6.《ネタバレ》 2016年に起きた障害者施設殺傷事件で「生きている価値がないから殺した」と豪語した犯人を思い出しながら、本作をとても複雑な思いで鑑賞した。
超能力を持ち、人の生殺与奪を握っているのに、チャールズは神になる気はないという。彼の犯罪は果たして「情け容赦がない」という形容が妥当なのだろうか。痛みや苦しみを最小限に抑えてその命を奪う、いや終わらせる。「彼らの苦しみを終わらせる」という動機をもち、「究極の愛の行為はこの上なく辛い」と声を震わせて語るチャールズに、もし人の不幸な未来を見出す特殊能力がなかったら、彼は殺人者になどなっていなかったのではないか。ともかく、殺めることで人に慈悲を与えようとする彼のやり方は絶対に間違っている。間違っているのに・・・・・・
細かい設定で引っかかる点が多かったにもかかわらず、本作に深く考えさせられた。
自分の身に置き換えたら、私は何一つ確信をもって行動できないと思い知らされたからだ。
もし自分が絶望的な痛みに苦しむ難病に侵されていたら、チャールズの行為を「大きなお世話」とはねのけられるのか。
自分の医療費は家族の家計に響かないか? 家族の未来を奪ってしまわないか? と脅えながら、
愛する家族を殺人者にさせないために安楽死をねだったりせず、自然な死が訪れるまで病とずっと向き合っていけるのか。
そして、
一切の苦しみから救ってくれる殺人者が現れたら、感謝の気持ちを抱かずにいられるだろうか。
チャールズは、ジョーの息子の教育費まで考慮しているのだ。
考えれば考えるほど、この作品が問うている生死の問題は奥が深い。