1.《ネタバレ》 独特の動きをした群衆が雑踏を形作る俯瞰ショットがいくつかある。ほんの数秒のカットだが、一人一人が進行方向も動作もまちまちだ。
3DCGだろうとはいえ、それに費やす手間暇は相当のものだろう。
メカニックの動きには独創的な楽しさがあり、キャラクターのデザインは統一感があってタッチは端正、そしてアクションシーンも頑張っている。
帆船内のソファに反射する外光や、浮上するノーチラス号の船体をてからせるハイライトなどの処理も細やかである。
夕陽で赤く染め上がった灯台のロングショットや、ロンドンの夜景など、時折ハッとするような背景も差し挟まれる。
そのように端正な画面は作られているが、エリアや建造物などの構造・空間がさっぱり活かせていない。
特に肝心なクライマックスは人物の位置関係も不明瞭、二手に分かれた仲間がそれぞれどの辺で何をやっているのか。
目で合図を受けて飛び出したヒロインはどういう動線で動いているのか。
作り手のほうはもちろん場面設定をしたつもりだろうが、観る側には判然としない。
場面転換の度に入る緩慢なフェードアウトも物語の流れを滞らせる。ドラマがいま一つうねっていかない。