1.《ネタバレ》 助演とはいえ、ここでも自らの実人生をだぶらせ、老いと衰えを体現してみせるシルヴェスター・スタローンが素晴らしい。
第一作を意識した構図とステディカムによる滑らかなカメラワークで美術館の階段をゆっくりと登っていく彼の柔らかな笑顔に泣かされる。
あえてクロースアップで強調された、顔に刻まれた皺が人間的魅力となっている。
ワンマン映画気味であったシリーズから一歩脇に引いた形となったことでロッキーというキャラクターもより深みを増し、
チームの映画をより強く印象付けるものとなっただろう。
冒頭でマイケル・B・ジョーダンの孤独な背中を追うロングテイクは、ジムの階段やロードワーク、タイトルマッチの入場シーンや美術館の階段で
彼と並んで歩むスタローンやバイク軍団を伴うそれぞれのワンカットに昇華する。
音楽的な要素をより強調したのも新味といった感じで、トレーニングシーンも打撃音をリズミカルに響かせ、BGMを盛大に被せてくるが、
結局は最終ラウンドでのビル・コンティの旋律がすべてをかっさらってしまう。
マイケル・B・ジョーダンとアンソニー・ベリューによるファイトシーンの切れの良い動きとカメラワークも相乗してアクションを盛り上げる。
そのロングテイクが素晴らしいのは、単にワンカットであることではなくカメラが選手の至近距離に肉薄し、動きの間に入り込みながら
カメラをほとんどぶれさせないテクニックにあるが、これもまた第一作のステディカムへのオマージュであり、かつそこからの飛躍でもある。