86.《ネタバレ》 アニメで、このような表現ができるとは驚いた。アニメファン以外にも観ていただきたい作品である。
・・・ 淡々とした冒頭のナレーションが、重々しい雰囲気を醸し出す。
荒廃した時代背景。下水道で作戦を企てるテロリスト達。高度な技術で描画されるトコトン暗いシチュエーションは、
これから起ころうとする何かを予感させ、緊張感を高めてゆく。その緊張感を突き破るように現れる特機隊、
この迫力は凄いとしか言いようがない。
アクションシーンは、これでもかとばかりに押し付けがましく見せられると辟易する。
また、同じアクションシーンでも見せ方によっては陳腐なものになってしまうだろう。
しかし、この「人狼」は違う。少ないアクションシーンを、静けさの中に見事に際立たせている。
静と動のコントラストが、迫力を増すのに素晴らしい効果を生んでいると思う。
登場人物の表情についても、同じことが言える。主人公の伏をはじめ、無表情なシーンが多いが、
だからこそ悲痛な叫びを表す表情に迫力が出るのだと思う。
終始喜怒哀楽を表していたのでは、大切なシーンでの表情が埋もれてしまったであろう。
ストーリーに童話の赤頭巾をオーバーラップさせ、悲恋の物語としているところも、絶品である。
多少難解とも思えるストーリー、さらに細かい説明を省略する手法は、観る者を検閲するかのように集中力と洞察力を要求する。
たが、ひとたび物語りに引き込まれると、自らの力で展開を解読してゆく快感から逃れられなくなる。
それゆえ、伏が雨宮を撃ち殺すラストシーンは、悲しいとか悔しいとか一言で表現できるものではなかった。そこには、
頭を何かで殴られたように、ただ呆然としている私がいた。