天使というか、東方の三博士というか、いや実際は脂ぎった三人のオヤジなんですけども(仮にこの三人の名前を、チョビヒゲ、メガネ、オールバックとしよう)、この三オヤジの超おせっかい(今の目で見たらセクハラ指数満点)のオハナシ。亡き友人の未亡人とその娘、どっちもイイねえジュルジュル、なんてことを言いつつ、結婚こそが人生の幸せにキマっとるとばかり、娘を何とか結婚させようと奔走する。しかし娘の方は例によって「ワタシ結婚しないわ」と母の原節子を困らせる、このゴネっぷりはかつての原節子の姿、因果は巡るとでも言いますか。映画の基調はユーモラスな雰囲気で、三人のオヤジの調子良さとか、誤解から生じるドタバタとか、コメディらしく楽しめるのですが、それらの顛末の中で、娘の友人などもからんできて物語を重層的に広げ(何度か登場する屋上のシーンが印象に残ります)、さすが、ドラマとしても充実しています。そもそも、結婚こそが幸せ、という価値観に裏打ちされている一方で、メガネこと中村伸郎が(必要以上に)服を脱ぎ散らかしそれを奥さんが片付ける理不尽な「家庭」シーンを入れるあたり、一筋縄では行かず、なかなか皮肉。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2011-04-01 03:46:34) |
21.小津安二郎の中期から晩期にかけてのワンパターン化したストーリー展開は正直飽きがくるものの、小津ならではの様式美と色使い、そしてシーンとシーンの合間に挿入される音楽は、軽妙でいて完成度が高い。 小津が長い間かけて自らの様式美を完成させ、それはあまりの完成度の高さに見惚れるほどだが、むしろストーリーにかけてはワンパターンという欠点が同時に存在する。 小津が好きな人なら、小津様式美としてどんどん進化して深くなっていく後年の作品群にのめりこむことだろうが、親子の離別を主軸に描いた後期小津の作品群は、私のような者には、少々飽きがきてしまうのだ。 原節子は限界。 もはや美しくはない。 いや正確に言うと、小津作品の原節子には、かなり前の頃から、その作り笑いに私は違和感を感じていた。 小津の原節子に対するラブコールとは裏腹に、小津と原節子との相性はそんなに良くはない気がする。 この頃の司葉子は、まさに美しさという点において絶頂期である。 若さと大人の気品を兼ね備え、この作品に花を添えている。 オヤジ三人衆の洒脱さは、本作でも健在。 オヤジたちのやり取りの面白さ、背景にあるオヤジたちの豊富な人生経験を垣間見れる深さなんかは、さすが小津である。 このようなオヤジ達の面白いやりとりを撮らせたら、小津安二郎は間違いなく最強である。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-08-01 02:12:46) |
20.昔は人の結婚にここまでお節介だったのかと呆れて見てました。おっさん3人とも立派なセクハラです。司葉子も岡田茉莉子も輝いてるね。特に岡田が当時の現代っ子を演じていて、おっさん3人に抗議するシーンは気持ちよかったです。司葉子に惚れてしまいました。 【marsplay】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-06-26 17:05:30) |
★19.《ネタバレ》 同じ監督の『晩春』と似たような話なので、どうしても比べてしまいますが、そうなるとあちらの方が好みです。本作はユーモアもあって面白く見ましたが、母親の結婚話が出てくると、ちょっとゴチャゴチャしてきたなぁ、という感じでした。佐分利信を筆頭にした3バカトリオは愉快。昨今では、他人の結婚話にちょっかいを出すような人は少ないですね。それは人間関係が希薄になっただけでなく、そんな余裕がなくなってきたのかもしれないなどと思います。ちなみに、誰が岩下志麻かわからず、ちょっとくやしい。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-05-25 21:04:55) |
18.原節子好きじゃないんです。 なのに、すごい感動しちゃった。母娘のそれぞれの想いが優しくて。それにしても、あの男3人組はなんなんだ(苦笑)自分らのせいで母娘がけんかしたというのに、どーんと腰を据えた態度、素敵すぎる(笑)ユーモアたっぷりで、日本の古き良き風景に出会えました。たくさん笑わせてもらいました。そしてピリリとからく、ほろりと泣けました。ありがとう、小津さん。 【kaneko】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-02-08 17:19:10) |
17.単純に笑える。日本人らしい笑い。 岡田茉莉子が素晴らしく良い。いやー面白かった。小津節は相変わらず。安心して見れる傑作。個人的には東京物語よりこっちのほうが良かった。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-12-25 23:33:44) |
16.《ネタバレ》 小津の映画は基本喜劇のものが多く、これもその類。2年後の遺作となった『秋刀魚の味』のような3人のおじさんたちがシリアスなドラマを真面目顔で喜劇にしてしまう。杉村春子のように岡田茉莉子が快活にこのおじさんたちをギャフンと言わせるのがまた面白い。ところが単に笑ってばかりもいられない。完全喜劇じゃないので娘は結婚しても母はしない。披露宴後の「母一人の図」がなんとも寂しい。『晩春』の母娘バージョンだが、「父一人の図」の寂しさとはちと違う。父のそれは運命。しかしこの映画、母の場合は母が自ら「母一人の図」を選んでいる。世の常に習う父とは対照的にまるで何かに反抗するかのような、あるいは何か決心したかのような強さを秘めた「母一人の図」。この一癖がただならぬ。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-03-09 17:40:12) |