26.《ネタバレ》 同性愛に共感できないので、生理的に合わない。
特に大きな事件が起きるわけでもなく、静かに物語が進行する。
ゆったりとしたテンポに波長が合わず、会話も冗長に感じてしまう。
これは最も苦手とするタイプの映画で、確実に退屈で寝てしまうと思った。
ところが、伊藤が吉田に告白したあたりから持ち直した。
告白された吉田が嫌がりながらもキスに応じたのはありえない。
やりたくないならあの状況では絶対応じないはず。
砂浜で果沙音が吉田に身を委ねようとしたのもありえない。
そうした登場人物の行動に理解できないところもあったが、全体では共感できる部分もたくさんある。
高校生の日常が描き出されていて、いるいるこんなヤツ、あるあるこんな場面というのが随所に出てくる。
たっぷりと使った間、どうでもいい会話、低いテンションの口調、長回しのカメラもリアル感を増幅している。
浜崎あゆみの演技を初めて見たが、予想外にうまくてビックリ。
強姦されて心を閉ざした少女を好演していてハマリ役に思えた。
ヤられてるときでも人の体は温かかった。だから人の温もりは信じない――そう語る少女の心の傷が生々しい。
伊藤も同性愛ゆえに傷ついた心を持っていて、周囲の何気ない言葉にも傷つけられる。
家で愚痴をこぼす父の「おまえが男だったらわかってくれるのになぁ」という言葉が突き刺さる。
ラストの砂浜でのシーンは面白かった。
果沙音の服を着た伊藤に勘違いして告白する吉田がおかしくて切ない。
怒ったように二人に足で砂をかける果沙音の姿がいじらしい。
三人の傷ついた魂が寄り添い合ったような温もりを感じた。
同性愛もので面白いと思えた初めての映画かもしれない。