54.数年前マーティン・スコセッシ監督がマーベル映画は映画ではなくテーマパークに過ぎないと評し話題になりましたが、その形容は何よりもこの映画にあてはまるものだと思います。戦場の映像には微塵も本当らしさがなく戦争ジオラマやゲームのプレイ映像を見ているかのようでもあります。1950年代の頃、フランスの映画界で大きな影響力を持ったアンドレ・バザンという批評家がいました。彼は長回しこそ映画においてリアリズムを追及する技法であると評価していました。全編ワンカットで撮られたかのように演出されたこの映画は、その単純で素朴な考え方が大きな間違いであることを証明するためだけに生み出されたとしか思えません。フィルムからデジタル撮影に変わったことで長回しは以前よりずっと容易になりました。そこにもう新規性などはないと思います。そもそも映画においてカットはなぜ必要なのでしょうか。答えは単純です、省略のためです。しかしその省略こそが映画を単なる見世物以上のものにしていると私は考えます。省略されるからこそ映されない・語られない何かを我々は想像します。そこにこそ真実性や象徴性というものは宿るのではないでしょうか。この映画には画面に映されたもの以外への想像力を刺激する部分がないのです。しかしラストのアルフレッド・H・メンデス上等兵に捧ぐという字幕にだけは感動を覚えました。そこには決して我々の目には見えなかった物語性を感じたからです。だからこそ本編がこのような語り方で良いとは思えないのです。 |
★53.《ネタバレ》 1カットが話題となった本作、観る前は映像酔いを心配したのだけど意外なほど観易かったです。むしろ中盤まで‶切れ目のない”ことに気付かなかったほど。 主人公目線の多さゆえ、その者とのシンクロ感が半端ないです。前線に飛び出して行く時は身体がすくむ思いがするし、振り返ったら仲間が刺されているショッキングな場面では腰が抜けそうになりますし。チキンなわたしは引き返したいけどもちろん主人公は前に進むので、なかなかしんどかった。 撮影技術の進歩を実感する、こういう「体験型」作品が増えてますね。命令を届けに行くだけのこの話、第三者目線の撮り方をしたら単調になってしまって、これほどの緊張を伴う仕上がりにはならなかったのかも。 映像がまたキレイなんですよね。緑の稜線、夜に映える炎のゆらぎ、真っ白な塹壕すら視覚に強烈に訴えてきます。隣り合わせの死がより不条理に感じられて、印象的でした。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-13 17:37:18) |
52.第一次世界大戦中。西部戦線。ドイツ軍の罠を察知した連合軍側の伝令役として、突撃作戦中止の緊急伝令を最前線部隊に伝えに行く若い兵士の話。主人公視点でシームレスにカメラを回し続ける手法は、戦争映画としては珍しいと思います。一兵卒から見た戦争体験の再現という意味で、テーマと手法がうまくマッチしていたと思います。戦線に張り巡らされた塹壕のリアルな再現、まったく映えない粘土質の土地を進んだ後の一瞬戦争を忘れさせるような平穏な草原との対比など、戦争のドンパチ以外の緻密な絵づくりへの繊細な気配りが見て取れました。終盤、描写の客観性が失われるところも含めて、一般的な戦争映画に多く見られる、戦争の壮大さや壮絶さを、俯瞰的な視点や多視点により、物量で見せていく方向性とは、力の入れどころが違っていて興味深かったです。 【camuson】さん [インターネット(字幕)] 6点(2023-02-07 19:29:07) |
【TERU】さん [映画館(字幕)] 4点(2022-10-03 20:19:22) |
50.《ネタバレ》 長回しは非常に良く出来ていますし、18世紀のイギリス軍の行進から発展したようなリアルな塹壕戦の残骸や気味悪い感じも十分に味わえます。道すがらの事件・事故もそれなりにバランスよく配置されていて、それらもきちんとドラマチックに機能しています。しかし映画自体はそう大して面白くなっていない。それがこの作品の全てだと思います。 最も気になったのが、、道すがらに出会う人たちとのエピソードが違和感を感じるほど都合が良すぎる点です。飛行機の墜落を目撃したから小隊がやってきたのかもしれませんが、友達が大変なことになる一連のシーンが終った直後のアレはちょっとタイムリー過ぎて閉口してしまいました。また、夜の街での若奥さんとの一件も同様で、ご丁寧にミルクのエピソードまで入れてあってあまりにも出来過ぎているのです。川を流されて流れ着いた森にD連隊が居るとかもうね・・ そもそも論ですが、あの距離感でしたら橋を渡れず迂回する小隊のトラックに同乗していたほうがよっぽど早く、かつ確実に目的地に到着したのではないかと思われます。 繰り返しになりますが、全体的によく考えられているし出演陣の演技もとても良いのですが、、予定調和過ぎていけません。明らかに長間回しの弊害、いや、長回しのせいで全てをダメにしてしまったといったほうが正しいかもしれません。長回し自体を否定はしませんが、やはり要所要所できちんとカットを入れるべきでした。これではまるで長回しがやりたかっただけにしか見えず、よく出来てはいますが非常に残念な仕上がりだったと言わざるを得ない作品でした。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 5点(2022-09-08 14:46:13) (良:1票) |
49.《ネタバレ》 長回しは大好きなので、当然、見ている間は十分に楽しめました。ただ、ここまで振り切ってしまうと、今度は、回想も視点変換も時系列操作もできないという長回し手法の弱点が、逆に如実に出てきてしまうのですね。加えて、台詞とか演技はほとんど機能していないので、結局は技術先行というか、制作スタッフの側が際立って優秀だったというだけなのでは?という疑問を持ってしまいます。 【Olias】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2022-09-06 01:06:38) (良:1票) |
48.《ネタバレ》 戦場のリアルな緊迫感を体感。 綿密に計算した絶妙なワンカットワークによる視点でまるで自分が戦場いるかのような臨場感を醸し出す。 第一次世界大戦は他の紛争に比べると疎いが、背景やドラマ性よりも2人の任務の過酷さを徹底的に描いている。 見応えは十分でした。 |
47.長回しによる臨場感堪能映画。 生々しさがリアリティの乏しさを十分補っていてなかなか見応えありました。 1世紀前の戦争に対して残虐性の中にものどかさを感じてしまう核戦争リスクが高まっている今… 歴史は繰り返さず韻も踏んでほしくないものです。 【ProPace】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-05-07 00:04:01) |
46.《ネタバレ》 臨場感は凄い。 実話に基づくなのかもだけど、諸々リアリティーに近づけ過ぎたかな。 変な雰囲気作りなし。モキュメンタリー的な感じ。 でもちょっと神がかり的に運がいいかな。 【movie海馬】さん [CS・衛星(吹替)] 6点(2022-01-01 16:34:10) |
45.《ネタバレ》 音楽も良く ワンカット風映画でカメラワーク・撮影技術は本当に素晴らしいと思います。 が、内容がおもしろいかどうかはまた別 臨場感はあれど、展開が乏しくなっているように感じます。 洞窟では都合のいいように崩落していき、 見つかっているのになぜかドイツ兵は集まらず、挙句の果てに吐くほどの酒を食らい 追いかけたドイツ兵は都合よく転び、弾は周りをかすめるばかり 廃墟になり果てた町で何故か荒らされてない家に偶然滑り込み ひと時の休息 ラストのお兄さんとの会話は悪くないですが、基本内容はスッカスカ 戦争映画はどうしてもプライベートライアンと比べてしまい、 映像技術だけの自己満足映画になっているように思いました。 【メメント66】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-12-31 15:55:16) |
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44.《ネタバレ》 第一次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーは西部戦線で四年間伝令兵として従軍して最終階級は伍長でした。戦闘能力や指揮能力が認められれば一兵卒でも将校以上に昇進することが珍しくなかった当時、ずっと伝令兵で伍長どまりだったというのはヒトラーの生涯の謎の一つとして歴史研究者を悩ませています。大戦最終年の西部戦線ではドイツ軍は攻勢につぐ攻勢で、歴戦の古兵は攻撃の要として重宝されたはず、まあヒトラーは自分が語るほど有能な兵士じゃなかったってことでしょう。でも本作を観る限り、最前線で突撃するわけじゃないけど伝令はかなり危険な任務だったことは理解できます。ヒトラーの伝令兵仲間も、ほとんどが戦死したそうです。 “全編ワンカット撮影!”というのがウリの映画ですが、十数キロ離れた地点まで伝令が行くというお話しが二時間程度のワンカットで撮れるはずがない、と訝しんで観始めました。やはりちゃんとトリックというか編集点がありまして、スコフィールドが橋を渡って建物内で独狙撃兵と相撃ちになるシークエンス、それは白昼の出来事でしたが夜明けの一時間前までその後ほぼ半日も失神しているんですね。他の映像も複数の長回し映像を巧みに繋げたいわばワンカット風映画なわけですが(でもその撮影技術は驚異としか言いようがない)、この場面では完全にネタばらししたようなもんでしょう。今まで撮られたワンカット(風)映画は室内劇や限られた空間でのロケ撮影で製作されていますが、これほど大規模な戦場風景がまるで個人の観ているような視点で見せられると、まさに「コール・オブ・デューティー」のようなRPGゲームの映画版という感じです。考証は行き届いていて、とくに英軍に比べて異様に豪華で立派な造りの独軍塹壕などは良く調べているなと感心しました。コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングといった大物俳優をそれぞれワン・シーンだけ登場させるというのも贅沢過ぎです。強いて難をつけるとすれば、大量消耗戦に麻痺してしまっていた西部戦線の実情から、将軍や大佐などの幹部の対応がかけ離れているところです。史実を観ると当時の将軍たちの自軍の人的損害に対する無神経さは驚愕レベルで、実際のところ1,600人の戦死者なんて彼らにとってはかすり傷みたいなもの、まさに“西部戦線異状なし”って感じでしょう。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-27 21:49:59) (良:1票) |
43.《ネタバレ》 ワンカット(風)なだけあってシームレスに場面が繋がるのは良い。どうやって撮影してたのかがすごく気になった。 ストーリーは単純で、伝令を届けるの一点。相棒が早々に離脱するのは驚いたが、敢えて敵方を助ける描写で察することが出来た。 兄貴との会話はたしかに良かったですね。あと攻撃停止命令のあの間。憎いねぇ ※ここから脱線 この映画に限ったわけではないのだけれど、この映画を評価出来ない人間はダメだ、全然分かってないと言わんばかりのレビューが「他サイトで」散見するのがしんどい。 そんな評価のされ方を監督は望んでいるのだろうかと少し頭を抱えてしまったと言う脱線でした。 ええやん感想なんて人それぞれで。 【悲喜こもごも】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-12-04 02:10:49) (良:2票) |
42.《ネタバレ》 塹壕戦というのはこういうものだったのか。きっと本当はもっと汚くもっと悲惨だったのだろうが・・・ 武器や戦車等も当時のものをリアルに描き出している。 【チェブ大王】さん [インターネット(字幕)] 8点(2021-08-07 23:08:57) |
41.《ネタバレ》 1カットなんてことは全く知らずに見たんですが、前半の緊張感というか、ドキドキしながら映画の中に引き込まれてしまう、この撮り方好きです。 どうやって撮ったんだというくらいの塹壕の大きさ、ボロボロの建物や、燃える戦場、映像のスケールと美しさに圧倒されました。 若干中だるみ感はありますが、描きたかった壮絶さや緊張感は十分伝わったんじゃないかと。 ただタイトルの通り、ストーリが「命をかけた伝令」なんですよね。タイトルネタバレで、まさに映画の要約がタイトル。 もうちょっとヒネリが欲しかったな、という部分であります。 【Keytus】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-07-01 01:19:46) |
40.舞台となるフランス片田舎の幻想的な風景が美しい。 泥だらけの塹壕、霧立ち込める桜満開の農家の廃墟、迷宮のような残骸都市での逃走劇、渓谷の激流に呑まれて滝を落下、森林に響く美しいバラッド(英国民謡)、目にも鮮やかな白い戦場の最前線・・・緊迫感に満たされながら質の良い精神旅行を堪能した感じ。構造がシンプルな分、各々の行動やセリフも感動的で良。 ワンカット技術はもちろん凄いですが、それよりも「激突!」「T1」「ラン・ローラ・ラン」などに連なる「ひたすら逃げる・走る系アイデア一発もの」として高評価です。 007シリーズでこの監督大嫌いだったんですが、この作品はとても良い。監督業にも題材の得手・不得手が有るんですかね。 しかし相変わらずの野暮ったい邦題はどうにかならないのか…。 【番茶】さん [DVD(吹替)] 9点(2021-05-15 08:03:07) |
39.長回しが無ければさぞ平凡な映画に見えるのでしょうが、それがあるために独特な印象を受ける作品であることは間違いありません。主人公は唐突に打たれて死ぬと思っていたので、最後までドキドキしながら見ていました。 【次郎丸三郎】さん [DVD(吹替)] 7点(2021-05-07 23:14:22) |
38.確かに、ワンカット撮りは面白かった。 没入感があり、自分がその世界にいるような不思議な感覚がある。 ただ、それが楽しかったのは最初だけ。 徐々に、ワンカット撮りの弊害ばかりが出てくるようになる。 ワンカットゆえに映像が単調で、メリハリがない。見ていてダレる。 2時間の映画をひたすらワンカットは無理がある。 まあ、でも、それはまだいい。この映画の致命的な欠陥は、単純にお話がつまらないことだ。 ストーリーと呼べるようなものはなく、淡々とどうでもいいシーンが続く。 ワンカット撮りで、ぱっと場面転換できないので、どうしても単調で間延びした展開にならざるを得ないというのもあるのだろうが、そもそもドラマ性を入れようという努力も見られない。 序盤を除くと、ただただ退屈な映画だった。 【椎名みかん】さん [インターネット(吹替)] 2点(2021-05-06 15:54:48) (良:1票) |
37.ワンカットに見える映像はすごいと思う。それゆえ単調な映像になっているように思います。 どうでも良いけど、第一次世界大戦中は飛行機を使った通信(伝令)とかってなかったのかな? 制空権をとっているなら人が行かなくても、通信筒を届ければよかったのではと思ってしまった。(まぁ、映画がなり立たなくなるけど) 【あきぴー@武蔵国】さん [DVD(字幕)] 6点(2021-03-06 17:42:59) |
36.《ネタバレ》 全編ワンカット風の撮影が売りの映画。 それ以外は普通。 相棒が割と中盤で退場したのは予想外ではあったかな。 こういう実話物はどこがフィクションなのか調べるのが好きなのだけど かなりの部分がフィクションで事実としては ドイツ軍の一部が突出していたため戦略的撤退を行ったアルベリッヒ作戦から着想を得たとのことなので そもそも伝令もなにもなかったっぽい。 【Dry-man】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-02-23 12:15:06) |
35.《ネタバレ》 1917年、第一次世界大戦真っ只中のヨーロッパ戦線。激しい戦闘が続くこの地で、独軍によって今まさに罠に落ちようとしている仲間たちを救うため、命を懸けて戦場を駆け抜けたある無名兵士の苦難の旅路を全編ワンカットで描いた戦争ドラマ。まず驚かされるのは、やはりその驚異の撮影手法でしょう。手持ちカメラからクレーンでの空撮、そしてまた通常の固定カメラへと流れるように続く変幻自在のカメラワークには圧倒されました。明らかにカメラマンが壁を通り抜けていたり、激しく流れる川の水の中から普通に撮っていたりと、「本当にどうやって撮影したんだろう?」と月並みな感想ながら改めて感嘆させられます。そして、それにより戦場の臨場感を生々しく描き出すことに成功している。見事というしかありません。まあ内容が内容だけに物語的な深みは一切ありませんが、監督はそういった主題を扱うことをはなから放棄しているところも潔いですね。なので、細部の細かなエピソードが重要となってくるのだけど、それがどれも自然で非常に巧い。特に、一緒に旅に出た仲間が途中、墜落した敵機のパイロットを救おうとして命を落としてしまうというエピソードはなんともやり切れない。お互い普通の人間のはずなのに、背負うべき国家のためにかくも愚かになれるのか。戦争というものの不条理性を見事に炙りだしている。サム・メンデス監督作の中では今のところ僕は一番好きですね。うん、充実した映画体験をさせていただきました。8点! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2021-02-19 06:30:23) |