179.これはまあ、何と言ったらいいか、言語に絶する、あるいは言語道断(?)とでも言ったらいいのか こんな完璧な映画作っちゃいけませんよ。 レオ・マッケリーの「明日は来らず」にインスパイアーされて作ったということで、 あちらも、見捨てられた老夫婦が自分たちで生る道を模索するさまが悲哀とともにが描かれて素晴らしい作品だが、 これはさらにその域を越えて、諦念とそれを許容する寛容が、世界的なスケールで描かれ、ほとんど普遍の域に達している。 不朽の名作とはこういう映画のことを言うんでしょう。映画史上、永遠に残る傑作です。 【kinks】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-10-04 23:32:00) (良:1票) |
178.《ネタバレ》 見る人によって受取り方が違って来る映画らしいが、個人的感覚でいえば、劇中の長男・長女の対応はごく自然に見える。また次男の元妻は、いわば嫁の立場として極めて誠実に対応していたようでご苦労様だった。 この長男をはじめとした子どもらもいずれは両親と同じ立場になり、最後には老夫婦だけが家に取り残されることになるのかも知れない。現代だけでなく、この映画の時代や前近代においても跡継ぎ以外は全員家を出るのが当然だったわけで(劇中の三男もそういう感じ)、昔と今が違うとすれば跡継ぎさえも残らないことだが、それは人情の問題というより家という観念の希薄化である。老いた親を見守るためなら誰か一人が地元に残るだけでも十分であり、劇中の末娘なら適任だったかも知れない。 老夫婦としても、この境遇をまあ幸せだと納得しようとしていたようだが、ほとんどの人間にとってもこのあたりが納得のしどころではないか。次男は別として、生きている子は既にそれぞれの社会的地位や家庭を築いており、自分らの生きた証はちゃんとこの世に残っていく。決して慰めなどではなく、本当に幸せだったではないですか、と自分としてはこの老夫婦に言ってやりたい気がする。 なお次男の元妻に関しては、いくら昔の人とはいえ作り笑いが過ぎるのではと思いながら見ていたが、最後になって本音を言ってもらえたのはよかった。 ところで末娘は可愛らしく見えるので女学生かと思ったら教員とのことで、道で会った児童は頭を下げて挨拶し、教室での様子を見てもきりっとした立派な先生である。しかし社会的にはそういう立場でありながら、兄から見れば子ども扱いなのか大事な家族会議にも入れてもらえず、また姉からは小間使いのように使われていた。古い家族観が崩壊すればこういう理不尽な扱いもなくなるのかも知れない。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 8点(2015-08-03 23:58:11) |
177.《ネタバレ》 あのラストは、京子と紀子の会話から含めて印象的なのです。京子は、とみの死後に見せたしげたちの言動に嫌気をさします。実母が亡くなった直後というのに、あれやこれやと無遠慮に形見を欲しがったり、さっさと帰路についたりして、なんと薄情なのだと、なんと無頓着なのだと嘆くのです。しかし、紀子は、そのしげたちの言動に対しフォローを入れます。「大人って、だんだん親から離れていくものじゃないかしら」。大切なはずの人を亡くしてもすぐに割り切るしげたちの言動を、紀子は肯定して、京子をなだめるのです。この、紀子が年下の京子をなだめる姿は、一見、大人の強かさが現れているようにも映ります。しかし、親の死の無頓着を否定しなかった紀子自身も、未だ亡き夫の死を引きずって生きているわけです。夫の死に無頓着になりつつある自分に、罪悪感を抱いていました。京子にはあんなことを言ったのに、自分の場合は「大人って、だんだん夫の死から離れていくものじゃないかしら」と割り切れないずるい自分。親の死の無頓着を肯定しても、夫の死の無頓着は否定したい紀子。そんな彼女に、亡き夫の「親」である周吉が、その無頓着を肯定するのです。新しい男(ひと)を見つけてもええよ、と。そして、亡き妻の形見を、血縁でもない紀子に無頓着に授けます。そうして、夫の死の呪縛から開放された紀子の涙。これが、感謝と安堵に満ち溢れていて、感動的なのです。 【Jar_harmony】さん [DVD(邦画)] 9点(2015-05-11 01:02:19) (良:3票) |
176.もっともっと期待してたけど、21世紀の今これが公開したと考えてみるとまぁこんな感じかな。 |
175.親の死、葬式という儀式の中での人間模様を極められた映像、語りで描写されている。 この表現力において、並ぶもの無し。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-08-04 23:06:29) |
174.《ネタバレ》 昔の映画だし、やっぱり地味な印象を受けるのは致し方ない。が、戦後間もない当時の日本を描いた内容は、現在の日本にも大いに通じるところがありある意味何か普遍的なものを感じます。海外での評価の高さも伺えるとても素晴らしい作品でゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-06-28 08:42:19) |
173.《ネタバレ》 世界でも有名と評判の小津監督の代表作。「どうせ、甘ったるくて古臭い映画だろ」「有名だから信奉されてるだけさ」。●違った。人間を優しく冷たく、そのまま表現している映画と思う。もちろん映画だから嘘だらけだし、わざとらしいけど。●孫より子供が可愛いというのが、正直過ぎて笑えた。実際、孫なんてさ、幼児なんてさ、可愛いもんじゃない。馬鹿でわがままだしさ。●大人になるとは、妥協して無視すること。家族でも、親子や兄弟を無視するのが現実。絆は虚構。●悲しくて、冷たくて、優しくて、現実っぽい映画。古くならない映画だと思う。■1950年代の「名作」は厳選されてるから、現代の映画より高品質だと思う。「古いけど面白い」と書いてる馬鹿がいるが、「古いから面白い」ことに気付けと思うな。★10点 【激辛カレーライス】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-06-15 05:57:00) |
172.《ネタバレ》 故郷の尾道から離れ、大阪や東京で生活する兄弟たち。 そこでの生活は彼らにとっては切ろうにも切れないものであり、 環境に染まっていくにつれて、次第に家族同士の絆や故郷への思いも薄れていく。 現代社会でも十分にあることですね。ただ、寂しさを感じます。 その中でも、登場人物達と家族同士の縁がそれほど深くない紀子の気遣いは 本当に輝かしいものです。家族の絆って何だろうなと考えさせられます。 この映画は故郷を離れ生活している、若い方々に観て欲しい映画ですね。 いや、日本人なら是非とも観て欲しい映画作品の一つです。 【功聖良】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-04-03 19:53:39) |
171.《ネタバレ》 誰が見ても文句無い大傑作 外国でも評価が高いのがわかる 当時の日本の住宅事情や温泉旅館、アパートや病院、美容院、居酒屋、お葬式、古い町並みを横切る蒸気機関車、すべてが興味深い 日本人ですらノスタルジックなのだから外国でも評価が高いのがわかる わかりやすいローアングル引き気味のカメラ 人物を中心に据えたバストショットは抜群の安定感 この時代から言われ始めた核家族の問題をいち早く捉えた映画だ 長男長女はいたってさばさば 今となっては普通かもしれないな wikiを見ると「家族という共同体が幻想でしかない悲し過ぎる現実」と書いてあるが、そこまで重く無く、いたって普通の家族の様に思える、今となってはむしろ幸せな夫婦の老後と私には思えたのは私がシニカルなせいだろうか 家族と義理の家族の機微の違いなども活写しているのは『歩いても 歩いても』等よりもわかりやすい 杉村春子の演技も判りやすく、相対する原節子の芝居においては今はこのタイプの女優はいないと言い切れるぐらい時代がかっている 今となってはむしろ斬新だった 笠智衆はこのときすでに爺さんで始終にこやか 私はこの笠智衆しか知らない この人の抜群の笑顔でこの映画が優しい印象になった 笠智衆は本当にうまくて、妻が長く無い事を知ったときの顔は、絶望とはこういう顔なのかと思った エンディングでは、最後まで残って世話を焼いてくれた次男の嫁も帰ってしまい、一人になったときに見せた横顔が何気ないが妙に哀しくて何故か涙が出た 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2014-03-15 13:19:04) (良:1票) |
★170.《ネタバレ》 再見。 個人的に「大人の見る繪本 生まれてはみたけれど」や「淑女は何を忘れたか」「その夜の妻」と傑作の多い小津だが、戦後の小津は「浮草」以外あまり好きになれないでいる。
とはいっても、見返してみると以前とは違う発見があるものだ。
船の汽笛や列車の走行音が響く港町。意気揚々と何かの荷造りをする老夫婦、それに笑顔で応え嬉しそうに出かけていく娘。彼女は通学路を行く子供たちに混ざるように道の向うへ。いくつになっても誰かの「子供」ということに変わりはない…と本作の展開を予告する。
晴れ渡った空に煙突から吹き上がる煙が吸い込まれるように消えていき、その空の下に洗濯物が風でたなびき、子供たちは野球道具を持って遊びに行き、駅では女同士が語り合う。穏やかな音楽とともに。
これは…きっと楽しい映画なんだろうな~と最初見た時は期待に胸を膨らませたものだ。 ところが、物語は想像以上に重くのしかかる。オマケに笠智衆のゆったりとした喋りで恐ろしい睡魔に襲われたものだ。
落ち着き払う静かな老夫婦、それを迎え入れる「子供」たちは忙しそうに家中を駆ける。成長し続ける子供たちの世話をしなければならない余裕の無さ、がんじがらめの日常。解放されすべてを終えつつある老人とは違って。
聖母のようにいつもニコニコ顔で振る舞う原節子も、俺には何処が影があり不気味な幽霊のように見えた。たまにボケをかましてクスッとさせてくれたけど(電話のやり取りとか)。 同じ小津でも「晩春」の嫉妬の表情、「麦秋」のユーモアと色気、「成瀬巳喜男の「驟雨」といった彼女の方が人間味があって可愛いし好きだ。
本音を押し殺して家族を迎え入れる親たち、挨拶を強制される子供たちは嫌がっているのかすぐに別の場所へ走り去ってしまう。 ずっと一緒で馴染みの関係ならともかく、遠く離れて暮らす存在だしなあ。子供たちにとっては、自分たちの場所を奪う得体の知れない他人にしか思えないのだろう。 自分の机を勝手に廊下に移されるんだから。子供は正直だ。だって本当に英語の勉強してたし。
子供たちの本音がさらけ出されるとともに始まる「たらい回し」。「戸田家の兄妹」のそれよりも遥かに悪化している。 追い出される形で家を出て旅を続け、酒を飲み交わし愚痴を聞いてもらい、旅先の旅館でさえ音が五月蠅くて満足に寝られない。
歩き続けた先でたどり着く海原。そこに夫婦水入らずで団扇をあおぎながら、久々に静かな刻を過ごす。
立ち上がった瞬間の「よろめき」が予告するもの、優しさに満足して「旅立つ」死、幼い子供に向けられていた愛情が、溢れ出る涙によってようやく親にも向けられる。後悔しても、行ってしまった者は戻って来ない。
親を愛するが故に不満を言う香川京子。子供に勉強を教え面倒を見る教師だからこそ、余計に思いやる気持ちが強いのだろう。 それに対し、すべてを許しなだめる原節子。未亡人として夫の死を乗り越え耐えて来た強さ。黒のスカート、灰色(紺色?)のスカートの対比。
老人は、そんな尽くしてくれる者に「幸せになれ」と言って送り出そうとする。死を乗り越えた者どうしだからこそ、自分を大事にして欲しいという想い。揺れ動き溢れ出そうになる本音、それを見て立ち上がり、餞別として渡す「形見」。それは新しい人生を刻んで欲しいという願いも込められているのかも知れない。
冒頭と違い、轟音をあげながら突っ走る列車の疾走。それに乗り込み、時計を見つめるその瞳。「再出発するぞ」と決意をかためた意志の強さを感じる。 そこには、さっきまで「本音」を隠すように顔を覆って嗚咽していた者の姿はない。「父ありき」の列車の場面といい、こういう小津の演出はほんとに憎いくらい素晴らしい。
老人は、団扇をあおぎながら静かに窓の外を見つめ続ける。汽笛を吹かす船の行く末さえ、暖かく見守るように。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-01-07 17:11:39) (良:2票) |
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169.《ネタバレ》 壮絶な映画でした。わざわざ田舎から出てきたのに迷惑がられる両親には共感せざるを得ません。家族ではなくても、友人関係や社会との関わりで二人と同じ気持を味わうことはあると思います。その二人に親切に振る舞い続ける唯一の存在である紀子さんには、強い思い入れがどうしても出来てしまいます。その中でのクライマックスには激しく心を揺さぶられました。隠してきた本心を告白する紀子と、それを受け入れた上で彼女の未来を心配し激励する父・周平。やられました。僕のような人生経験の少ない若輩者でもこうなのですから、今後人生経験を積んでいく中で、この映画を見るたびに心に響くところが変わっていくのではないかと思います。これぞ映画。 【カニばさみ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-09-05 01:26:39) (良:1票) |
168.《ネタバレ》 小津映画ってのは“家族愛”を謳い上げたものでは決して無いのですよね。高い評価を耳にして家族の繋がりって素晴らしい的な思いをしようとこの作品に臨んだら強烈な目にあいますな。半世紀以上も前の作品にしてこの普遍性、リアリティ。「それを言っちゃあおしまいよ」な生々しい家族の姿を小津監督は全く遠慮なくさらけてくるわけで、誰でも作中の誰かの気持ちが手に取るようにわかるのでは。杉村春子演じる茂子、この長女が特筆ものの存在で、彼女のあまりのドライさに末娘が憤慨。そこへ義姉の原節子がおっとりと諭すのです。「でもね、大人になると仕方のないことなのよ」。若い純粋な憤りも尊いけれど、原節子の理屈にも、ひいては茂子たちの態度にも一理あり。特に長女にしてみれば、酒癖の悪い父親にうんざりしてきたりと、若い妹の知らない苦労もあったかもしれず、ほんと家族など一言で断じることは難しいものでしょう。熱海の海岸で、並んで背を丸くして座っている老夫婦の姿が美しく、泣けてくるほどでした。 【tottoko】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2013-08-04 01:03:07) |
167.まず驚くべきはこの時の笠智衆さんは49歳だったという事。お爺ちゃん歴ながっ!!いま観ても遜色無い、いや逆に更に核家族化し親戚づきあいの減った現代の方がしっくり来るお話かもしれませんね。この作品は若いうちに観てもピンとこないだろうが、親が死にうる歳であったり、子供が手を離れてきたあたりの方には感慨深いと思う。映画の中で冷たく見える実子だけれど、多少デフォルメされてても実際あんな感じなんだろうな。事実、私も4人兄弟の長女でありますが、実親には細かくてキツイ性格の娘だと言われ、義親には正直で優しい嫁だと言われています。そんなものでしょう。孝行したい時に親は無し、、、か。 【movie海馬】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-04-01 21:54:35) |
166.はるばる田舎から出てきたのに、実の子供に敬遠される夫婦気の毒。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 6点(2013-03-22 13:39:40) |
165.この映画がもてはやされるのに、どこか引っ掛かってました。終盤の「母の死」という事件が、映画の中であまりに大きな転機になっていて、これは通俗性の表れだろう、と思ってました。だから世界中で受け入れられたんだろうと。しかし本当にこの作品が小津作品の真骨頂みたいな扱いで、良いのか、と。……しかし、自分にも子供が出来て、子供の事を「何か頼りないなあ」とか「でもまあ頑張ってるよなあ」とか言う立場になってから、改めて観た時、本作はどうにもタマラン映画なのでした。背中を丸めた年老いた親、その親を邪険にする子供たち。いや別に邪険にしている訳ではなくて、いわば空気のようなアタリマエの存在だからこそ、なのかも知れないけれど、血の繋がらない人たち(原節子とか中村伸郎とか。それこそ東野英治郎とか)の方が余程フレンドリーな描かれ方をすることで、子供たちのよそよそしさが目立つことに。しかし、親としては、子供たちが順調に育ってくれて(当時は「戦死」で息子に先立たれるなどという理不尽もあった訳で)、家庭を持ち「自分たちの世界」を持ってくれれば、それで良いのだな、と。孫より子供の方が可愛い、という、無限の愛情、それが一方的なものとなってしまうのは、やはり必然なのか。医者になった息子に最期を看取ってもらえる、というのが、幸せであり、また幸せの限界でもあるのか。妻の死を目前に静かな表情で「そうか、いけんのか」「そうか、おしまいかのう」とつぶやく笠智衆。感情を露わにしてくれた方が観てるこちらにも救いがあるのに、「どうしてそういう言い方するのよ」と悲しくて仕方がない。まあ、脚本に書いてたとか監督に指示されたとかいうのがその理由なんでしょうが(そう思わなきゃ、やってられませんわ。笑)。この静かな表情からは、「自分たちは役割を終えた」という諦念がにじみ出て、映画を通じて登場する背中を丸めた座り姿とともに、忘れられないものとなりました。しかし彼にはまだ、最後の「役割」が残っている、それは、自分の子供たちだけではなく、すべての子供たちにかける言葉。未来があり、自由があり、しかしそれを行使し切れずにいる、原節子への言葉。やがては子供たちの世代もいずれは孫を持つ世代となり、すべてが繰り返されていく訳で、永遠のテーマですなあ。そしてこれも変わらぬ、尾道・浄土寺。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2013-02-22 04:12:38) (良:1票) |
164.《ネタバレ》 お父さんが先の方が良かったって・・・、それは言うたらあかんやろ。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 6点(2013-01-28 01:02:05) (良:1票) |
163.とても静かで地味な映画なので全然好みではないけれど、なんだか不思議と印象に残っている映画。 老夫婦が上京した際の子供達の扱いに、こちらまで胸が痛んでくる。 親子の関係は誰にとっても一番基本的なものだから、心にじんわりと沁みてくるようで…。 老夫婦の姿は哀愁があって切ない。 この映画は時を経ても色あせることがなさそう。 学生時代に見れば退屈な作品だろうが、年齢を重ねて見直すごとに味わいが増していきそうな気がする。 【飛鳥】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2013-01-11 00:14:53) |
162.《ネタバレ》 ラスト紀子(原節子)は周吉(笠智衆)に対して告白する。東京へ出てきた老夫婦を親身になって世話した事や葬式での心遣いは単に夫を亡くした寂しさからその埋め合わせとして行ったに過ぎない、結局のところ老夫婦を邪険に扱った息子娘と変わらない存在であって偽善を振りまいている分、自分は「ずるい」のだと。これは妻を失った周吉にとって見たらある意味残酷な宣告と思う。にも関わらず周吉はそんな紀子に(邦画史上最高級の)笑顔でこう言うのだ。「あんたはやっぱり、ええ人じゃよ」と。家族=結婚し子供が出来一人前の大人に育てる為の責任+背負う物が増えてくることで、親よりも妻や子供達に比重が行ってしまう。でもそれは世代を超えた家族としての有るべき姿。周吉だって自分の親を邪険に扱いながら家族を守ってきたのだから、寂しさもあるが子供達が立派になってくれればそれでいいのだ。思いは複雑だが仕方がないと東京に出てきた老夫婦は思ったろう。そしてたとえ偽善であったとしてもそんな気持ちを恥じていて申し訳ないと素直に告白してくれた義娘に対して合わせて最大限の感謝を持っているに違いない。家族のあり方をここまで完璧に描いたこの映画、あまりにも完璧過ぎるので小津映画としては「晩春」「麦秋」等の方が好みなんだけど年を経て見るたびに胸にくる感動が強くなっていくのがわかる。笠智衆の笑顔。原節子の憂い。東山千栄子の背中。杉村春子の所作。そして何より尾道の風景。あと笠智衆の背中とため息を撮らえたラストショットは世界映画史史上屈指の名場面と思う。長年見てなかった人、もう一度見てみ! 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 10点(2012-12-31 10:46:10) (良:2票) |
161.《ネタバレ》 東京での再会と尾道での死別。淡々としすぎて少々ヌケた感じはあるけど日本家族の原風景、子の自立と共に疎遠になっていく微妙な親子関係を綴った小津安二郎監督の代表作。和室の床からのぞく「小津的」な独特のカメラアングルが際立っています。 【獅子-平常心】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-08-20 00:50:04) |
160.《ネタバレ》 はじめての小津作品鑑賞です。 若い頃じゃなく(若い頃だと理解出来ない部分があると思う)、ある程度の年齢になった今観たのが幸い、素晴らし作品に出会えたと思いました。 この映画は酸いも甘いも知った、人の親なり家庭を持っている人なら身につまされる部分が多かれ少なかれあるのでは・・・? 物語は淡々と進みますが、家族や親子の微妙な関係が良く描かれている秀作だと思います。 驚いたのは劇中のセリフから、親を殺す子供・・・みたいな事件が戦後間もない頃からあったんだなぁ~と。 世相や親子関係って今も昔も、そう変わらない普遍的なものなんですね。 まだひと作品のみの鑑賞ですが、小津ワールドにハマりそうな今日この頃です。 【ぐうたらパパ】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-06-26 14:27:14) |