1.《ネタバレ》 物語とか設定とか、古典的。伝説の龍と5つに割れた石を集め世界を救う物語。最近のディズニー作品だけでも『モアナと伝説の海』に似ていて『アナと雪の女王2』的でもあるわ。他社モノでは『トロールズ ミュージック★パワー』にも似てるわね。
その上、探し求めていてワリと早々に見つかる龍、コレが「あんた喋るのね」と思ったそばからウザいくらいにメチャクチャ喋りまくって「あー、毎度のディズニーの、『アラジン』のジーニーとか『ムーラン』のムーシューとか『ファインディング~』のドリーとか『アナ雪』のオラフとかの系譜」みたいな。
だから一見すると何か新しいコトをしているようには感じられないのね。
でも、それを見せる力が凄いワケ。東南アジアをモチーフにした作品世界には魅了されるし、ディズニーにしてはかなりアクの強いキャラ達もみんな揃って魅力的。ウザいと思った龍もどんどんと愛着が湧いてゆくし。剣術、武術をガシガシと見せるアクションにも気合入ってる。最初から最後まで退屈なんて一切しない、娯楽映画として一分の隙もないわ。
そして何よりテーマにかなり踏み込んでるのね。他者を信じ相互に理解し協力しましょう、というシンプルな命題に対して、だけど映画はかなり厳しいの。裏切りや憎悪をこれでもかと見せつけて、人を信じる事など到底できないヒロインにどんどん説得力を与えて、でもそんな困難な状況から連帯や和解に至る流れを描いてゆくのね。ディズニー作品の中でもかなり大人な感じの、ちょっと苦味のある作品ね。
トランプ政権にもし功績があったとしたら、それはこの作品や『トロールズ ミュージック★パワー』や『アダムスファミリー』といったアニメーションの名作を生み出した事ね。政権下での差別的、閉鎖的思想に対する危機感が作品に反映されたわけで。
ちなみに作品の情報を全く摂り入れないままに吹替版を見たのだけれど、龍のキャラは人間の姿になった途端に「あ、コレ、オリジナル版ではオークワフィナが声やってるよね? どう見てもオークワフィナ以外に考えられないわよね?」って。エンディングの最後にしっかと確認できたわ。だってもうキャラクターデザインそのものがオークワフィナそのものだもの。
シリアス度高いけれど笑って泣けてアタマから終わりまでしっかと楽しめる、上質のディズニーアニメーションね。ディズニーとシネコンがモメたので見られるハコが少ないのが難点だけど。配信で見たんじゃ勿体ないわ。