1.《ネタバレ》 まず率直な感想として、とてもつまらなかったことをお伝えする。
去年のクリスマスも例年通り、各スタジオが威信をかけた超大作が相次いで公開され、華々しい成績を残した。
「アクアマン」「スパイダーマン」「バンブルビー」「メリー・ポピンズ」などそうそうたる顔ぶれである。
しかし、ただ一つ、このレースを圧倒的にヤバ過ぎる成績で負け抜けた作品があった。
それがPJがプロデュースする本作「移動都市 モータル・エンジン」だ。
赤字は優に100億円越え。同年に同じくコケた「ロビン・フッド」「くるみ割り人形(とナントカナントカ)」等の失敗を凌ぐ、シャレにならない爆死大作である。
もちろん、興行面の成否と映画の面白さは別件である。僕は公開直後の映画館を訪ねてみた。
で、この映画、面白いかどうかと聞かれると、つまらなかったとしか言えないのが正直なところである。もっと言ってしまえば、この映画の内容について話すこともそんなにないというか、もうとにかく薄い印象の映画である。
映画自体は、少しトレンドから遅れ気味ではあるが、ヤングアダルト向けファンタジー映画のようである。
序盤こそマッドマックスとスチームパンクが合わさったような世界観でそれなりの見せ場を作れたが、しかしその後はからっきしである。
説明セリフはしっかりあったと思うが、世界観を観客側に納得させるまでには至らず、結局はファンタジーの世界に入っていけなかったというべきか。
何なんだ、この面白くないときのジブリを観ているような感覚は。
偽エディ・レッドメイン的主人公も大した個性や存在感を残せず、演出過多でキャラ自体が浮いてしまったアジア系女優も残念ながら魅力的とは言えないだろう。女の子にしても、この手のヤングアダルトものにありがちな複雑なバックボーンが逆にノイズになってしまったのではないか。設定を伝えることで力尽きたか、この辺りはうまく処理して欲しかったところである。
本作のみで一応の決着がつくのは良いところだが、いかんせん興味もわかないし面白くない。
内容面についても、満足いく作品とは言えなかった。
これでは、過去に壮大なファンタジーを手掛けたPJの功績を称え、エピック・フロップ(壮大な大コケ映画)と揶揄されるのも納得か。
原作では勿論この先の物語もあるわけだが、続編は残念ながら難しいだろうと思う。
しかしながら興行的に失敗して、続編が作られずに人知れずに消えていくファンタジー映画は実は少なくない。(ライラやらエラゴンやらエアベンダーやら)
先にも述べたが、本作公開と同時期には、批評家からの大絶賛で迎えられた「スパイダーマン」、口コミで粘り強い支持を受けた「バンブルビー」などの優良大作があった。
そんな中で「強者が弱者を喰らうディストピア」なるファンタジー世界を提示した本作だが、現実とてそこは同じ。「モータル・エンジン」は名実ともに秀でた超大作陣に喰い殺されるというシニカルな最後を迎えてしまった。