154.《ネタバレ》 ベン・スティラーという俳優を初めて意識したのが、この映画だったように思えますね。
コミカルな演技を軸としつつも「決める時は決める」恰好良さに痺れて
(この人、良いなぁ……)
と惚れ惚れしちゃったのを憶えています。
後に彼の主演作をチェックする事となり、その中には本作より面白いって感じるような品もチラホラあったりしたんですが……
やはり「初めての映画」として、本作は印象深いです。
そんな具合に、自分としては主演俳優ばかり注目しがちな品なんだけど、映画全体で考えても、やっぱり「面白い映画」「良い映画」なんじゃないかって思えますね。
冒頭に色んな展示物を映し出し、予備知識を持った観客には「こいつらが動き出すのか」とワクワクさせる作りになってる辺りなんて、特に良い。
観客の喜ばせ方を分かってるというか、夢や期待を裏切らない作りになってると思います。
本作の特徴としては「女性ヒロインが不在である」って事も挙げられますが、それもまた自分好みなんですよね。
一応、それっぽい存在としては同僚のレベッカがいるんだけど、彼女とはロマンスに発展せず、あくまで同僚止まりで終わっちゃう。
主人公は夜警として頑張り、それが最終的にハッピーエンドに結びつく訳ですが、その姿を「女にモテたいバツイチ男」ではなく「息子に認められたい父親」として描いてるのは、本当に良かったと思います。
ここで作り手が欲張って「レベッカとも結ばれた」なんてオチにしていたら、話の軸がブレちゃいますからね。
色恋沙汰の要素を排し「頼りない父が、可愛い息子を笑顔にしてみせる物語」として纏めたのは、もう大正解だったんじゃないかと。
他にも「ミニチュア模型好きには嬉しくなる場面が多い」とか「自分は歴史上の偉人ではなく、それを模して造られた人形に過ぎないと語るテディの姿が切ない」とか、色んな長所が備わってる映画なんです。
敵が老人三人組じゃあ脅威として弱いなと思っていたら「石板の力で強くなる」って展開になり
(ほほう、そう来たか)
と感心させられる辺りなんかも、観ていて気持ち良い。
嫌味な感じの上司は、最終的には主人公を認めてくれるし、悪人とは言い切れない老人三人組も博物館に復職する後日談が付くしで、鑑賞後の後味が爽やかなのも良いですね。
最後の「博物館の夜」も本当に楽しそうだし「楽園を守り抜いた」という主人公の感慨が伝わってくる、最高のエンディングだったと思います。
そんな本作の難点としては……色々と説明不足で、モヤモヤしちゃう辺りが挙げられそうかな?
監禁されたマヤ族へのフォローは無いし、ラジコンの車に関しても何故か人形が乗り込み操縦出来ちゃうしで、観ていて気になる箇所が多いんです。
正直、作品の完成度は高いとは言えないかも知れません。
でも、そんな「説明不足」という欠点に関しても
(マヤ族の人形達は、あの後なんだかんだで皆の仲間入りしたんだろう)
(ラジコンの車は、ジェデダイア達が改造したんだろう)
って具合に、あれこれ考えて補いたくなるというか……
ある意味では、凄く想像力を刺激される作りになってるんですよね。
「作りが丁寧で、観た後に何のモヤモヤも残らないような傑作」ともまた違う、独特の味わい。
「想像力を刺激される」「それによって、色んな夢が広がる」という意味では、非常に博物館らしい映画と言えるかも知れません。