23.《ネタバレ》 本作は、置屋「つたの屋」を舞台に、そこに居住・在籍する女性を丹念に描きながら、つたの屋が凋落する軌跡をたどる作品である。 本感想のために各々の登場人物についてまとめてみると、その人物設定や配置が非常に巧みで、相当練りこまれていることがわかる。 物語の中心に存在し、最も複雑な内面が描かれているのが、つたの屋の経営者であり、自身も芸者であるつた奴(山田五十鈴)だ。芸者の仕事に懸命だし、これからも続けていきたい。優柔不断で気が弱いところもあり、さらに在籍する芸者の上前を撥ねるこすっからいところもある。いいところも悪いところもじっくりと描かれるが、彼女の姿を追っているだけでは物語がなかなか進行しない。その役目を担うのがつた奴の娘・勝代(高峰秀子)だ。どちらかと言えば陰気で、気が強い。芸者を継ぐつもりはなく、独身で付き合っている男もいない。今はこれといった仕事はしないままつたの屋に住んでいるが、経営状態の良くないつたの屋を閉めてもらい、つた奴にも芸者をやめてもらって、共に別の仕事で生計を立てていきたいと考えている。気に入らない相手に対してはっきりものを言うことで我々観客をスカッとさせ、物語にうねりを加えながら進行させていく。 それに対して、同じくつた奴の娘で、幼い娘・不二子を連れて出戻っているのが米子(中北千枝子)だ。今も近所に住む別れた旦那に未練があり、姿を見ると追いかけてしまう。勝代と同じように芸者になる気はないが自立した生活を送る気もない。不二子がいるからか生来の性格からか、ちょっとした仕事ならしてもいいが、基本は家でのんびりしたい、不二子を芸者にしていいからその分面倒を見てもらいたいと考えている。余談だが、本作にはたくさんの芸者が登場するにもかかわらず、唯一色気をみせるのがこの米子だ。物語冒頭でほんの少しだけ着物がはだけているところに僕はドキッとした。子供こそいるが、生活感のない米子だからこそ、さりげないところで色気が出たのだろうか。 生活感のない米子に対して、生活感丸出しなのがつたの屋に所属する芸者の一人・染香(杉村春子)だ。つたの屋に在籍する芸者の一人で、お調子者で世渡り上手、ちゃっかりしたところもある。僕にとっては「こういう人いるよね」という、ちょっと苦手な存在だ。 本作で華の役割を担うアイドル的な存在が、同じくつたの屋に所属する芸者・なな子(岡田茉莉子)だ。中盤で披露する下着姿は、本作唯一のサービスシーンだ。 そんな彼女たちを見守る役割を果たしているのが2人の女性だ。まずは、序盤で女中としてつたの屋にやってくる梨花(田中絹代)。腰が低くて気が利く働き者で、つたの屋を内側で支える存在となる。向かいの店に女中として誘われるくらい近所の評判も良く、つた奴や勝代にも頼りにされる。彼女の視点が我々観客の視点と最も近く、狂言回し的な立場でもある。 あと一人は「水野」の女将・お浜(栗島すみ子)だ。置屋組合の顔役のようで、あれこれとつた奴の世話を焼く。終盤でつた奴からの申し入れを聞き、つたの屋を買い取る。戦前のスター女優で、本作で「特別出演」した栗島自身の芸歴と重なってか、本作を上の立場からしっかり引き締める風格が感じられる。 豪華なキャストで描かれる本作で最も感心したのは、つたの屋に住む母娘3人が家族のしがらみにとらわれていることが感じられるところだ。家族経営の商売は有利なことも多いが、家族の存在そのものが桎梏となることもあるのだ。 では、本作が楽しんで観られたかといえば、残念ながら否である。なぜか。退屈だったからだ。僕にとって、本作は冗長過ぎた。シンプルなストーリーの中に、一見同じ立場のようで実は異なる意識や目標を持つ登場人物の心の機微を描き出す。それが本作の魅力なのだが、その描写ばかりに力を入れると、フィルムとしてのテンポの良さは失われる。 本作の原作は小説である。音声や映像のない小説ならば、本作のスタイルはそのまま作品の魅力につながる。だが、せっかく映像になるのだから、映像ならではの魅力がほしいと僕は思うのだ。目を惹いたのは、前述した米子となな子のカットくらいか。あとは終盤でお浜が梨花に、自分のもとで芸者になるよう勧めながら――梨花はその誘いを断る――買い取ったつたの屋を旅館にするつもりであり、いずれつた奴たちに出て行ってもらうことを告げるシーンにオーバーラップするように三味線の練習を熱心に続けるつた奴と染香、それを(本作で初めて)虚しい視線で見つめる梨花が長く映し出されるシーンの物悲しさも印象的だが、そこに至るまでが長すぎた。もう少し内容を圧縮すれば、テンポが良くなって見やすい作品になったかもしれない(本作はそういう作品ではないと言われればそれまでだが)。 【はあ】さん [DVD(邦画)] 6点(2024-04-08 17:40:51) |
22.《ネタバレ》 さぞかし原作は面白いのだろうと思わせる映画でした。 江戸と東京の両方を味わえます。 人権という言葉が急に出現し、伝統の世界と言えどここは現代なんだなと思い知らされる。 出演者はほぼ女性ばかり、そしてその女性たちがなんとか仕事をつないでいく姿が映し出されるのだが、男を間に立てておかないと進みにくい様子も出てくる。現代においてもなお男性優位で社会が回っていることをあぶり出している。 【ほとはら】さん [DVD(邦画)] 6点(2022-03-20 14:50:24) |
21.《ネタバレ》 山田五十鈴、田中絹代、杉村春子、高峰秀子、日本が誇る大映画女優の奇跡の競演! ほとんど芸者置屋内での場面に限られ、いたって地味な内容であるが、全く飽きの来ない心地いい時間が過ぎてゆく。 田中絹代が何者か、何かあるのか?と思わせ何も起こらず、 山田五十鈴は何があっても怒らない温厚な人柄、でも実は少し芸者のピンハネをしていたり 杉村春子は達者な二枚舌、 高峰秀子は、器量は悪くないのに、堅物で愛想がない、 それぞれキャラがたっていて面白かった。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 7点(2020-05-18 23:22:24) (良:1票) |
20.《ネタバレ》 女優陣が凄い演技合戦を広げる映画。淡々とした中で、寂れゆく世界を描いている。岡田まりこがいい味を出している。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-01-05 21:42:32) |
19.《ネタバレ》 まだ映画鑑賞歴の浅い私であっても、この映画が大変豪華であることは分かります。これだけの女優が共演しているにもかかわらず、役者同士で潰しあうこともなく、それぞれがとても自然な演技をしていて驚きます。これ絶対に今、活躍されてる俳優さんも見習うべきだと思います。控えめな田中絹代の正座やお辞儀など動作一つ一つがとても美しい。忘れかけられている日本の女性像がそこにはありました。この女優陣の中で異彩を放っていたのは、やはり杉村春子でした。人を食ったような演技は本当に見事。酔っ払って大立ち回りをし、しばらくしてひょっこりと帰ってきたシーンは何故か憎めなく、微笑ましかった。これだけのキャスト陣にもかかわらず、自然で流れるようなストーリーを作ってしまう成瀬監督は天才だと思います。ラスト、新しく開店予定の小料理屋で働くことを促された梨花の複雑な表情が脳裏から離れません。店を閉じることなど知る由もないつた奴は、歌いながら三味線を弾きます。その音がとても切なく聞こえました。最後、2カットほど外の景色が映されますが、木造の建物の奥にコンクリートのビルが見えるあたり、時代の流れ行くさまを感じてしまいました。 【スノーモンキー】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-31 01:19:55) |
★18.《ネタバレ》 川がその流れを止めないように、時代はどんどん流れ続ける。傾いた芸者置屋も華やかな花柳界も、女も男もいずれは流されてしまう。 だが、それでも流れない奴は流れない。そんな人々の日々を淡々と綴った映画だが、淡々と言っても女達が口舌の刃でジャジャンガジャンと踊り毒づきド突き合うようなドロッとした話なんですけどね。 何せ初っ端から必死に稽古をする少女が去った後、彼女たちは挨拶でも交わすように罵り合いを始めるのである。 本当に肉厚というか、豪華すぎて信じられないくらいの面子だ。 田中絹代は歳相応で抑え気味の演技が素晴らしいし(溝口健二作品の絹代も凄いけど無理のない演技と高感度はこの映画がダントツ)、 山田五十鈴と杉村春子も妙な美しさ感じられる。 それに栗島すみ子の存在感(若い時の彼女は是非とも「夜ごとの夢」「淑女は何を忘れたか」等を御覧下さい)! 若い高峰秀子と岡田茉莉子の対比も効いている。とにかくこの映画、女、女、女の映画である。 花柳界の春真っ盛りといった具合の光よう。通りを歩く女性達の足取りも何処か楽しげ。一方、借金踏み倒しで傾きかけた芸者置屋はから元気というか、何処か暗い影が差す。取立人を酒で酔わせて“逃げる”日々も限界が近い。 芸者の世界は30過ぎたらBBAというほど選手生命短し恋せよ乙女。「君と別れて」といい、この辺の描写の生々しさよ。 それをせせら笑うように自由な猫は家と外を出入りする。 「人間よりも猫の方が大事」・・・今の時代はちょっと洒落にならんセリフになってしまった。 そこに家政婦はミタじゃないけど女中のお春さんこと山中リカがやって来る。最初この女性が田中絹代とは気付かなかった。 彼女は女達の様々な噂を耳にするが、彼女の心がそれで流れる事はない。それを観客同様に傍観するのかと思えば、彼女の存在が芸者たちを引っ掻き回したりもする。かといって狂言回しという役割でもないし、不思議な存在だ。 子供も大人も怖いもんは怖い注射。それを「針が折れたらもっと大変よ」なんて黙らせてしまうお春さんは賢い。 もっとも、一番女達を振り回すのはタチの悪い男ばっかり何ですがね。男という濁流に流され翻弄される女たち。 満たされない女達は踊り、嘲笑い、哀しみ、怒り、憎しみをブチまけていく。 空も「稲妻」を鳴らして泣きじゃくる。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-08-26 16:59:53) |
17.田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、めまぐるしく入れ替わり立ち替わり出てくるスターに見入ってしまった。なるほどこれだけの女優を自在に操るということは成瀬巳喜男が他の追随を許さぬ技だったのかもしれない。また、女の貫録を栗島すみ子というサイレント時代の大女優にみた。 |
16.確かに芸者置屋なんてのは流れるわな。言うまでもなくキャストが豪華。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-10-24 18:53:54) |
15.男は宮口精二がゆすり屋で脇役を演じる以外ほとんど活躍しない。仲谷昇はまだ若く頼りなさそうだし、加東大介などはちょい顔をだしただけ、ほとんど全編が女優陣である。またその女優陣がすごい。主役をはるだけの女優さんが何人も一堂に会する。田中絹代の控えめでよくできた女中さん、芸者置屋つたの家の主人山田五十鈴、その娘ながら芸者を嫌いミシンの副業を始める高峰秀子、歯に衣着せぬ芸奴杉村春子、それぞれがそれぞれの役柄を見事なまでにこなしている。そして大御所栗島すみ子の存在感、これだけの映画は、時代が流れても映画史に永遠に残るだろう。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-09-17 22:05:16) |
14.田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子と、 錚々たるメンバーが勢ぞろいで、彼女たちを見ているだけでお腹一杯。 栗島すみ子もいい味を出している。 核となるストーリーはなく、移り変わる時代の流れに困惑しながらも、 花街の世界に生きる女たちの生き様を情感たっぷりに描いており、キャラ描写が秀逸。 当時の風景、街並の雰囲気もいいけど、これはやっぱりカラーで観たかったな。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-08-17 07:04:43) |
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13.《ネタバレ》 田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子に杉村先生と若手の岡田茉莉子。そして凄まじい存在感を放っていた栗島すみ子って何者だ?、と思ったら、サイレント時代の大女優か、なるほど。よくこれだけの女優を集められたものだ。豪華な共演の数々を見ているだけでも楽しいが、そこは成瀬映画、これだけで終わるはずはない。本作の舞台となるのは芸者置屋、そこの女主人つた奴を中心とした物語だが、芸者というやや特殊な世界にあって、普通の人(梨花)をつたと並ぶ主人公にした効果が最後の方で現れる。置屋を買い取ったお浜から「芸者屋はやめて小料理屋を始める」と告げられていた梨花が、まだ何も知る由もなく三味線の稽古に励むつた奴、染香を見る目。それはこの映画を観ている者の目そのものだったはずだ。引き抜きの誘いを断ったのも、自ら去っていくのも梨花らしい行動である。梨花は彼女たちを救う事はできないし、今のところかける言葉もないだろう、ただひとつ、あのお饅頭に込められた思いだけで自分は胸がいっぱいになるし、素晴らしい映画を観たと思えるのだった。8点献上。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-06-08 18:31:50) |
12.《ネタバレ》 ヨーロッパとはまったく違う没落の様式とでも申しましょうか。女性的なのよね。映画としても女優展覧会のおもむき。でもやっぱ杉村が光る。電話で三味線の手を習うとことか、「芸者稼業はいいねえ」と言って、ジャジャンガジャンと岡田茉莉子と踊って吐きそうになったりするとことか、いい。あそこでふっと泣いた感じを出したりしちゃいけないのよね。あくまで生理的な吐き気だから、かえって無惨なの。田中はじっとしている役で、山田んとこに伺いに来て返事がないので立ちかけて、なんてあたりがいいね。山田はこういうのやらせると間違いがないし。元の旦那と会えなかったとこや、あの十万は手切れ金のつもりだったのよ、と言われるとこなど。シッカリ女のちょっと弱いとこをうまく突いてくれる。栗島は貫禄だけで見せているようでいて、面倒見のいいような・後半あっさり見捨てていくようなとこを嫌味なくやってのけるのだから、やはり大したものなのだろう。と、女優展覧会でありながら、ぜんぜん「ケンランと」ではなく、じっと沈澱してくるような手応えが成瀬の味わい。そこに、ヴィスコンティなんかとはまた全然違った、しかし日本ならではの没落の歌が流れている。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-01-11 10:12:57) |
11.時代の流れとともに、廃れかけた芸者置屋の諸問題の数々を絡めた日常の出来事を淡々とテンポよく描いて大変好感の持てるいい映画でした。なにしろ出ている女優さんだけでも豪華すぎて!・・・。こういう作品をテレビで簡単に観れるだけでも有難い世の中になったものです。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-01-24 11:52:08) |
10.オープニングにドーン!と登場する、田中絹代・山田五十鈴・高峰秀子の文字。 これは圧巻! 三人並びで名前がデカデカと出た時の迫力よ! 文字だけでこんなに迫力を感じるとは、いやはや、凄い三人衆だ。 邦画をそれなりに観てきた人なら、間違いなくこれだけで痺れてしまうに違いない。 しかし、内容の方はどうも面白くない。 淡々と進みすぎる。 成瀬作品にしては、凡作じゃなかろうか。 でも、各人の女優の持ち味がうまく出ていた気がする。 さすがは成瀬監督だ。 互いに存在感を殺し合うことなく、それぞれの登場人物が力を発揮していたのが見事だ。 それにしても、杉村春子の奮闘ぶりには、敢闘賞を与えたいくらいである。 上の大物3人衆を向こうに回しても、ひけをとらないどころか、食っていたようにさえ感じた。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-11-30 20:13:58) |
9.《ネタバレ》 いや~何たる豪華な顔ぶれだ!山田五十鈴のおかみさん、その娘に高峰秀子って、何つう親子だ!他にも常に控えめな田中絹代に小津監督の作品の常連でもあり、相変わらずぶりな芸達者ぶりを披露している杉村春子にいかにも岡田茉莉子って雰囲気の岡田茉莉子、それは岡田茉莉子に限らず、山田五十鈴も高峰秀子も田中絹代も杉村春子も演技なのか?それとも本人そのものなのか?と思わせるほどの素晴らしさ、そんな素晴らしい演技を引き出す成瀬巳喜男監督の凄さ、芸者の世界に生きる女性達の時代に流されながらも逞しく生きる姿が描かれている。そんなこの映画の本当に凄い所は、芸者の話なのにお座敷のシーンを全く描かずに芸者の世界で生きることがいかに難しく、厳しいかを描いて見せている。本当に凄いことだと思います。川を流れる水の音のような静寂しきった乾いた空気、それこそこの監督の持ち味なのかもしれない。ラストにこれまた水の流れる川を映す。そして、そんな川にまるでこの映画のタイトルの「流れる」のように流れて見える船を映して終わる。終わり方もこれまた成瀬巳喜男監督は本当に余韻を残すことに成功している。やはり凄い映画だ。間違いなく傑作です。 【青観】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-25 18:30:26) |
8.《ネタバレ》 田中絹代さん演ずる梨花の視点から見たら、右を見ても左を見ても愚かな人間しか見当たらない。異常なのが梨花の方なのではないかと思ってしまうほど、登場人物たちの多くが人を馬鹿にし、見下し、陰で笑っている。梨花の力で彼女たちの感情が変化していくかと思いきや、変わらない。結局時代に流され、消えていくだけ。変わろうとしない意固地な人間たちの愚かさを、清き心を持ち、多くの人に親しまれる梨花を通して悲しく見つめる作品。ラスト、悲しげな瞳を背け、背中を向ける彼女のその最後の優しさに胸が締め付けられる。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-04-30 14:25:33) |
7.《ネタバレ》 前から観たいと思ってたのですが、近辺のビデオ屋には置いてないし、図書館のフィルムライブラリーにもなく、最近になってようやく近所のツが成瀬作品をどっと入れたおかげで眼にすることができました。日本映画の名作DVDって値段高すぎ! 洋画みたいに新作でも2,980円、キャンペーンだと2本で1,500円とかできないのかな? 原作読んだのは前世紀の終わりで、映画とはずいぶん違う印象だったと思います。とくにエンディングの処理の仕方、原作は梨花の視点だけど映画は異なるので… ただ、幸田文が興味を持っていて最後までこだわったのが「崩れ」だったことが映像を観ることでよくわかりました。豪華出演者たちを活かしきってますね。岡田茉莉子、なんと美しいのでしょうか。杉村春子(石井ふく子作品に結構出てます)と賀原夏子(~ケンちゃんのばあさん役)が後年、つまりずっと齢を重ねてからとまったくおなじイメージだったのにはびっくり。中北千枝子(初代ニッセイのおばちゃん=ニュースコープ枠のCF)を含めてTBSな香りが濃厚だったことに後になって気づきました。高峰秀子は「カルメン」経由して木下恵介につながるし。「ただいま11人」「東芝日曜劇場」に始まるTBSホームドラマの要素がすべてここにはあります。そして向田さん、久世さんが亡くなった今、それは「渡鬼」にしか残ってない、好きじゃないけど。なお、三味線のバチさばきを観るだけでも価値ある作品です。むかしの俳優さんは凄いわ。 〈追記〉さっき「拝啓、父上様」第3話のV観てて気づきました。倉本聰、これをやりたかったっつーか、TBSの仕事したかったのね。最初の「大都会」や「前略」やってて、不祥事で久世さんがTBS追い出されても声かからなかったから富良野に籠もったわけね。 【shintax】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-01-26 17:35:13) |
6.《ネタバレ》 おそらく日本映画史上もっとも女優陣が豪華な作品だと思われる。田中絹代・山田五十鈴・高峰秀子・岡田茉莉子・杉村春子、そして往年の名女優栗島すみ子。これ撮影現場どんなだったんだろとか思っちゃうね・・・。高峰秀子でさえ若手扱いだし。内容もこういうちょっとにやにや見れる映画って好きです。 【バカ王子】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-06-16 23:30:27) |
5.日本の映画史を語る上で欠かせない、この豪華絢爛な女優陣たちがひとつ屋根の下で暮らし、しかも画面の中でそれぞれの個性が巧く生かされるよう収まってる、その事だけでもまず凄いです。芸者の人たちって一体どんな会話を普段してるんだろうってずっと思ってたんですが、ハナっからみんな見事にお金!お金!お金!に関するみみっちい会話ばかり。いかにも成瀬監督作品らしいですW。まずキャスティングが決まってから、脚本が書かれたという典型的な成功例ですね、これは。大スター競演作にありがちな大見得を切るような芝居どころも特にないし、むしろストーリー自体は地味な印象。同じ花街の芸者ものなら成瀬のフィルモグラフィーでは黙殺されている「夜の流れ」のほうが派手。でもこちらのほうがしみじみした後味を残します。「流れる」のではなく皆が「流されている」中、高峰秀子と田中絹代(←女中役なので皆が彼女をアゴで使っているってのも凄い)の自立しようとする意志の強さが頼もしかったです。婀娜な中年増ぶりを魅せる山田五十鈴、場面盗み巧者第一人者杉村春子、サイレント時代の大女優栗島すみ子のしたたかな貫禄ぶり、「女優」っていうのはこういう方々のことを言うんだろうなあ、本当は・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-02-24 11:44:18) (良:1票) |
4.成瀬監督の映画を始めて観ました。第一印象は鎌倉のハイソな小津とは違う下町の小津といった雰囲気、整然と整った道は丸の内のビルではなく横丁の路地、カラッとした上品なセリフ回しでなくどこか湿り気を感じることばなのは芸者のせいでしょうか。小津調を感じながらも全然質感が違って感じるのが成瀬調なんでしょうか。芸者置屋における女模様、様々な思惑が入り乱れバラバラになるかと思いきやかろうじて体を成す女一家。ラストの山田五十鈴と杉村春子の大先生2人の三味線セッション、魅入ってしまいました。 【亜流派 十五郎】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-01-31 00:06:55) |