30.《ネタバレ》 サラリーマンの夫のために「めし」をつくる主婦業に嫌気がさして、実家に帰って、数日間、ごろごろして、頭が冷やされてきたところに、夫が迎えに来て、元の鞘に収まるという、まあ、言ってしまえば、たわいもない日常話です。日本でテレビ放送が始まる1953年より前のことですから、その後テレビでやるようなホームドラマの需要を映画が担っていたんでしょうね。原作ありのホームドラマという時点で、監督の作家性が出にくいのだと思いますが、質素なサラリーマン夫婦を上原謙と原節子という必ずしも役に似つかわしくない映画スターに演じさせているところも、配役が先にありきの印象を持ってしまい、監督の作家性が今ひとつ見えて来ないところですね。ただ、作家性が表に出てこない分、時代の要求に忠実につくられているように感じられ、時代の記録として、貴重なものになっているような気がします。その反面、非常に古臭さばかりが目立って、時代を超えた何かが感じられないってことでもあるんですけどね。ここからは余談です。本作は大阪が舞台になっているのですが、この時代に、すでに、くいだおれ人形があったのですね。そういうことがわかるだけでも、なかなか貴重です。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 5点(2024-09-09 18:32:40) |
★29.《ネタバレ》 中年夫婦の件待機を描いた映画。盛りを過ぎた上原謙を面白くもおかしくもない亭主にしたところが上手い 亭主の言うこと成すことが癇に障る原節子の妻は思いあまって東京の実家に家出する。 羽を伸ばしてるようで、どこかで気が咎めている。心配。だから手紙を書くが出さない。 職安に行って仕事を探したりする。書いた手紙は離婚を仄めかす内容だったのかもしれない。 要は拗ねているのだ。もっと私にかまってよ、もっと私を見てよ。
猫と小林桂樹がいい。 夜遊びして平気で今夜ここへ泊めてと言う姪の里子をビシッと諫める時の言葉に この映画の肝とこの夫婦への監督の本音がある。 あの言葉を聞いた三千代は帰る決心をする。
大阪に訪ねてきた里子を三千代はだらしないと批判するが実家にいる時の 三千代だってドッコイドッコイ。 脱ぎ散らかした着物を杉村春子の母親がパッパと片付けるところにチャンとそれが出ている また着物をテキパキと片付ける杉村春子のさりげない上手さは絶品!!
三千代の悩みなど悩みではない。 世間の人は、そんな退屈な日々をそれぞれ鬱屈を抱えて、それを「そんなもんだよ」と やりすごしているのだ。今日明日の生活を懸命に生きている。 「めし」の心配の方がはるかに大事なのだ。
けっこうなご身分ですね。いい気なもんだお嬢さんは・・・・・・・ 成瀬のそんな冷ややかな皮肉が聞こえてきそうな秀作。 【ひろみつ】さん [DVD(邦画)] 8点(2019-03-19 19:36:03) |
28.《ネタバレ》 倦怠期の夫婦を描いた成瀬巳喜男監督のいわゆる「夫婦三部作」の最初の作品で、戦後それまで低迷していた成瀬監督がふたたび評価されるきっかけとなった代表作の一本でもある。成瀬作品をかなり久しぶりに見たのだが、成瀬監督らしい味わい深い映画になっていて面白かったし、それだけではなく、ちゃんと人間が生活しているという空気感も大切に、そして丁寧に演出されているところが良く、そういうところに成瀬監督のうまさを感じずにはいられない。結婚五年目の倦怠期を迎えた夫婦を原節子演じる妻の視点から描いているが、その心理描写もうまく、改めて成瀬監督は女性を描くのが本当に上手い監督だと感じさせられる。その原節子も平凡な夫との暮らしに何かしらの不満を抱いている所帯じみた主婦を演じていて、カリカリ、ピリピリした表情も見せるなど、小津安二郎監督の映画での彼女とは違った印象が残り、それが本作の中で効果的に使われているところなど、作風が似ていると言われる成瀬監督と小津監督の作風の違いもこの原節子の違いを見れば分かる。個人的には本作で原節子が演じた三千代という人物は今まで見た原節子が演じた役の中でも見ていていちばん親近感がわいたし、一般的に小津作品でその魅力が語られることの多い女優なのだが、成瀬監督もやはりそれとは別の魅力を引き出している。夫を演じる上原謙のダメ男ぶりもハマリ役で、こういう役が十八番のようなイメージの森雅之とはまた違ったタイプのダメ男を見事に演じていて、間違いなく本作は上原謙にとっても代表作と言っていいだろう。東京から家出してくる主人公夫婦の姪を島崎雪子が演じているが、彼女の芸名は「青い山脈」の原節子の役名をそのまま使ったもので、この二人の共演も見どころのひとつ。それにしても本作の主人公夫婦のような状況は現代でもじゅうぶんにあり得ることだと考えると夫婦というものはいつの時代もあまり変わらないものだと思わされるところもあった。「めし」というタイトルのつけ方も絶妙。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-02-11 18:33:39) |
27.《ネタバレ》 男の立場から言うと、これは怖い映画だと思った。 旦那は、飲んだくれでもなく、株屋ながら投資とかギャンブルもしない、浮気をするわけでもない堅実な男。決して悪い旦那ではないし、当人もそう思っているはず。 でも奥さん側には確実な何かが溜まっていく。 姪が来たことがきっかけとなり、実家に帰らせていただきますとなるんだが、旦那にしてみれば、明確な理由がわからない。 この状況、自分もそうなっちゃいそうで実に怖い。 長年一緒にいると敬意や関心も薄れていくし、若い奔放な女性が近くに来たら、そりゃ優しくしてしまうよ。浮気とは別次元でね。 この映画を見ていて本当に良かった。(と将来も思いたい・・) 【kosuke】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-20 22:19:09) |
26.評価が高いようですが、それほどでもなかったです。特に最後はそれでいいのか? と思います。ドラマとしては十分見られますが、どうも私はこういう夫婦間の心理の綾にうといようで……。ユーモアもあって面白いし、当時の大阪の風景を知ることもできて良いのですが、あまり引き込まれる話ではなかった。小林桂樹が、出番は少ないながら光っていました。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-01-02 19:17:48) |
25.大傑作。意味のないシーンが一つもなく、心情の機微というもののお手本。 ライスカレーという呼び方が時代を感じさせる。 【Balrog】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-09-19 18:06:32) |
24.倦怠期を迎えた、ひと組の夫婦の心の機微を描いたドラマ。 主に原節子扮する妻側の心理描写でお話が進む展開で、 もちろん設定などに時代の違いこそ感じるが、男と女の中身だけはあまり変わらぬようで、 どこの家庭でも見られるような夫婦のちょっとしたすれ違い、心の内が丁寧に描写されている。 といっても、日本のテレビなどでよく見られる、いかにもホームドラマといったクドさはなく、 さっぱりしていて、鑑賞後の後味は爽やか。小津や向田邦子作品に通ずるような雰囲気で、 大阪や東京の古い街並もいいけど、やはりセンスのいい演出が光る映画だった。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-08-12 05:36:14) |
23.何とも思い切った題名だ。「めし」つまりは日常生活そのものを意味するのだろうか。名女優原節子も、ここでは炊事洗濯に明け暮れる普通の女性、今まで見たどの原節子よりも所帯じみている。 私の子どもの頃はお米はスーパーで売っているものではなく、お米やさんからの「配給米」であった。だから1人でも家族が急に増えれば、「お米たりるかしら」と心配をしなければならなかった。(小学校の修学旅行は米持参だった) この炊事洗濯に子育てが加わり、日常生活は女は家事に男は仕事にと忙殺される。(この映画の主人公夫婦にはまだないが、それ故に危険度大) そしていつしか平凡な生活の中にある幸せが見えなくなってしまうのだ。 この映画は成瀬監督の映画だけあって、大上段に振りかぶってはいないが、倦怠期を乗り切る夫婦の姿がある。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-08-05 15:32:29) (良:1票) |
22.成瀬にとって本作は、49年の『不良少女』から組み始めたカメラの玉井正夫との最初の代表作であると同時に、上原謙と組んだ最初の作品でもあるんだよね(ザッと調べただけなんで間違ってないといいんだけど)。私は戦後の上原・とりわけ成瀬映画での彼はもっと評価されていいと思ってるもんで、そういう意味で意義深い作品。上原は戦前の二枚目から、戦後はどちらかというと「ダメな男」を積極的に演じた(私なんかは東宝特撮ものの白衣の科学者も忘れ難いな)。とりわけそういうダメ男の役で彼を使ったのが成瀬、妻や父を幻滅させる男を演じていく。そのスタートが本作だった。似たタイプの森雅之だと、ダメな男を演じても「やつれの色気」のようなものを漂わせ、演技者としてちゃんと観客を唸らせるが、こちらは「投げやりな衰え」とでも言うか、ただただ元二枚目が中年になったやつれだけが漂う。大阪に一人残されて来客にバタバタしているシーンなど、その個々の動作は滑稽味を出す意図的な演技なんだけど、その演技に上書きされるように、「愛すべきダメな男」が、演技者の意図を越えて画面に匂い立つ。映画俳優の演技って、こういうとこを生かすのが大事なんじゃないか。それでもまだ本作はいい役な方で、これからだんだん、よそに女を作ったり昔の女に金を無心したり、情けない役を好演していくんだ。彼、決して森雅之のような名優ではなかったかもしれないが、いい映画俳優だったんじゃないかな。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-04-27 09:48:32) |
21.ただの世間話みたいなやりとりを延々と見せられても・・・どうも面白みが感じられませんでした。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-04-21 00:50:45) |
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20.あまり面白くなかった。この当時の風景や台詞、情緒感は好きなんだけど。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2011-04-18 22:39:00) |
19.なかなか面白いが、三千代が東京で何を感じて、どう心変わりしていったのかがあまり伝わってこない。旦那さんはお気の毒な…。モノクロでもビールが美味しそうってことはわかる、それが発見でした。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-01-26 21:14:02) |
18.成瀬作品の中では比較的評価の高い本作ではあるが、個人的にはそれほど抜きん出ているとは感じなかった。 それはただ単に、主演の原節子という女優がそれほど好みではないという理由だけかもしれないが。 それよりも、杉葉子がますます好きになった。 とにかく表情が明るい。 彼女の笑顔を見ていると、明るい気持ちになれる。 夫役の小林桂樹に嫉妬した。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-03-23 00:40:05) |
17.エンディングで原節子のモノローグが定義する女(=主婦)の幸せに、現代の女性たちのどれほどが素直に頷くかは甚だ疑問だけど、形態だけを見ると主婦のポジションの本質はあまり変わっていないのだと思います。正直に言うと、普通に始まって、ゆるい夫婦喧嘩とゆるい家出をして、さしたる理由も無く元の鞘に納まっただけの印象で、それ以上のものを感じなかった。原節子の容姿が全く自分のタイプじゃないからだと思う。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-03-01 22:25:27) (良:1票) |
16.自分と生理的に一番波長が合う大好きな監督、成瀬巳喜男の夫婦物ジャンルものの秀作。小津映画での折り目正しい居住まいで、約束事のように静かに微笑み、涙ぐみ、たたずんでいるだけの原節子よりも、この映画や『驟雨』での、ごく自然な感情のままに振舞う「倦怠期を迎えた妻役」の彼女が、数十倍魅力的だと思う自分はやはり少数派なんでしょうか?成瀬映画の「原節子」が語られる事があまりないのは、ちょっと寂しい。彼女の映画、結構数多く見てきたけど、この二本の彼女が人間くさくて好きなんだよなあ・・・。あ、あといま一本、木下恵介監督「お嬢さん乾杯!」の彼女もメチャクチャ素敵でしたね。この映画にも、成瀬映画の紋章みたいに登場してくるチンドン屋と、常連オバサン女優中北千枝子の顔が出てくるだけでなんか嬉しくなる。女流シナリオ作家の脚本だけあって、ところどころに女性目線の台詞が散りばめられていましたね。特に知り合いの娘(島崎雪子)が家に滞在する事になった時の「・・・お米足りるかしら?」と、米櫃を覗き込む原節子の台詞に妙に感心。なんて事はない一言台詞なのになあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-11-07 11:25:11) (良:1票) |
15.《ネタバレ》 ○小津映画にもよく描かれる縁談による結婚の崩壊が描かれている。○親の反対を押しのけて結婚した三千代に対して、姪の里子という設定は良い。○夫婦仲の解決が観ていて納得させられるものではなかった。○里子のキャラは見ていて腹が立つ。○メインのストーリーは何とか収拾が付いているが、サブストーリーは中途半端なまま終わった気がする。○原節子の演技力は見事。 【TOSHI】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-07-10 10:09:29) |
14.《ネタバレ》 いつの時代も女ってのは難しい。とりたてて旦那さんが何かしたわけじゃないのに出ていって、迎えに行ったとは言えほぼ自己解決で戻ってくるんだもんな。そんななかビシっと正論をつきつけるシンゾーさんのセリフはガッツポーズもの。原節子のピリピリした作り笑いは、背筋がゾっとするようなモノがあります。見終わってみると、タイトルが中々深い。 【すべから】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-01-01 22:28:32) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 「傍から見れば理想的な夫婦だが実際は・・・」っていう設定のものは多々あれど、夫婦の心理描写(互いの心の葛藤)、若いては夫婦を取り巻く情緒あふれる人たちをここまで上手に描いた作品はないでしょう。心に沁みる傑作です。原節子が戦争未亡人の働く姿を見て立ち去ってしまうシーンが印象に残ったなあ。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-07-24 23:51:22) |
12.相変わらず成瀬巳喜男監督の描く世界には人間が生活している空気というものがあって良い。ごく当たり前のことのようだが、そういう当たり前のことを描くのには余計な描写やうるさい音楽や無駄な台詞はいらない。流石はこの監督はその辺のことがよく解っている。平凡な暮らしをしている夫婦の間に東京からやってきた夫の姪が入ってくることで二人の関係がどこかおかしな方へと進んでいく中で、原節子の見せる表情がこの作品のピリピリした空気に合っている。この映画は空気を感じて見せる映画だと思う。あの綺麗な空の下で生活している夫婦の感情を「めし」というタイトルで表すなんて、いかにもこの監督らしい。それにしてもどうしてこんなにも女性の心理を描くのがこの監督は上手いんだ?いつもながら感心させられる。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-09-01 12:50:32) |
11.人間の幸せっってなんだろうか。この問いに「○○のような生活ができることを幸せという」という形で答えようとすれば、すくなくとも時代的な背景・影響を逃れることはできない。この映画で語られる夫婦の姿は戦後間もない時期のものだし、男性観、女性観についても現在にくらべるとずいぶん違和感が感じられる。その点で、現代の感覚をもって鑑賞した場合、すなおに共感できない部分をこの映画が持っていることは致し方ないだろう。ただ、この映画が普遍的な意味を持つすれば、複数の人間が一緒に暮らしていくって事が、思いのほか、そういう「共同生活」を快適なものにしていこうという構成員各自の努力が必要であるということだ。また、そういう努力をすること自体がある種の幸せであるという「思い込み」あるいは「暗示」を「価値観」という名のもとに集団として共有しているのが「家族」であるということだ。そういう幻想が初めて「幻想」であるということにきづかれだしたのが戦後ということなのだろう。 |