25.《ネタバレ》 冒頭、タイトルが「妹姉の園祇」と表記されるのを目にして、これが戦前の映画である事を実感。 溝口監督作というと「雨月物語」が印象深いのですが、あちらと異なり、本作は「現代の観点からすると、ずっと昔の話」「しかし、制作当時からすると、紛れもない今の話」という時代設定なのが、何だか不思議な感じでしたね。 実に八十年前の映画でありながら「主人公の芸妓が、男どもを翻弄する姿の痛快さ」「ラストシーンにて、芸妓の存在そのものを嘆く姿の哀れさ」は胸に迫るものがあり、そこを考えると、やはり凄い作品なのだと思います。 涙を「不景気なもの」と表現するユーモア感覚なんかも、非常に新鮮に感じられて、良かったです。 ただ、歴史に残る名作に対して、こんな事を告白するのは心苦しいのですが、正直ちょっとインパクトが弱いというか、全体的に「平坦」な、盛り上がりに欠ける映画のようにも思えてしまい、残念でしたね。 上述のラストに関しても、ドン底の姉妹がここからどうやって立ち直っていくのだろうかと期待したのに、容赦なく「終」の字が飛び出すものだから、呆気に取られる思い。 この映画の悲劇的な結末を「芸術的である」「素晴らしい」と絶賛する人の気持ちも、分かるような気はします。 それでも、やはり自分としては、ハッピーエンドの方が好きみたいですね。 本作に関しても、たとえ逆境のまま終わるにせよ、主人公姉妹が我が身を憐れんで泣いて幕を閉じるのではなく、もっと力強く前を向いて生きる姿を示して欲しかったな、と思わされました。 【ゆき】さん [DVD(邦画)] 5点(2016-08-03 11:35:47) |
24.《ネタバレ》 小津をして「俺に撮れない映画は溝口の「祇園の姉妹」と成瀬の「浮雲」だけだ」と言わせた、その作品を鑑賞した。なるほど、人を舐めたやつは舐められる。当たり前の理屈だ。芸妓を舐めた男どもに囲まれるうちに、段々と男を舐めはじめる山田五十鈴扮するおもちゃ。これも当然だ。しかし物語は、男を舐めるなとおもちゃを痛めつけたところで、おもちゃが芸妓なんて商売なければいいのだと嘆くところで終わる。巨匠溝口のこの作品の落とし前何処は如何なものか。ここでラストではいけないのではないか?これでは男を舐めた、男側が作った映画ということになる。それでは男の面子がたつまい。ここをきちんと料理した作品だったらなぁと思った。が、男を舐める山田五十鈴の演技は、恐ろしいほどの演技だった。ぞ~っとした。なるほど、小津さんにこの迫力は出せるだろうかとしみじみ鑑賞後、思った。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2016-07-27 00:57:30) (良:1票) |
★23.《ネタバレ》 溝口健二にしてはちょっと押しが弱いかなと思った。 ちょっと押しが弱い気がする。 他の作品に比べると(同時期なら「浪華悲歌」とか)キャラの印象を薄く感じる。 ただ、溝口健二の最盛期だった1920年代~1930年代(淀川長治いわく)の名に恥じない作品であるのは確か。 登場人物もそんな感じに抑圧されている印象が良かった。 人物のクローズアップが滅多に無いので、ロングショットの迫力と美しさはスクリーンで楽しみたいものだ。 特に本作は「唐人お吉」の梅村蓉子、山田五十鈴の若く美しい事だけでも楽しめるし、クローズアップされた山田五十鈴の笑みが良い。 若い二人の姉妹は芸妓と一見すると性を自由に謳歌するようなイメージがあるが、実情は幼い頃から芸妓として生きてきた抑圧された面を覗かせる。 普段は着物で“縛られ”、時折の洋服姿は解放された女性像を感じさせる。 この和服/洋服が最も共存し、女性が自由になろうと背伸びしていた戦前の日本。 貧しく辛い身の上、更には女性軽視(嫁が男を尻に敷いている家庭も結構あったけど)が当たり前の時代。女性は慎ましくも自由になろうと抗う強さと美しさを持っていた。 和服と洋服が共存するという映画は、日本じゃなきゃ撮れない独特の美意識を感じさせる。 そんな抑圧された女性ほど魅力的で怖い者は無い・・・! 本作は姉妹でそれぞれの男を取り合い決裂、男を振り回した女は仕返しを受けるし、男の方も手を出してタダでは済まない。 時代に押さえつけられた女の主張、男として何でも強く生きなきゃならない男の主張、どちらも意地の張り合い。 気持ちは解るがどっちもどっち、男も女も勝手だよと、そんな感じがよく出ている映画だねえ。本当溝口はこういうの描くのが上手い。 溝口独特の飽きそうで飽きさせない絶妙な“間”、 映像の切り替えが結構あるし、印象的な長屋のロングショット、美人二人に酌を受ける先生の満更でもない表情、酒に酔った先生が今で言う“逆ナン”的に誘拐されたり、終盤の車の窓越しの夜街のロケーション、直接的な描写を見せずとも伝わる袋叩きにされた娘の悲痛。 悲惨でもあるけど、「そうなってもしゃあないわ」と何処かユーモアすら感じてしまう。
仲違いしていた姉妹が結局仲直りする様子は微笑ましくもあり、「負けてたまるか」と叫ぶ妹の姿は痛々しくもあるし力強さも感じられる。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:07:11) |
22.《ネタバレ》 祇園の姉妹、とは言っても中心的なのは妹役の山田五十鈴。で、さっぱり色気がない(笑)。中性的。で、和装、洋装、下着姿、さまざまな姿で登場し、アレコレうまいこと言って男どもを手玉にとる。このあたりのやりとり、どこか落語調で、イヤミが無く、結構楽しい。しかしラスト近く、それまで中性的だった山田五十鈴が、カツラをかぶって芸妓姿となるシーンの色っぽさ。ここにドキリとした直後、手玉にとられた男たちの復讐が待ち受けているという、二重の衝撃。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-05-17 00:46:41) |
21.性格の異なる祇園の姉妹に関わる周りの人間たちの生活模様が面白いほどリアルに描かれています。山田五十鈴の'おもちゃ'最高!! 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-05-10 14:04:05) |
20.《ネタバレ》 まずは、テーマ曲のモダンさに度肝を抜かれた。続いて冒頭の横移動長回しにびっくり。なかなかすごいです。一方お話はというと、おもちゃに共感できません。男に対抗しようとして男と同じことをする。フェミニストと称する方たちが、「男女同権」を叫んで同じことを主張していました。しかしそれこそが、「世の中は男中心である」という前提に立っているのではないかと思われます。結局おもちゃは、「女には持てない、男ならではのもの」によって報復を受けるわけですが、それは男の猿真似をした報いではないかと感じました。 さて最後、一見すると芸者批判というか、こうした職業に対する問題提起をしているようですが、少なくとも本作では、そういうことでまとめていいものかどうか。梅吉が捨てられたのも、古沢本人は梅吉のためを思って離れていったのに、梅吉が未練たらしくしたという経緯があるだけに、素直に同情できません。それは芸妓ということに関係ない、男女間の問題を含んでいると思います。ですが、本作でそれが意識されたかどうかは、疑問が残ります。 ということで不満はありますが、溝口監督の演出テクニックは見ごたえがありました。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-04-16 21:40:28) |
19.この時代にこれだけの表現力で描写したのは凄い。さらに当時の風景、時代背景を残す歴史的資料としても貴重。安っぽいシナリオだと最後にもうちょっとドラマを入れて見るものにウソっぽい感動を与えて終わりとするのだろうが、この映画では、姉、妹のそれぞれの憤りで終わらせており、その救いようのなさがより物語にリアル感を与えている。姉、妹のどっちの立場が正しいのかと考えながら見続けるうちに、結局、男社会の身勝手さが一番の問題であることが、このラストからひしひしと伝わってくる。現代社会に置き換えても充分成り立つシナリオだと思う。安易にホストクラブやキャバクラを華やかな世界に見せるような現代社会こそ、このような映画を見て反省すべきだと思う。 【nobo7】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-02-05 13:41:37) |
18.祇園に生きる対照的な姉妹の姿を、解説によると内務省から「けしからん」と言われたほどのリアリズムで描く。「女を描かせたら右に出る者なし」とかいう溝口監督だけあって、女の悲哀と強さが見事に表現されている。1936年を再現ではなく、本物で感じられる点においても価値があるかと。何より10代の山田五十鈴を見ることができて嬉しい。この頃から既に上手い女優だったのね。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-01-27 18:00:27) |
17.2012.01/25 鑑賞。まず監督は別として助監督が森一生、脚本が依田義賢に驚く。そして山田五十鈴の若さ美しさ、進藤英太郎のスマートさにビックリ。あとは余り知らない昭和11年作品。 モノクロ映像の上手さ、でも室内暗すぎる、音声聞き取りにくい(この時代では仕方ないが・・) ・台詞のリアリティさには驚く・姉妹の生き様考え方の対比が素晴らしい(男は大半が姉派・・) ・男の色好み、身勝手さ、後ろめたさが会話、振る舞いで見事に表現・全く知らない祇園の世界の明と暗等等を笑いと人情のきびを通して魅せる。地味だが素晴らしい作品。これが75年前の作品とは驚き!!! 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-01-25 14:07:32) |
【ホットチョコレート】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2012-01-21 22:25:25) |
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15.30年代の映画ってあまり見る機会がないので興味はあったのですが・・・すみません。誰が何のために何をしようとしているのか、一部しか分かりませんでした。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2012-01-17 01:37:52) |
14.おもちゃは、男に負けんと封建社会に声高に物申しておりますが、鼻白むばかりでした。自らの意志でその職に就き、口先だけペラペラペラペラ、人の心を平気で裏切って踏みにじる、裏切られるのがボンクラだとばかりに居直る。これの何処が女の強さなのか。ラストで悔しさに喚き散らすおもちゃの傍らで悲しみに耐えている梅吉にこそ、女性の、人間としての真の強さを感じました。時代に関わらない、芸妓で有る無しに関わらない、男女関わらない、人の有りようを考えさせられる幕切れが象徴する姉妹の生き様を見せてもらいました。 |
13.《ネタバレ》 DVD特典で新藤兼人氏が監督溝口健二について語っていた。「祇園の芸妓を人間としてありのままを描いている。彼の作品の根底はこの映画で確立し、溝口流リアリズムとして高く評価された」と。 姉が生まれながらの昔風芸妓だったのに対し、妹は学校出のハイカラな芸妓、姉妹は性格も考え方も好対照だった。義理と人情を大切にするか、お金のためと割り切って上手に振る舞うかは、今日でも問題になるところだ。 妹は自分だけでなく姉のためと思っていろいろ画策したあげく、大けがをする羽目になってしまう。私の心の中には、自業自得だと攻められぬ悲しさが残った。 19歳の山田五十鈴は美しく、この頃から大器を予感させるものがあった。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-06-24 07:17:35) |
12.戦前の京都の街並みが見れて興味深い。レストランのシーンなんかも出てくるが、当時にしてみればかなりハイカラだったんだろうな。女学校出の現代娘(当時の)を演じた山田五十鈴が若く、それを見るだけでも値打ちがある。溝口作品はだらだら長く感じることもあるが、これはわりと見やすかった印象がある。 【きーとん】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-07-20 00:31:40) |
11.溝口は、他の日本の名監督たちに比べてユーモアが苦手、って印象があるが、でもこれなんか傑作コメディだと思うよ。だいたい映画の本なんかだと、ラストの山田五十鈴を重視して、社会派のリアリズム映画に分類してしまってるんだけど、どっちかっていうとラストを観なかったことにして、コメディと分類したほうがスッキリするんじゃないかな。それぐらい志賀廼家弁慶と新藤英太郎が傑作で、男どもの卑小さを描いて傑出しているだけでなく、そこに上方文化の伝統にのっとった「愚かという徳」をも感じさせるあたりが、実に見応えがある(旦那が義太夫うなりながら乳母車をあやしてるとことか)。このユーモアセンスが監督の作品歴でもっと活かされても良かったんじゃないか、と私なんかは思う。それと上方女のキッパリ感を出した山田五十鈴の凄味、ラストでやや縮こまってしまう印象はあるがこれも見応え十分。どういういきさつがあるんだか知らないけど、戦後に溝口と山田が一緒の仕事をしなかったのは、日本文化における重大な損失だったと思う。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-12-22 12:04:52) |
10.《ネタバレ》 姉妹モノの多くにあるように姉と妹は古風と革新に分けられ、溝口の多くの女性映画で描かれる封建的社会に生きる女の悲劇を妹の革新さでもって打破しようとする。溝口は女を描くのがうまいと言われるが、実は女を通して社会を描くのがうまいのだとどこかで書いたことがあるような気がするのだが、この映画は女を通して社会を露呈させたうえでそこからまた女をまざまざと見せつけるから凄い。女優・山田五十鈴の貢献度も大きいだろう。まるで漫才のように繰り出される京ことばでの返し言葉に合いの手が喜劇性を高め芸術と娯楽を同時に高度に達成させている。さらに体制に負けんとする強い女が間抜けな男たちにいとも簡単に負かされる悲劇性を強調させてもいる。圧巻は先に書いたようにここで女を見せつけるところ。悲劇が悲劇でなくなる。というより女が悲劇を突っぱねる。絶望というよりも悔しさに満ちた叫びを見せることで女の立場上の弱さと女の本来の強さを提示しているように思えた。映画はここで終わるがこの女の物語はここから始まるのだと思えてしょうがないのだ。そしてそう思わせるのは演出あってのこととは思うものの山田五十鈴という天才の貢献度は極めて大きいと思う。 【R&A】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-02-13 13:04:54) |
9.《ネタバレ》 何とも堪えられない映画ですね。この時代の情景が見事に切り落とされ、尚且つ時代を経てもさほど変わらないであろう人間の内面にグッと迫っているのですから。丹念に作り上げられた作り手の気迫がジワ~ッと迫ってきます。流れゆく夜景を駆使した車中のシーンひとつとっても、当時のハリウッド映画にも無い拘りや工夫が感じ取れます。しかし70年以上も昔の日本映画ですが、レストランで“横文字のメニューが分からない”と工藤がおもちゃに任せるシーンを観ると“今の自分も大差ないな”と苦笑してしまいました。 【よし坊】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-09-29 06:46:15) |
8.溝口の初期傑作として有名だが、個人的にはまあまあといったところであった。 初期作品の中では『残菊物語』がベスト。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-21 08:11:40) |
7.溝口健二の作品の中ではテンポが良い作品。進藤英太郎と山田五十鈴のやり取りにはゲラゲラ笑いました。対称的な二人の女性とその回りで京都の男達、これらの人間像が深く描写されているので、今観ても楽しいのだと思います。 【サーファローザ】さん [映画館(邦画)] 9点(2007-09-03 12:02:56) |
6.溝口作品はどの話もとても判り易いと改めて感じた。なんだろう時代はやっぱり古いのだが時代を感じさせないというか、逆に新しさを感じたりもする。カメラワークなどERのようである。そして流れるような自然な演技も凄い。役者とはこういうものか。本物の祇園の芸子のよう。そう、祇園の町の情景といいドキュメンタリーといっても言いぐらい。でも、こんなに凄い溝口作品の数々をどれだけの人が知り、そして見ているのだろうか。このサイトの役割は大きそうだ。 【カリプソ】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-05-02 00:41:59) |