2.《ネタバレ》 1958年の「金門砲戦」を題材にして、当時国交のあった中華民国の映画会社と日活が共同製作した映画である。
ちょっと深刻味のある恋愛ドラマ程度かと思って見ていたが、「中華民國國軍」が協力しただけあって意外に戦闘場面の扱いが大きい。高雄から金門島に向かう艦船は結構な大艦隊のように見えたが、そこへ中共軍の砲撃や航空攻撃があって、やたらに水柱が立ったりして登場人物が危険にさらされていた。ちなみに5隻くらいいた背負い式の単装砲の戦闘艦は、アメリカに貸与されたベンソン級かグリーヴス級の駆逐艦かと思った。
本筋の恋愛物語については微妙だったというしかない。日本側ヒロイン役の芦川いづみという人は個人的に馴染みがなかったが、笑顔の口元に可愛らしさのある人だと思った。中華民国側ヒロインは怖い顔の場面が多かったが、脚がすらりとしてきれいなのはさすがと思った。
当時の国際情勢を背景にした映画のため、当然ながら現在とは世界観が違っている。中華民国側の人物が日本語を話すのは日本統治時代の影響かと思えばそうでもなく、ヒロインの養父は戦時中に日本と戦った大陸出身者だった。また島の人々が自分らを「中国人」と言う場面があったのは、中華民国=中国だったので当然としても、現在のような台湾アイデンティティとは無縁な世界と思わせる。それは金門島という場所柄(台湾省でなく福建省)からしても当然か。
戦って故郷を取り返したいと願う人物に対し、戦争以外の方法は考えられないのか、と主人公が言ったのは戦後日本的な平和主義だろうが、実際はその後年数を経て両岸の往来も容易になったので、結果的に主人公の願いが実現したとはいえる。しかし現実問題として平和を願えば平和になるわけでもなく、次にまた何かあった時は日本も他人事としては見ていられないという気にはなる。
その他の事項として、劇中出た「そうじゅうせつ」とは重要行事らしいが何なのかと思ったら、中華民国の建国記念日である「双十節」だとわかったのは少し勉強になった。
またこの映画とは別に少し前、日本の高校のマーチングバンドが台湾に招かれて大歓迎されたという記事をネットメディアで見た気がしていたが、これも実はこの記念日のゲストとして参加したのだそうで(2022/10/10)、日本と台湾の友情のかけ橋として期待されていたらしい。何か大昔の映画を見たような気がしていたが、現在にちゃんとつながったのが意外で少し感動した。