1.団地に住む平凡な夫婦と、そこに起る何気ない日常を、普通に、だが、不気味に綴った作品。
武満徹の音楽がマッチしているかどうかは微妙なところだが、団地の何の変哲もない風景すら不気味に見えてしまうその音楽の影響力は凄いものがある。
左幸子が珍しく魅力的に見えた。
普通の主婦だが、どこかに団地妻的なエロスを感じた。
その夫を演じた岡田英次は、役所勤めというお堅いサラリーマンを見事に演じていた。
平凡でそれなりに幸せだが、どこか充ち足りない。
そんな団地住まいの中産階級な夫婦を、淡々とモノクロ映像に映しただけの作品なのだが、サスペンス的な風味も相まって、最後まで予想以上に楽しめた。
羽仁進はドキュメンタリー出身の監督だと聞くが、その作風には多分にその影響が見て取れる。
団地には数多くの世帯があり、その中の一家族の生活を、覗き見するような感覚にさえなった。
ラストは不思議な余韻が残った。
何を言わんとしているのか、いまいち理解に苦しむが、それがまた不気味で、いい味を出していたように思う。
左幸子の演技の巧さも再確認できる作品である。