116.《ネタバレ》 ミュージカルがちの人と苦手の人、両方が厳しい見方をする作品。確かにミュージカル映画とは言ってますが、ジーンケリーと比べちゃかわいそう。あちらは筋金入りですから。こちらのミュージカルパートはあくまでも、二人にとって「夢を追う」姿の象徴的存在で、脳内妄想の範ちゅうを超えてないレベルです。現実はもっと厳しいもので、ぶつかり合い、すれ違い、傷つけ合い、ハッピーなミュージカルのようにはいかない。カラフルな色使いのロマンチックなラブストーリーは非現実。夢を見ることは非現実的だけど、夢のためにやりたくない仕事をして、妥協して、挫折するのは現実。この矛盾の狭間に生きるのが夢追い人。ミュージカルという不条理にはぴったりな題材だと思う。 二人はそれぞれ夢を叶えることが出来たけど、何て切ないラストでしょう。あの走馬灯はどちらの脳内を走ったものなんだろう。あるいは二人の脳裏に同時に現れたものだとしても、二人は別々の道に戻っていくのです。あー、切ない。 良くも悪くもこちらのレビューのようにみんなが自分の人生観や恋愛観、映画愛、ミュージカル愛を自由に語り合ってもまだまだ語ることがありそうな作品であることは確か。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-13 15:01:27) (良:1票) |
115.《ネタバレ》 懐古的なオープニングタイトルで始まり、ワンカットでカラフルに描かれる歌とダンスの競演。カメラワークが素晴らしい。ツカミはOK!という感じですね。 が、そこからは定番・鉄板・お約束感満載のラブストーリー。意外性はほぼなしといった感じでした。それでも惹きつけられ一気に観てしまったのは何故だろう?ひとつには主演ふたりの魅力ですが、それを上回る優れた演出によるところだと思います。 オープニングでも度肝を抜かれたカメラワーク、繊細かつ巧妙な色使い、そして素晴らしい音楽。敢えてカテゴライズするならば本作は本格的ミュージカルとは言えないように思えます。けれども、間違いなく音楽が支えている作品。これもミュージカルの一形態なのですね。 ラストのif走馬灯は感動的でした。ふたりの歩んだ、或いは歩んだかも知れない各パートが見事に編集されていて、このカットが定番・鉄板のラブストーリーを珠玉のラブストーリーへと昇華させているように思います。 ミュージカルと言うには何か物足りない。ラブストーリーと言うには目新しさは感じない。でも惹き付けられて止まない。不思議な魅力の作品でした。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-02-26 19:27:32) (良:1票) |
114.《ネタバレ》 前半は「えらくオールドスタイルなミュージカルだな」と思っていたら、中盤以降は完全にほろ苦い大人のラブストーリーでした。売れないジャズピアニストと女優志願の娘が主人公という典型的な“ボーイミーツガール”なんですが、デイミアン・チャゼルはあえて奇をてらわないというか一周回って新しさを感じさせるようなノスタルジー、スタジオ・クレジットと“CinemaScope”のロゴの見せ方なんかはモロでしたね。この映画はミュージカルではなく、いわば“ミュージカルをフューチャーした恋愛映画”と捉えるべきでしょう。多彩なミュージカル・シークエンスを期待していたこちとらにはちょっと拍子抜けでした。それでもベタではありますが、ラストの“二人が歩んだかもしれなかったもう一つの人生”を見せるミュージカル・シークエンスは感無量です。この映画は音楽以上に色彩設計が素晴らしい。冒頭のダンス・シークエンスはもちろんですが、セブとミアの心情を表すのに青系や赤系そしてそ補色として黄色と緑が、セットや情景そして衣装に効果的に使われています。演技としては、やはりエマ・ストーンが良かった。これほど演技しているような表情(ちょっと変な表現ですが)で歌唱できる女優だったとは、観直してしまいました。あと前半にワン・シーンだけ出演してライアン・ゴズリングをクビにするJ・K・シモンズ、これは『セッション』のパロディなんですね(笑)。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-06 21:41:08) (良:1票) |
【TERU】さん [ブルーレイ(字幕)] 5点(2023-06-08 21:28:12) |
112.《ネタバレ》 映画大好き、でもミュージカルは苦手です。ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンじゃなければ一生観ることは無かったと思います。主演の二人の俳優の相性が見た目からして良いですね。 オープニングなんですが、長回しというのがわかって「へぇ~~大変だったろうな」とは思いましたが、アレ、いいですか?長いなぁ~いつまで続くんだろと感じ、ダンスも振り付けも音楽も特にいいとは思わなかったです、元気がいい、威勢がいいというのは思いましたが。 で、なぜかゴズリングとエマちゃんの素人っぽいダンスの方が良いんですよ、不思議ですねぇ。これがハリウッドスターならではの魅力なんですかね。 セブが収入のために参加したバンドの曲、私もびっくりしました。ジャズから派生してるジャンルなのはわかるけどなんと古臭い曲というかなんというか。 バンド名がメッセンジャーズ、もう笑うしかなかったです。ここでいったい年代はいつなんだとわからなくなりました。「I RUN」をリクエストしてたけど。 話の内容は男と女の違いというのをしっかり描いてるなと。もし女優になっていなかったらセブと・・・と想像するとこがほんとに女にありがちなことですよね。しかし5年とはね、子どもは2歳くらいなので3年前には二人はダメになってるんですね。早っ! ミアのアップで終わらなかったのがこの映画の最も良いとこです。ラストのセブの表情所作が抜群でした。 しかし今となっては「ラ・ラ・ランド」といったらアカデミー賞授賞式のあの大惨事がいちばん印象に残ることに。 プレゼンターはフェイ・ダナウェイとウォーレン・ベイティでしたね、ベイティは「え?ん?」て戸惑ってるようだったけど、 隣のダナウェイが「なにしてるの?ここに書いてあるじゃない」と、言っちゃったんですよね。 間違って渡したのがいちばんダメだけど、ボニーとクライドも御高齢になり判断力が少々衰えたかな?? 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-04-05 15:23:11) |
111.《ネタバレ》 ミュージカルのダサさ具合は悪くないです。主役2人がミュージカルをやりそうな人でないところイイです。そのバカっぽさを隠れ蓑に、誰もが一度は思い描くような淡いif物語とほろ苦い現実をブッ込んでくるあたり、脚本が巧みだなと思いました。男の主人公は、典型的な美形ではないですが、飄々とした感じで、終盤はかなりかっこよかったです。女の主人公は、遠目に見ると小娘なのですが、近寄ると妖怪人間もしくは鳥のヒナといった感じで、マンガチックというかデフォルメが効いているというか、まあかなり好きです。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 7点(2023-03-02 19:49:13) |
110.エマ・ストーンはこういう気丈な女性の役がよく似合う。 ライアン・ゴズリングもやさしさゆえに不器用な男の悲哀を好演している。 あの有名なオープニングの高速道路ダンスだけでもこの映画を見る価値はある。 ベタな展開の恋愛映画で、すれ違う二人を見ているこちらまでフラストレーションが溜まってくるけれど、 最後まで見ると、それらはすべてラストのために練られた仕掛けなのだと気づく。 プロットが平凡なだけに、脚本と二人の演技力がまずかったら、この映画の成功はなかったと思う。 【めたもん】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-10-12 19:49:41) |
109.もう一つのタラレバの過去と現実、ラストはちょっぴり切ないですね。 でも、もし初めての出会いが完全無視ではなくキスだったとしても、彼らの価値観では同じような運命が待っていたのでは? 【ProPace】さん [地上波(吹替)] 6点(2021-07-22 22:49:40) |
108.《ネタバレ》 【nanapino】さんとほぼ同意見。この映画は観る人を選ぶらしいけど、この点数になってしまった私は選ばれなかったということだろう。 聞き取りにくい早口のぼそぼそ英語と、ときに病的な表情を見せる主演女優。この二つだけでも充分に萎えた。凝ったカメラワークとかいいから、こっちとしては雑でもユーモアあふれて人間味のある映画が観たいのよ。 でも夕陽のダンスシーンとラストシーンはかなり良かった。 【mhiro】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-05-18 22:05:47) |
107.序盤はミュージカル調と音楽が主体で、 あんまりストーリーないのかなと思った。 けど、中盤くらいから話が盛り上がってきて、 最後の展開の意外性にはやられました。 「そうきたかー!」「そっちかー!」 音楽も良かったけど、映画の構成として面白かったです。 もう1度観る機会があれば8点に再評価(予定) 【愛野弾丸】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-13 22:08:19) |
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106.《ネタバレ》 冒頭の高速道路を使った一大ダンスシーンにまず圧倒されます。これでもかと繰り出されるダンスに、驚くべき空間的な広がり。すごいのなんの。 だけど、この陽光の下のド派手オープニングから一変して、映画本編はどちらかというと、そういうきらびやかなエンタメの世界の底辺に位置するような、とある男女の姿が、ひっそりと描かれてます。実際、夕暮れや夜の場面が多く、しっとりとした印象です。 あくまでミュージカルは非現実でありファンタジー、だけどそれは終盤の再会シーンでは、哀しき形で活かされる。 で、はい、映画は終わりましたよ、というラスト。シャレてますねえ。シャレ過ぎ。 【鱗歌】さん [地上波(吹替)] 8点(2021-05-09 10:26:01) |
105.《ネタバレ》 夢の見れない時代に、一瞬であっても夢を見せてくれ、人生に活力を与えてくれるエンターテインメントの神髄を感じることができました。 【TM】さん [地上波(吹替)] 8点(2021-04-18 10:39:00) |
104.《ネタバレ》 ~La La Land~ちょっと狂ったタイトルで、造語だとしたら歴史に残る名タイトルなんだけど、既存の言葉らしい。 『現実的でない陶酔状態』とか『夢の国=LA(ロサンゼルス)≠ハリウッド』 底抜けに楽しいオープニングのハイウェイのダンスから、カラッとしたミュージカル・コメディかと思ったら、意外にも切ない物語だった。 これはもしや、後半の走馬灯のような~if~のシーンが現実で、映画の本筋が妄想なのでは? 売れない女優のタマゴが、たった一回限りの、しかも大失敗した一人芝居で注目されて主演に抜擢、5年後は大女優に… 本格ジャズが売れない時代に、片手間で参加したバンドが大ヒットして、夢だったハリウッドのジャズ・バーを買い取って繁盛させる… う~ん…そんなに上手くいくか?って思ったけど、本筋が妄想だと辻褄が合わない事が多く発生するので、そのうち再検証したい。 なので、あの~if~のシーンは、セバスチャンからミアへ『有名女優になる君の夢は、きっと僕と付き合い続けても、別れても、どんな道を辿っても絶対実現できたよ。でもハリウッドのジャズ・バーのオーナーになる僕の夢は、君と別れないと実現できなかったんだ。これで良かったんだよ、君は後悔しないで良いんだよ』って意味に捉えよう。 店の名前が“チキン・オン・ザ・スティック”じゃなく“セブズ”なのは、セブのミアへの未練だろうか?感謝かな。 男優、女優、ミュージシャン、シンガー、ダンサー。自分の夢を実現すべくハリウッドに向かう希望に溢れたタマゴたちで、ハイウェイは大渋滞だ。 心の中で笑顔で踊る夢を抱きながら、現実は我先に目的地(地位と名声)に行こうとクラクション(競争)の応酬。成功者はほんの一握り… そう思うと底抜けに楽しく見えたオープニングも切ないな。 渋滞する夜のハイウェイから降りることで二人が再会するのも、競争から抜けるって意味だろう。 なんか無性に『マルホランド・ドライブ』を観たくなったぞ。 【K&K】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-04-17 13:12:25) (良:2票) |
103.《ネタバレ》 予備知識なしで観たので、もっとゲップが出るくらい歌って踊ってなミュージカルなのかと思っていましたが、ミュージカル的なアプローチはかなり抑えめな印象でした。 しかし、あまりミュージカルに興味がないわたしでも、オープニングシーンや二人がワルツを踊るシーンはなかなか見応えのあるものでした。 物語については、思い描く夢や未来に辿り着こうとすればするほど現実はかけ離れていってしまう、というよくあるアレで、ラストもベタとは言え、せつないものでした。 それでもこの映画の二人はいろいろとかなり恵まれていて、思い描いた未来と違ってしまったとは言え、手に入れたものは御の字な訳で「そんな上手く行くかよ」って感想が個人的には先に来てしまいました。そこは映画として素直に楽しまなければいけないのですけど・・・ 【J.J.フォーラム】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-04-01 10:15:21) |
102.《ネタバレ》 ド定番なストーリーで、主な登場人物は2人だけ。しかもその2人も、どこにでもいそうな平々凡々な人物。ところが、最後まですっかり惹き込まれてしまいました。ミュージカル的なシーンにありがちな違和感もまったく感じないほど。 おそらくそれは、スタバ風に言えば「手の届く贅沢」を描いているからかなと。もともと才能のある人物ががむしゃらに頑張って成功を掴み取るというのではなく、凡人が「こうなったらいいなぁ」と夢想しつつちょっとだけ頑張ったら、幸運に恵まれましたという感じ。そこに悲壮感はないし、貧困とか格差とかややこしい問題も描かれません。凡人代表の私としては、登場人物を応援するというより、「こういうこともあるよね」と共感するばかり。 そして話は突然5年後に飛び、2人とも「手の届く贅沢」を手に入れますが、「手に届いていたはずの贅沢」は手放してしまいます。その描き方がまたせつなくて、心を揺さぶられます。やはり、「こういうこともあるよね」と共感するばかりです。 【眉山】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-22 02:30:55) (良:1票) |
101.《ネタバレ》 この物語には二つのストーリーがあり、一つは夢を実現する過程を描いたストーリー、もう一つは平凡な幸せを手に入れるストーリー。ラストのストーリーの見せ方はとても興味深く、完全に心を奪われました。が、ミュージカルが中途半端である感が否めません。見せ場二人で夜景を見ながら踊るシーンくらいでしょうか。 【いっちぃ】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-06 15:36:37) |
★100.《ネタバレ》 ミュージカルは好きです。舞台も結構見ます。 でも、この作品はもう一度見ようとは思えません。 OPのフラッシュモブみたいなのは、まとまり無くてチグハグで長く感じたので、 もしかして好きになれない映画かもと思ったら、そのとおりでした。
ありきたりなストーリーだし、歌やダンスもそれほど見所無く乗れないまま終わりました。 ライアン・ゴズリングの繊細な演技は好きですが、エマ・ストーンに魅力を感じません。
ただ、最後のシーンは良かったです。 別の未来もあったかもしれないけど、これで良かったんだよね、と無言で見つめ合って少し笑顔になるところ。 二人は別々の道を行ったからこそ、自分の夢を叶えられたと思うので。 【nanapino】さん [地上波(吹替)] 4点(2020-07-07 17:20:44) (良:1票) |
99.《ネタバレ》 2人のすれ違いまでは普通のミュージカルで、「こういうのは日本では作れないよなあ」と感心しながら見ていた。が、すれ違い出してからは話が動き出すもののミュージカルではなくなって、普通のお話に。それもよくある「夢追い人」であるアーティストの大衆迎合問題。どうせなら、この辺の葛藤や本人たちのいう「狂気」とやらもミュージカル表現で貫き通すべきなんじゃないのかと。という意味では中途半端な作品。ラストのパラレルワールドで一応上手く締めたとは思うが。 この世はランキング&点数社会で様々に評価される。このサイトにも点数システムがあり、「いいね!」ボタンもある。そういうのを無視する「狂気」をもった「夢追い人」が己を貫く矜持が本作の提示と言えるのか否か。アカデミーという内輪の評価システムにより「夢追い人」の「狂気」が承認されるという複雑な構造にはなっているようにも思えるが、概してそういう体質は大衆ウケはイマイチなのかもしれない。それが本作に限らず「アカデミーなのにツマラナイ」という大衆の言説に現れるのだろう。ただし、新型コロナ騒動で、公私にわたる「アーティスト支援を!」という風潮は大衆としてどう理解したらいいんだろうか?と暫し考え込んでしまうきっかけを与えてはくれた。アーティストと大衆の問題は難しいとあらためて思った次第。 |
98.《ネタバレ》 ラスト10分の着想が素晴らしいと思います。ふたりのタラレバなんですが、とても幸せに満ちていて、あんなの観たら泣けてしまいます。あの時こうだったら?違う選択をしていたら?誰しもが思うことをなんて素敵に現したのか。 そして、「シェルブールの雨傘」を思い出すような、別れた2人が再会してしまうシーン。あちらは雪の中、戦争によって引き裂かれた二人のもの悲しさがありましたが、本作の再会には、切なさと甘酸っぱさの中にも、前向きなメッセージがありました。ステージ上のセバスチャンからの視線は温かく、「お互いに夢を叶えたね。これでよかったんだ。さあ、行って」と、ミアの背中を押してくれるのです。 上映当時、デートで見てはいけない映画と聞いたことがありましたが、私もふと、元気でやってるんだろうか?と昔お付き合いしてた方(実際ジャズや昔の音楽を好む人間であった)に思いを馳せました。今なかなか時間も取れず、そう沢山は観られないのだけれど、やはり映画を観ると色々な感情が湧いてくるのがいいですね。 【SAEKO】さん [地上波(字幕)] 8点(2020-06-24 23:36:53) |
97.《ネタバレ》 ちょっと甘いかなぁと思いつつ、9点評価で! なるほど、この作品を好きか嫌いになるかの大きな分かれ目は、「夢を追いかける人」に共感できるかどうかなのだと、他の方々のレビューを見て感じた。私は、「夢を追いかける」主人公2人にかなり共感ができたから、この作品を好意的に見ている。アカデミーでウケがよかった本作だが、それはアカデミー(つまりは映画産業)に関わる人々全員がなにかしら「夢を追いかける人」だからであるのは間違いないだろう。 はっきりと指摘しておきたいのは、「夢を追いかける人」=「真面目で誠実、常識のある人」ではない、ということだ。主人公たちの価値観や考え方に共感ができないという人は、もしかすると彼らにもっと真面目で誠実なキャラであってほしいと勝手に願ってはいないか?それこそ古い映画の中にしか出てこない、夢に向かってひたむきに頑張る真面目な若者。夢を追う人をそのように定義づけていないだろうか? だが世間を見渡せば、実に浅い考えで夢を追う人はたくさんいるし、浅い考えのまま、大して芸もないのに成功してしまう人だってそこそこ存在するのが現実だ。それはハリウッドを見なくても、日本の芸能界を見ればよくわかることだ。 セブとミア。2人が完璧な人間でないのは確かだ。類い稀な才能を持っているのかも、はっきりとはわからない。2人は考えが浅はかなのかもしれない。欠点も多かろう。ただ、そうした人物たちが繰り広げる物語には、どこか厭らしいリアルさ、現実の泥臭さが綴じ込まれていて、むしろ私はそういう物語の方がリアリティを感じることができて好きだ。完璧な主人公たちがいてもいいし、完璧でない問題だらけの主人公がいてもいいのである。 なににせよはっきりしていることは、主人公2人は成功すること、夢を追うことに対して猛烈に執着し、飢えていることだ。たとえ欠点だらけの人格でも、彼らは夢にしがみつき、チャンスに食らいつく。この点だけについては、主人公2人とも極めて真摯なのである。本作の素晴らしいところは、そうした2人の執着や飢えを、賞賛はしないまでも、明確に肯定しているところにある。ラストシーンにおける二人の視線と表情の交錯に、それははっきりと表現されている。2人は夢にしがみついた。2人が結ばれることはなかったが、それぞれの夢は叶えた。彼らは再び出会い、互いに見つめあった。そして互いを認めあった。それぞれの道を突き進め、というように。やはり映画の最後でも、2人は、夢にしがみつくことに真摯であるのがわかる。2人の無言のやり取り、万感の思いが籠った視線と表情、それを映し出す映像に、夢にしがみつくことへの肯定を見出すことができる。そこには余計な説明も台詞もないけれど、欠点だらけであっても、夢にしがみつき、追いかけ、執着しろ!と映画が熱く訴えかけている。 「セッション」では観客を突き放すかのようなエンディングだったが、本作は、主役2人が自分たちだけの世界に没入するという点では共通しているが、主役2人と映画そのものが観客に主題を訴えかけるエンディングになっている。だから切なくなるのだが、どこか暖かい気持ちで映画を見終えることができた。そして映画の訴えかけに大いに共感できた。こうなったからには、高評価をつけなくてはならない。というわけで、9点評価で。 【nakashi】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-04-06 22:23:33) |