16.《ネタバレ》 宇宙探索という人類の英知を集めた冒険において、地球外生命体との邂逅は未だ果たせぬ悲願と言えよう。
地球上で、数多の「課題」に困窮し、混迷する人類にとって、まだ見ぬ「生命」を見つけ出すことは、盲信的な希望として、世界中の人々がうちに秘めているのかもしれない。
常識や概念を超越した“何か”によって、「80億の馬鹿」が巣食うこの星は救われるのではないか。
そんなあまりに不確かなことに対するロマンを拭い去れない人類の滑稽で、愚かな様が、このSF映画には満ち溢れている。
ジェイク・ギレンホール、レベッカ・ファーガソン、ライアン・レイノルズ、今をときめくハリウッドスターの雁首を揃え、まさに“SF超大作!”の風体で仁王立ちするようなイントロダクションの今作。
ところが、いざ蓋を開けてみたならば、そこには粗と綻びだらけのストーリー展開が序盤から待ち受けていた。
念願の地球外生命体を発見し、喜び勇んだのも束の間、予定調和のように「最悪」の展開を突き進んでいく“お馬鹿”クルーたちのお粗末ぶりに、終始突っ込みどころは満載である。
想定していた映画世界との乖離に対し、困惑し、失望しかけるまでにそれほど時間はかからない。けれど、「ああ、なんだ」と思い直すのにも時間はかからない。
この映画の、“SF超大作!”のような風体がそもそもミスリードだったのだ。豪華なスター俳優を揃えて、“真っ当なB級SFホラー”をこの映画は貫き通している。
冒頭の船外活動を描いた“疑似”ロングテイクから、ラストの“着陸シーン”に至るまで、まるで「ゼロ・グラビティ」の“パクり”のように見せて、完全に作為的なパロディであることは明らかだ。
観終わった瞬間、その悪戯な試みに思わずほくそ笑んでしまう。
日本人としては、きっちりと存在感を放つ真田広之の立ち位置も嬉しい。
彼単独のシーンではちゃんと日本語の台詞も多く用意されていて、彼がハリウッドにおける日本人俳優としての地位を確立し、一定のリスペクトを得られていることがよく分かる。
こういう豪華過ぎるB級映画はそもそも嫌いじゃないどころか、大好物である。やっぱりスクリーンで観るべきだったと今更ながら悔やまれる。
粗と綻びだらけのストーリー展開だったが、この「着地」を見せられては、「SF」としても、「ホラー」としても最終的に「良し!」断言するしかないじゃないか。