1.《ネタバレ》 同じ生田斗真出演、同じ釧路地区ロケでありながら、俳優にきちんと方言指導を施し、ロケーションを多彩に展開してみせた『ハナミズキ』の仕事のほうが数段誠実である。
主人公を取り巻く人間関係の展開、男女の距離の見せ方、映画的交通手段のあり方、季節の提示、携帯電話の用法など、様々な観点においてあまりにも演出が貧困でレベルが低い。
特に最初に挙げた二点のいい加減さは、作り手の単なる怠慢に他ならない。
方言は人物の人間味の演出と上京のドラマを語る上で必須の要件だろうし、主演二人の実力からすれば雑作もないことであるのは過去の出演作に明らかでありながら、それを課すことが出来ないのはスタッフよりもキャスト優位の環境ゆえか。それら手抜きの集積によってキャラクターの生活感が失われていく。
説話の効率の悪さも致命的である。
一例だが、生田斗真と吉高由里子が噴水のベンチで語り合うのを、本仮屋ユイカが見ていたというシーン。縦の構図一発で十分に語れるものを、俳優のスケジュールの都合かどうか知らないが、ショットをただただ官僚的に連ねひたすら説明に勤しむ。その繰り返し。
おまけに、使いどころを間違えているとしか思えない劇伴音楽がひたすら耳障りだ。
そうした陳腐で不出来なドラマと、要領の悪い語り口が駅での別れまで延々と続く。
結果、この程度のオハナシが自堕落に引き延ばされ、詐欺のごとく二時間超まで弛緩する。
そして結局、肝心の主演二人の人物像すら満足に描写できていないという体たらくだ。
後篇まで付き合う気は無い。