151.《ネタバレ》 やはり映画の本当の面白さというものは、一度だけでなく二度、三度見て初めて発見できるようだ。
最初余り惹かれなかったのに、どうしてこうも引き込まれる“何か”を感じるようになるのだろうか。
この映画を再評価するキッカケは何だったのか。そうだ、画面を支配する豊かな“黒”のコントラストだった。
フィルム・ノワールやジョンアルトンのキャメラ、クリント・イーストウッドの映画を思わせる暗黒の空間。
それに男達を破滅へと導く運命の女(ファム・ファタール)たち。
だが、この映画の題名が示す通り劇中の女達は彼らの“運命”とはならない。
恐ろしく平和なまま、ほぼ何も変わらないで終わるあっけなさ。
俳優たちの何処かそっけなく冷めた雰囲気も手伝い、余計にそんな印象を受ける。
「現金に体を張れ」や「パルプ・フィクション」といったジグソーパズルを組み上げていく流れだが、先達と比べると余りに物足りなく感じるだろう。俺も欲を言えばあと30分足して一発ブチかまして欲しいくらいだ。
その分、突拍子な脱線や意味もなく人を殺傷して台無しにするようなマズさも無い、その安心感が心地良い見事なシナリオで出来た傑作である。
マンション、ドアのポストに鍵を入れる女。
その女の語りから始まるファースト・シーン。
男に逃げられた女、女に逃げられたサラリーマン、探偵、ヤクザと様々な人物の視点が積み重ねられていく。
会話が多くを占めてはいるが、冒頭の鍵の場面や妙に印象的な探偵の黒衣、タクシーを追うスピード感、浮気調査を物語る写真の数々など映像で魅せるシーンも多い。
神田が探偵だったのは意外だった。まさか今までの流れでヤクザが出るなんて誰が想像できただろうか。いや、宮田のワケあり風な彼女の話からして気になってはいたけどさ。
神田のパートになると突然マフィア映画みたいな空気が流れはじめる。
かといって、神田が出会うヤクザたちは人殺しの集団というよりは、本当は気の良い不良という感じ。ボスがスゲーくだけています。
むしろ「殺すぞおっ!」と言っていたトラックのオッサンの方がヤクザみたいだった。
あれで本当に死んでたら完璧ギャグ。
最初は神田の良い奴ぶりに惚れ、何時の間にかボスのカッコ良さに惚れる映画です。
自ら組員のために危険を犯す行動的なボスとかマジ理想の上司。