2.《ネタバレ》 豊田四郎監督作品らしい重厚な作品。
戦争の焼け跡や空襲のシーンなど、かなり大掛かりな作りとなっている大作。
淡島千景と森繁久彌の前半のやりとりは、同監督の『夫婦善哉』を彷彿とさせる面白さ。
中盤は、淡島千景が金の亡者となって、大阪商人をひた走り、やがては大成功を成し遂げる。
そんな淡島千景の母親ぶりに、石浜朗演ずる息子は疑問を投げかける。
お金に何でも換算したがる母親に対し、もっと人間らしい感情と生き方を持ってほしい、と。
仕事やお金って、生活を豊かにするための手段あって、それが目的になってしまうのはいかがなものか。
そんな生き方は、目的と手段が本末転倒した間違えた生き方なのではないだろうか。
幸せな生活を送るには、もちろんお金が必要だし、それを得るためには仕事が必要なわけだが、最低限の文化的な人間らしい生活ができるお金があれば十分であって、まして、仕事が生き甲斐の人生なんてつまらない。
それがまさしく本作のテーマであって、本作のそのテーマに対するスタンスに、とても同感できた気がする。
人情劇を描かせると、頭一つ出た実力をみせる豊田四郎監督。
この監督ならではの持ち味が存分に発揮された見応えのある力作である。