7.《ネタバレ》 見る前にはノーラン作品のレビューに毎回書く事を、今回はさすがに書かずに済むと思いました。何しろノーラン作品には珍しく上映時間が1時間46分と短尺ですからねぇ。
IMAXの大きな画面と、いつもより増し増し状態の音響(大手がホンキ出すと音響設備はともかくスクリーンはさして大きくなくイマイチ暗い立川とかチッタとかはあっちゅー間にカスむっていう)で描かれる大迫力、臨場感たっぷりの戦場の世界。CGをあまり使わず(そこそこ使ってます)、実写で描く事で生まれる空気感、空間感覚のリアリティ。
んでも、それもこれ見よがしに全編こってりとノーランの俺様っぷりを見せられ続けると、早々にゲンナリしてきます。
物語性を排除して、ひたすら状況を描いてゆく作り自体は特に問題がある訳ではありません。時系列が入り乱れる作り自体にも問題はないでしょう。問題は、そうしてみせるだけのノーランの実力が本当のところ、どうなのよ?ってトコかな。
とにかく臨場感、迫力、そればっかりで作られたソレには意外なほどに顔が見えてきません。顔つーか表情かな。役者の顔のアップ自体は散りばめられてます。映画にとって重要な要素ですからね。でも、そこに当たり前のおざなりな表情しか見えない、つーか肝心なシーン、肝心なカットで顔逸らしてないか?みたいな。ほんの脇役の眼光まで捉えまくるスピルバーグとは決定的に違うところ(スピルバーグ映画はだから物語的にどうでもいいオッサンの表情がいつまでも頭にこびりついたりしますが)。
それから、3つの時間軸の違うエピソードがクライマックスの一点に集中してゆく、ハズが、その一点が微妙にブレてない?そのせいで散漫になってない?って感じ。民間の船舶が大挙して現れるシーンでの盛り上がりはあの程度のいいのかしら?みたいな。『ラッキーレディ』での民間船舶勢揃いシーンを見習いましょう、って。
全編見せ場の連続っぷりはアトラクションのようで、だけどさすがに1時間40分も続くアトラクション乗りたいとは思いませんわね。スペースマウンテンとカリブの海賊とホーンテッドマンションとセンター・オブ・ジ・アースとタワー・オブ・テラーとレイジングスピリッツを休み無しでまとめて1つで乗りたいか?ってハナシ。思考感覚麻痺させて「凄い体験した」って思わせたいのかなぁ?って感じ。だったら次は上映劇場に炎や熱風が出る装置でも仕込んだらいいわ。ノーランってひたすら即物的な監督よね。
元々ノーランが合わない私(マイケル・ベイと同次元の人と思ってます)、このノーランの俺様節をコッテリと見せられる映画に、結局は今回もまた毎回書くフレーズを書かねばなりますまい。
「長いよ、ノーラン。」