★10.《ネタバレ》 戦後4年目の映画だが、すでに多くの人々が普通に市民生活をして夜の銀座も栄えている。ただし戦災孤児や生活苦の話も一応あり、そもそも家族構成にも戦争の影響が見えていたかも知れない。カンカン娘というのがどういう意味か説明はなかったが、当時多かったパンパンガールに対する感情を表現したらしい場面はあり、台詞でも「カンカン」「パンパン」の対比がなされていた。
内容としては歌謡映画ということで、ノリのいい題名の歌を聞かせるほかにミュージカル風の場面もあり、正規の合唱曲が出る場面もあったりして各種の歌が入っている。歌以外では著名な落語の師匠が出演して、終幕部分を落語で締めたのは意味がよくわからなかったが、これは現代歌謡+伝統芸能(+映画も?)のコラボレーションによる総合娯楽映画だったのかと結果的に思った。 コメディなので笑わせる場面が多く、大男が日本家屋に入ると物が落ちたり倒れたりする趣向がやたらしつこいので笑った。また女児の言動がユーモラスで「たびたびすみませんねえ」は大笑いした。ポチが「腐ったような犬」というのもひどい言い草だが、映画に出るくらいなので賢い犬と思われる。このポチも雰囲気を和ませる重要キャラクターだった。 物語の面では、主人公が「流し」の経験により芸術に対する考え方を変えていて、これは映画会社が違うが2年後の「カルメン故郷に帰る」(1951)に通じるものがある気もする。また主人公の相手の男が、喧嘩でわざとやられていたのは戦後らしい非暴力の訴えのようでもあるが、ただし一度は強いところも見せていたので、守るべきものを守るために躊躇はないということらしい。 全体的には、これから希望の未来があるとまではいえなくても、前向きにやっていればそれなりに道が開ける、と思わせるような朗らかさのある映画だった。
その他に関して、主人公宅の周辺は畑や林や野道があって一体どこなのかと思う。少し歩けば町らしくなるので東京の周縁部だろうが、これは制作会社の撮影所付近と考えるのが普通のようで、世田谷区の小田急沿線だと思われているらしい。丘の上から家並みが見えて電車の走る場所は、梅ヶ丘駅近くの羽根木公園(当時の通称・根津山)と推定されているようだった。 またどうでもいいことだが、2階と屋外で歌を交わす場面で出ていた「サンタルチア」の替え歌で「何たることぞ、さらば往かん」という歌詞があったのは、後世のオヤジギャグ「なんたるちあサンタルチア」に先駆けた発想かと思った。 【かっぱ堰】さん [インターネット(邦画)] 6点(2025-01-04 16:07:08) (良:1票)《新規》 |
9.《ネタバレ》 1949年の時点でこのようなミュージカルコメディが作られていたなんて。 ほのぼのとしていて、いま観ても十分に楽しいですよ。カンカン娘のメロディがいつのまでも耳に残ります。 【あろえりーな】さん [インターネット(邦画)] 6点(2024-08-17 13:11:17) |
8.《ネタバレ》 カルピスの宣伝歌?ではなさそうだ。 自分が生まれるずっと前の映画ではあるが、大いに懐かしさを感じる。 最後の志ん生師匠の落語(演目は「替わり目」)を聞けるのが落語ファンにとってはありがたい。 【チェブ大王】さん [インターネット(邦画)] 5点(2022-03-13 15:12:31) |
7.《ネタバレ》 小粋な江戸っ子映画。 どこか清水宏作品の様な風情。 とても平和な映画で、心穏やかに安心して見る事ができる。 そう、肩の力を抜いて。 たまには気張らず見られる映画も良いもんだ。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2020-11-19 16:12:47) |
6.《ネタバレ》 なかなか楽しいコメディ。序盤で歌いまくるのでミュージカルかと思ったら、その後は普通に劇中歌として歌ってました。「歌うこと」をアピールする目的だったのかな? それはともかく、前半は明朗な喜劇だったのですが、徐々にシリアスな方向に持っていったりするのはうまい。とはいえ基本的に最後までコメディっぽいので、ケンカの場面とかちょっと違和感を覚えました。最後も志ん生師匠の独演会で、貴重なのでしょうが主役の2人が消えたりしてこれも「?」という終わり方。それともあれも笑うところだったのかな……? とはいえ、全体的には楽しめました。とりわけ、オーバーオールにベレー帽の高峰秀子がキュート! 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-12-08 08:10:44) |
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5.《ネタバレ》 中途半端なミュージカル仕立て、ストーリーに捻りもなく、深い人物描写もなく、あっけらかんと明るく脳天気。 何じゃこれって思っていたのだが、映画しか娯楽のない当時のアイドル主演ドラマなんだと考えると、人気歌手や落語家を脇に配し、高峰秀子の魅力をしっかり引き出してるなあと、それなりに納得できる。 戦後間もないという時代背景を頭に叩きこんでおけば、娯楽という映画の大事な役割はしっかり果たしていると思えるし、今見ても、当時の世相が垣間見えて興味深い。 【nobo7】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-01-03 00:58:54) |
4.こういう「素直な笑い」の映画って、今では少ないよね。いつのころからか「うがった笑い」が主流になって、多人数のための笑いは難しくなっている。文化的洗練の結果かもしれないけど、笑いの伝統の柱を一本失ってしまった気がする。昭和24年という時代の輝きもあるわな。一応職業難の背景が描かれ、灰田勝彦の純粋芸術派が大衆芸術派へ「改心」していくという話もあるが、さして重要ではない。世相を見れば下山事件など暗いんだけど、それだけ戦争が終わった喜びを歌い続けていたいという心理も強くあったんだろう。この年のほかの映画を見ても『お嬢さん乾杯』『青い山脈』『小原庄助さん』と明るい。「前向きに明るく」というモットーをなんのてらいもなく掲げることの出来た時代。「カンカン娘」はけっこうスローテンポだったんだ。これは歌のヒットが先行して映画化になったんだろうな。同年の笠置シヅ子主演の『脱線情熱娘』ってのも見たんだけど、それ用の主題歌が別に作られているのに、ラストでは「カンカン娘」を歌って終わっていた。これを歌わなくちゃ客が納得しないというぐらいのヒットだったんだろう。さて本作、志ん生に独演させて終わらせるという憎い演出(あるいは手抜きのシナリオ)。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 6点(2012-09-17 09:37:34) (良:1票) |
3.ブギの笠置シヅ子、ハワイアンの灰田勝彦、戦前戦後の歌謡界で一世を風靡した彼らと天才子役の名をほしいままにした高峰秀子が共演した映画。彼女は子役から女優へ脱皮するとともに、歌手としてもレコードを出すほどだった。この映画ではコメディアンの岸井晃を加え、それぞれの「銀座カンカン娘」を歌う。そういった意味で大変貴重な映画である。そしてさらに貴重なのは、伝説の落語家5代目古今亭志ん生の映像が見られることだ。 映画は不景気の時代、職はないし金はない。しかし登場人物は少しも暗いところがなく、明るく楽しく生きようとしている。ミュージカルという大げさなものでなく、楽観的にものを考えるあまり、つい歌い出してしまうというしろもの。ほほえましくもあり、ほのぼのとしている。ところで「カンカン娘」の由来だが、米国では「カンカン帽」が流行していた。その「カンカン」を取ったにしても、別に何の因縁もなさそうではあるが・・・。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-09-07 08:42:04) |
2.のどかでほのぼのとした平和な時代の昭和日本の庶民の暮らしぶりを覗かせてもらって得したような気分になりました。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-31 00:08:52) |
1.今も銀座カレーのコマーシャルでこの主題曲流れてますよね。高峰秀子目当てで観た映画ではあるんですが、映画の出来はミュージカル(音楽入り喜劇?)としちゃ何とも泥臭いことこの上ない。日本ではミュージカルが出来ない土穣は終戦間もないこの頃から明白だった事を再認識した次第。しかも田圃の中で、唄い踊るってのは・・・どうなの? |