6.《ネタバレ》 まずはスガラムルディという地名にそそられるものがある。バスク語らしいが意味不明というのが謎めいて怪しい(「荒れたニレの木の多い場所」?)。ここは登場人物も言っていた通り本当に「魔女の村」として有名なようで、「魔女博物館」というものや、撮影に使われた「魔女の洞窟」というのもあって観光客も来るらしい。なお村からフランス国境までは直線で1.5km前後だが、国境の向こうも同じくフランス領バスクである。
映画としては、どうせ魔女屋敷のようなところでドタバタをやらかすだけの安いホラーだろうと思っていたら(そういう感じのところもあるが)、最終的にはエキストラを動員して巨大モンスターが暴れるファンタジー大作風になっていたのは意外だった。またコメディ映画としても笑わされるところがなくもなく、特に主人公がいつの間にか魔女の恋人にされたと思ったらいきなり痴話喧嘩に発展して惨事にまで至る急展開には笑った。子役も愛嬌があって可笑しい。
ストーリーの大枠としては、太古の昔からヨーロッパにいた女神(有名な「ヴィレンドルフのヴィーナス」風)を奉じる魔女集団が、外来のキリスト教がもたらした男優位の社会に宣戦する形になっている。今回は何とか収まったようだが完全に勝敗が決したわけでもなく、今後も男女の戦いは続いていくということらしい。
なおこの映画では人類を二分する戦いの中で性的少数者も男女どちらかに分属していたようだったが、将来的には既存の区別をこえた新勢力も参入して、さらに混戦状況になったりするのではないか、というのが公開10年後の時点で見た感想だった。
以下余談として、スガラムルディ周辺ではかつて本当に魔術信仰があったとのことだが、「魔女の村」とまで言われたのは1610年の魔女裁判で多くの村人が刑死した事件がきっかけのようで、劇中の魔女集団がキリスト教社会に強烈な恨みを持っていたのは自然な設定に思われる。現地の魔女博物館というのも魔女を面白おかしく見せるというよりは、事件の犠牲者を追悼する意図(及び観光資源としての意義)があるとのことだった。この博物館は古い病院の建物を使って2007年に開館した施設とのことで、魔女の洞窟へ向かう道の村はずれにある。2013年10月のストリートビューで見ると晴れた日の長閑な風景で(少し寂しい)、久しぶりに外国へ行ってみたいという気分にさせられた。