1.《ネタバレ》 佐藤浩市は『愛を積む人』に続いての北海道・不器用男路線。
降旗康男と高倉健コンビ作のようなローカル・スタティック・ハートフル・ナルシズムに落ち着くにはまだ早かろうに。
めぼしいロケーションは佐藤の暮らす寂れた一軒家に釧路駅、そしてお馴染みの幣舞橋といったところでバリエーションに乏しい。
北海道ロケの割に画面は奥行きが浅く、縦の構図を意識したのは、振り返らずに駅舎へと去る本田翼とそれを
車から見送る佐藤のショットくらいだ。
料理の映画でもありながら、調理シーンは手許の接写と、佐藤の表情のアップをつなぐばかり。
彼本人が実演しているとわかるのは筋子をほぐすショットただ一つである。
ロケハンといい、調理シーンといい、かなりの省エネ映画だ。
これでは、料理はただ単に食の観光アピール、コマーシャルに過ぎない。
音楽なら演奏を、料理ならその調理を、俳優が実演してみせるその身体性こそ、美味しさを映画で伝える上で要となると思うが。