39.《ネタバレ》 ゲーム的な要素の強い内容ですね。
船尾という名のゴール地点、ホットスポットという名のセーブポイント、空気濾過カプセルという名の時間制限、ゴーストという名の無敵モード、といった感じ。
この「船尾を目指せゲーム」を主人公父子が頑張ってクリアしようとするのを見守る形になる訳なのですが、これがどうにもこうにも退屈で、困ってしまいました。
せっかく通信機によって父子は意思疎通が出来るのに、ナビゲイター役の父親は視力の低下と眠気によって殆ど役に立たない&必要な事以外は喋らないというんだから、盛り上がりようが無いんですよね。
喧嘩していた父子が和解し、協力する事によって危機を乗り越えるのかと思いきや、結局主人公が助かったのって「鳥による自己犠牲」「ゴーストの習得」という要素が大きいし、これらに必ずしも父子の和解や協力が必要だったという訳でも無いのだから、何とも中途半端。
どうやら制作側は本作を三部作の一作目とする目論みがあったらしく、父子の決定的な共闘を描くのは先延ばしにする腹積もりだったのかも知れませんが、どうもそれがマイナスに作用してしまったように思えます。
「危険度最高レベル」「全てが人類を殺す為に進化している」という地球の恐ろしさが、具体的に伝わってこないのも不満。
殺すどころか、地球の鳥が命を投げ出して主人公を助けている訳だし、それが「人間を殺す立場にあるはずの存在が、逆に助けてくれた」という意外性の感動に繋がらず「全然殺す気なんて無いじゃん」という拍子抜けに繋がってしまったのですよね。
鳥の自己犠牲(我が子を助けてもらった恩返し?)シーンの演出からすると、ここは宗教的なメッセージ性もありそうなのですが、信仰心なんて殆ど持ち合わせていない自分からすると、どうもピンと来ない。
そもそも序盤において「能力は高いが性格に難がある」という主人公の姿が描かれていた以上、改心するなり精神的な成長を遂げるなりするのが王道なのでしょうが、本作ではそんなの関係無しに「エリートの息子がエリートの父親と同じ超技術を習得して敵を倒す」というシーンがクライマックスとなっているので、物語の前後が繋がっていないような気がしました。
ここ、父親役のウィル・スミス目線で考えるなら「息子が自分と同じ力に目覚めて成功してくれる」というのは、そりゃあ嬉しいだろうけど、観客としては置いてけぼり気分です。
結局、主人公の「周りの意見を聞かずに独断で暴走する」という性格は作中で明確に改善される事は無く「父親の意見に背いて崖から飛び降りたお蔭で二人とも助かった」という形で、むしろ肯定的な結果に繋がっているのだから、何というか……主人公を最終的にどうしたいのか、着地点が見えてこないんです。
姉が目の前で殺されたトラウマを乗り越える事を主軸に据えたかったのだろうな、という事は窺えましたが、それなら上述の要素の数々は排して、もっとシンプルに「姉のトラウマを乗り越える主人公」という形だけに定めた方が良かったのではないかと。
ラストシーンで「母親と同じ仕事」を主人公が選び、父離れするのかと思ったら「父さんもだ」って最後まで父子一緒なのが示唆されるのも、凄く微妙。
仲が良いんだなぁと和む気持ちより、もうちょっと互いに親離れ子離れした方が良いんじゃないかって冷めた気持ちの方が強かったです。
「バッドボーイズ」や「ベスト・キッド」(2010年版)など、父子で共演しておらずとも面白かった映画があるし、二人とも好きな俳優さんであるだけに、何だか非常に勿体無く思えましたね。
舞台となる地球の風景などは中々壮観でありましたし、アクション描写なども悪くないと思います。
けれど、それ以上に色々と気になる点が多過ぎて、最後まで没頭出来ず仕舞いな、残念な映画でありました。