9.《ネタバレ》 観る前は正直、苦手なジャンルの映画だと思っていました。ですが、観ていくうちに段々と引き込まれていき、登場人物の多くに感情移入してしまいました。
正直なところ、私はLGBTQなどの性別問題は自分とは無関係だと思っています。自分は違うし、でも無関係というからにはそんな人が周りにいても極端に反応したり差別したりも特にしません。自分は違うので恋愛対象にはなりませんが、友人であればこちらも特になんとも思いません。何かの拍子に誰ががそうだと分かったとしても、「あ、そうなんだ。ふーん」程度の反応しかしないと思います。「わたし、日本人より欧米の人の方が好みなの」とか言われるのと同じくらいどうでもいい。
子供の頃から思っていたことで、なんというか、説明が難しいのですが、そういう人たちに特別な呼び名をつけたり、「こういう人たちもいるから理解して」という運動そのものが既に差別なんではないかと思っている自分がいて、そういうのを見ていると言い方は悪いのですが、アホらしい、と思ってしまいます。
人権、ともよく言うがそういう呼び名を付けられた人たちの人権には特別配慮してそうでない人たちには配慮しないこともよくわからない。この映画では取り上げられなかったが、体が男で心が女であっても女子トイレには行かないだろう。女風呂にもおそらく行かないだろう。そこは自分の仕組みと、社会の仕組みとを双方に考えた上でバランスを考えるべきだと思う。性的には大多数に属する男の自分だって、性とはまた違う自分の個性の仕組みと、社会の仕組みとのバランスをうまく考えて折り合いをつけているのだから。誰にだって多かれ少なかれ、大なり小なりそういう面はあるだろう。だから、リンコさんが検査入院になったとき、病院の事情も考えずに人権侵害だと大騒ぎするマキオには大いに違和感を感じた。ああ、彼にとっての人権というのもそういうことなんだな、と。
別にこういう考えの自分が大正義だとも思っていません。ただ、上述したリンコさんの病室を変えるよう病院のスタッフに迫るマキオのように、相手の事情やその場所の仕組みも考えず、ただ自分たちはこうだからこうしろ、と迫るのはなんだか嫌だな、と率直に感じました。病院のスタッフが、リンコさんの容姿や特性に対して明らかに差別的な態度や嫌がらせ等の攻撃をしてきたというなら話は別ですが。そういう意味では、トモがカイの母親に持っていた洗剤をぶっかけるシーンは痛快でした。ああいうのは良い!!スカッとしましたね。
改めて、私は自分はこういった性別問題とは無関係だと思っています。もし私が誰かを攻撃したり悪口を言っていたら、多分それはその人のことが嫌いなだけです。体は男で心は女で…とかどうでもいいです。その人そのものと仲良くなれるかどうかは別問題なので。ただ、社会の仕組みを無視して権利の話ばかりしているシーンは見たくないなというのが率直な感想です。映画のレビューっぽくは無いですが、この映画を観てこういうことを思いました。一つの考え方としてご一読ください。