ブリキの太鼓のシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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ブリキの太鼓

[ブリキノタイコ]
The Tin Drum[米]
(Die Blechtrommel)
1979年西独ポーランドユーゴ上映時間:142分
平均点:6.86 / 10(Review 97人) (点数分布表示)
公開開始日(1981-04-11)
ドラマ戦争もの小説の映画化
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2021-11-23)【イニシャルK】さん
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監督フォルカー・シュレンドルフ
キャストダーヴィット・ベネント(男優)オスカル
マリオ・アドルフ(男優)アルフレート
アンゲラ・ヴィンクラー(女優)アグネス
カタリーナ・タールバッハ(女優)マリア
ダニエル・オルブリフスキー(男優)ヤン
ティーナ・エンゲル(女優)アンナ(若年期)
ベルタ・ドレーフス(女優)アンナ(晩年)
ローラント・トイプナー(男優)ヨーゼフ
アンドレア・フェレオル(女優)リナ・グレフ
ハインツ・ベネント(男優)グレフ
オットー・ザンダー(男優)メイン
マリエラ・オリヴェリ(女優)ロズヴィータ
フリッツ・ハックル(男優)ベブラ
シャルル・アズナヴール(男優)マルクス
ヴォイチェク・プショニャック(男優)
阪脩アルフレート(日本語吹き替え版)
田島令子アグネス(日本語吹き替え版)
小山茉美マリア(日本語吹き替え版)
安原義人ヤン(日本語吹き替え版)
矢田稔マルクス(日本語吹き替え版)
田の中勇ベブラ(日本語吹き替え版)
原作ギュンター・グラス「ブリキの太鼓」(集英社)
脚本ジャン=クロード・カリエール〈脚色〉
フォルカー・シュレンドルフ〈脚色〉
フランツ・ザイツ〔製作〕〈脚色〉
ギュンター・グラス〈追加台詞〉
音楽モーリス・ジャール
撮影イゴール・ルター
製作アナトール・ドーマン(ノンクレジット)
フランツ・ザイツ〔製作〕
フォルカー・シュレンドルフ(ノンクレジット)
配給フランス映画社
美術ニコス・ペラキス(美術監督)
ベルント・レペル(セット・デザイナー)
衣装ダグマー・ニーフィント
編集シュザンヌ・バロン
あらすじ
ナチス台頭期のポーランド。3歳の誕生日、オスカルは、大人の世界を醜悪なものとして嫌悪し、その日から成長することを止めた。ナチスが次第に支持を拡げ、第二次大戦が開始されるという時代を背景に、オスカルの目線でエロティックでグロテスクな世界が描かれる。
ネタバレは禁止していませんので
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97.社会人を20年以上もしていると、この映画を思い出し、太鼓叩いて、”キェーッ”て叫んで、事務所のガラスを割りたくなることがある。
この映画、淀川長治さんが大好きな映画だったよ。昔々そのまた昔。毎週、深夜ラジオで、淀川長治さんの映画解説番組がありまして、この映画の解説の熱弁は今でも忘れやしゃせんぜ。この映画の少年と淀川さんがオーバーラップしてショウガナイのでござんす。二人とも大人になることを自分の意思で止めちゃったわけで。.....長い映画でござんすが、そこのお若いの。是非是非、ご覧あれ。
atusiyaさん 10点(2004-11-30 00:18:48)(良:2票)
96.《ネタバレ》 長所と短所が狙い通りくっきり彫り出された傑作であり、長所は面白いことであり、短所は下品なことだ。
下品というのは、何も性的にばかり下品だと言っているのではない。
面白おかしく作られていることを含めたこの映画の全てが下品であり、人の心を荒ませるような醜い映画だ。
もし「客観的に」採点しなくても良いなら、この映画は観るべきでないという意味で躊躇いなく0点をつけたいところなのだが、映画の面白さを採点の基準に据えるこのサイトへ敬意を払い、常識的な点数(とはいえどうしても嫌いな映画であるがゆえに低めになってはしまうが)を付けることとする。
浅田荷葉さん [DVD(字幕)] 5点(2019-03-12 02:16:28)(良:1票)
95.《ネタバレ》 所謂「名作」かと思っていたので、観た時はもーびっくりしちゃって。なんかもうグロかった。“耽美”じゃないただのグロ。ことさらに人間の不快感覚を刺激するべく描いているみたいだった。耳障りなオスカルの叫び声。生魚。唾液。牛の頭部の死骸からウナギ。果ては3歳児の性交。小人という畸形をビジュアルに置いて何を描きたかったんだろう。戦争が終わって小人をやめるオスカル。精神と肉体が乖離しているこの奇妙な存在と、所属先の無い自由市だったダンツィヒの混沌が象徴的に重なるのか?うまいこと読み解ければ評論家になれるのだろうけど、ちょっと私にはわからない。“ショック”という意味では、この映画、“時計じかけのオレンジ”にも匹敵するけれど、「ブリキ」で描かれるグロさは言ってみれば平凡で、大きな声では言えないがこの程度のグロテスクならば、私は軽く十や二十は考えつく。展開がことごとく予想を上回る“オレンジ”よりもずっと評価が低くなりました。
tottokoさん [ビデオ(字幕)] 5点(2013-06-11 00:49:55)(良:1票)
94.《ネタバレ》 ポーランドの近代史は不案内ですが、本作を観る限りは一次大戦でドイツの属国のような形で共闘し、二次大戦でもナチスに傾倒する人が多くいたようで、同じことを繰り返したんだと思います。つまり、その間のポーランドは成長していなかった。オスカルが成長を止めたのは大人たちの醜悪を嫌悪したからですが、同時にポーランドという国への揶揄ですね。成長しない国では、成長することに意味がない。二次大戦後、オスカルが再び成長を始めるのは、もういい加減に前に進まない訳にはいかない諦観が当時の国家状況に被っていたのでしょう。劇中、オスカルの大人びた子供の視線が捉える周囲の大人たちのだらしなさ。ナマものがナマナマしく描かれる生理的嫌悪感。牛の頭部に詰まったウナギが凄いインパクトです。それら気持ち悪いものすべてが、あの国をダメにしていた元凶だという壮大な皮肉映画と解釈しました。当時のポーランドから遠く離れた時間と場所に暮らす人が、気分を悪くしながら観ることに意義があるのかどうか…。
アンドレ・タカシさん [CS・衛星(字幕)] 4点(2012-01-10 01:25:21)(良:1票)
93.《ネタバレ》 アクの強い評判を持つ映画を観る時って、期待と想像でパンドラの箱でも開けるような気持ちになる。今回もそうだったが、目を背けたくなるような映像はそれほど無かったし、オスカルの説明ナレーションのおかげで難解さに首を傾げることも無かった。何を言わんとしているかなんて全然考えずに観たが、ヨーロッパが持つどす黒い重い雰囲気が上手く表現されていたし、ナチの盛衰を平行させて描くストーリーもなかなか面白くて、2時間以上の時間があっという間だった。子どもが初めて触れあう大人は親で、親を頼って生きていく。その親の愚行を目の当たりにして成長を止め、息を潜め自分自身で脳みそを発達させ、三人の親を葬りまた成長を始める主人公。自らの束縛に自分で始末を付ける主人公の不気味さは必見。人間なら誰しも持つ、狂気や闇や奇怪な空気が随所に盛り込まれていて、そのままフタをして隠しておいてもよかった感情がソロリソロリと首をもたげてくる。好き嫌い、でなくとても興味深い作品。
のはらさん 8点(2005-01-15 12:41:17)(良:1票)
92.3歳で自ら成長を止め、太鼓を叩きながら冷たい視線を送りつづけるオスカル、別名エロ探偵コナン(見た目は少年、性欲はオトナ! むしろクレヨンしんちゃんに近いか?)。この「冷たさ」のせいで、本作には、「グロテスク」「アブノーマル」といった言葉より「残酷」という表現の方が合う気すらいたします。映画全体をインモラルが貫き、敢えて「調和」には背を向け続けるかのよう。生れた瞬間から世界を冷静に見続けるオスカル。肉体的成長を止めた彼とは対照的に激しく迷走する大人たち。しかし彼もまた時代に飲み込まれざるを得ないのだが・・・。また本作、特異な音楽も忘れがたいものがあります。行進曲のリズムをオスカル少年の太鼓が狂わせてしまう場面、あるいは、母がレコードの音楽にヤケクソにピアノ演奏と歌をかぶせる場面(一種のヘテロフォニーだ!)、などにおける、不気味な音のカオス。やはり「調和」とは一線を画し続ける、不思議な映画です。ところで、その後のオスカル君の消息ですが、何でも、道頓堀「くいだおれ」の前で今でも太鼓を叩きつづけているらしいんです(んなアホな)。
鱗歌さん 9点(2004-11-24 00:21:02)(笑:1票)
91.これほど理性の無い作品も珍しい。形こそ違うが時計じかけのオレンジといい勝負である。もう映画全体がシュールであり折れそうなほど曲がっている。とんでもなく歪んでいる。それが芸術的にさえ思える描写。壊滅的な傑作。
モチキチさん 10点(2004-10-04 04:45:18)(良:1票)
90.十年ほど前に観たきりだというのに、今でも突然に、この映画のことを思い出して吐きそうになる。二度と観たくない恐ろしく不快なる傑作。
永遠さん 9点(2004-04-04 08:33:06)(笑:1票)
89.すっごいアバンギャルドですね!大嫌いです。
Keith Emersonさん 1点(2004-02-13 03:42:42)(良:1票)
88.点数付けにくい。すっごく嫌な気持ちがする作品だけど、コメントをせずにいられない。そういう意味では印象に残っている。主人公をはじめ、誰にも共感できないのよね。大人になることを止めるのはいいけど、それってサイズだけを止めたんじゃなかろうかと思うくらい、主人公のご都合主義が目立ったように思う。肉体的な大人を止めても、あんたのやってることは十分に大人だろうがと思った。だけど、子供の肉体をもってることで得してるというか、逃げてるわけ。それに腹が立った。だけど観ることをお薦めしたい。
yukaoriさん 0点(2003-12-08 07:12:22)(良:1票)
87.これは・・・想像以上の気味悪さ。
R-15指定だが、残酷だとか、Hなシーンが多いとかってこともない。でも、決して子供に見せてはいけない何かがある。
「何が」とは言えない。
でも、意図した不気味さが映像全体から醸し出されている。
あと、効果音の使い方も。
主人公の少年は複雑な父と母とその愛人の関係を子供ながらに感じ取り、醜い大人になりたくないと心に決めてみずから成長をとめてしまう、という目茶苦茶な設定。
演じているのは、本当に子供なのか、小人症の大人なのか、よく分からないが、とにかくおぞましい表情を見せてくれる。
あー、説明するのが難しい。というか、おぞましい。
冒頭のシーン。芋畑で焚火する女。警官に追われて逃げてくる小男。女は小男に頼まれてスカートの中にその男を隠す。・・・これは主人公のおじいさんとおばあさんのなれ初めの話。想像できますか?「まさか・・・」という想像が当たったので、吐き気がした。
快活な子供の声のナレーションが余計に不気味。
全体的にそういうトーンのカルトムービー。
気持ち悪いが印象深い。1979年西独の映画。
興味が湧いたらご覧あれ。ただし、ビデオはなかなか見つからないと思う。
よしのさん 7点(2003-11-22 16:23:23)(良:1票)
86.《ネタバレ》 この映画「ブリキの太鼓」は、奇想天外で挑発的な映画的陶酔を味わえる珠玉の名作だと思います。

映画「ブリキの太鼓」は1979年のカンヌ国際映画祭でフランシス・F・コッポラ監督の「地獄の黙示録」と並んでグランプリ(現在のパルムドール賞)を獲得し、また同年の第51回アカデミー賞の最優秀外国語映画賞も受賞している名作です。

原作はギュンター・グラスの大河小説で二十か国語に翻訳されていますが、あとがきの中でグラスは、この小説を執筆した意図について「一つの時代全体をその狭い小市民階級のさまざまな矛盾と不条理を含め、その超次元的な犯罪も含めて文学形式で表現すること」と語っていて、ヒットラーのナチスを支持したドイツ中下層の社会をまるで悪漢小説と見紛うばかりの偏執狂的な猥雑さで克明に描き、その事がヒットラー体制の的確な叙事詩的な表現になっているという素晴らしい小説です。

この映画の監督は、フォルカー・シュレンドルフで、彼は脚本にも参加していて、また原作者のギュンター・グラスは、台詞を担当しています。

原作の映画化にあたってはかなり集約され、祖母を最初と最後のシーンに据えて全体を"大地の不変"というイメージでまとめられている気がします。

そして映画は1927年から1945年の第二次世界大戦の敗戦に至るナチス・ドイツを縦断して描くドイツ現代史が描かれています。

この映画の主要な舞台は、ポーランドのダンツィヒ(現在のグダニスク)という町であり、アンジェイ・ワイダ監督のポーランド映画の名作「大理石の男」でも描かれていたひなびた港町で、この町は第一次世界大戦後、ヴェルサイユ条約により国際連盟の保護のもと自由都市となり、そのためヒットラー・ナチスの最初の侵略目標となりました。
まさにこの映画に出てくるポーランド郵便局襲撃事件は、第二次世界大戦の発火点になります。

そしてこの映画の主人公であり、尚且つ歴史の目撃者となるのが、大人の世界の醜さを知って三歳で自ら1cmだって大きくならない事を決意して、大人になる事を止めてしまったオスカルは、成長を拒否する事によって、ナチスの時代を"子供特有の洞察するような感性と視線で、社会や人間を観察していきます。

オスカルは成長が止まると同時に、不思議な超能力ともいうものが備わり、太鼓を叩いて叫び声を発すると居間の柱時計や街灯のガラスが粉々に割れたりします。

この奇声を発しながらブリキの太鼓を叩き続けるオスカルの姿は、ナチスによる支配下のポーランドの歴史そのものを象徴していて、フォルカー・シュレンドルフ監督は、原作者のギュンター・グラスの意図する二重構造の世界を見事に具現化していると思います。

超能力などの非日常的な要素を加味しながら、ポーランドの暗黒の時代を的確に表現した映像が、我々観る者の脳裏に強烈な印象を与えてくれます。

その暗いイメージは、特に海岸のシーンで象徴的に表現していて、不気味な映像美に満ち溢れています。

オスカルは、ドイツ人の父親を父として認めず、ポーランド人の実の父をも母を奪う男として受け入れません。
この二人の父親は、オスカルが原因となって不慮の死を遂げ、また気品と卑猥さが同居する母親も女の業を背負って狂死します。

この映画の中での忘れられない印象的なシーンとして、第二次世界大戦下、オスカルの法律上のドイツ人の父親は、ナチスの党員になり、パレードに参加します。

そのパレードの最中に威勢のいいマーチがファシズムを讃え、歌いあげる時、演壇の下に潜り込んだオスカルが太鼓を叩くと、マーチがワルツに変わってしまい、ナチスの党員たちまでが楽しそうにワルツを踊り始めるというシーンになります。
この意表をつく映像的表現には、まさに息を飲むような映画的陶酔を覚えます。

このダンツィヒは、歴史的には自由都市でしたが、ポーランドの領土になりドイツ人の支配を受け、その後、ソ連軍によって占領される事になります。

オスカルは戦後、成長を始めましたが、若い義母と一緒に、列車で去って行く彼を郊外から一人で見送る祖母の姿に、ポーランドという国が抱える拒絶と抵抗と絶望との暗い時代を暗示しているように感じられました。

尚、主人公のオスカルという子供が成長を止めたというのは、第二次世界大戦下、ナチス・ヒットラーの暗黒時代をドイツ国民が過ごした事の象徴であり、撮影当時12歳だったダーヴィット・ベネントのまさに小悪魔的な驚くべき演技によって、見事に表現していたように思います。

とにかくこの映画は、全編を通して奇想天外で挑発的であり、映画的陶酔を味わえる、まさに珠玉の名作だと思います。
dreamerさん [DVD(字幕)] 10点(2023-08-28 08:59:54)
85.《ネタバレ》 3歳で自らの意志で成長するのをやめた男が主人公。第二次大戦下の自由都市ダンツィヒ(現在ポーランド領)がおもな舞台。彼の周りの人たちが、彼の奇行に翻弄され、ナチスの侵攻に翻弄される様子が描かれていきます。奇人の視点で奇妙な世界観を見せつつ、庶民の生活を見せつつ、戦争の影響も見せつつという感じですが、いろいろと欲張りすぎて話が散漫になっている気がします。主人公の彼は適役ですね。キモい狂気の幼児を良く演じています。レクター博士を彷彿とさせます。しかし・・・肌身離さずブリキの太鼓を叩き、奇声を発してはガラスを割るキモい狂気の幼児でさえモテモテだというのに、お前らと来たら・・・
camusonさん [DVD(字幕)] 5点(2023-03-26 15:46:33)
84.《ネタバレ》 この映画は、ダンツィヒ(現在はポーランド領グダニスク)という都市と20世紀初頭からのドイツとポーランドの関係について多少なりとも知識がないと見通すのが大変かもしれません。そしてブリキの太鼓・スカートの中・オスカルの超能力・小さい人々、など様々な何かを暗喩しているアイテムが散りばめられており、予備知識があればそれらの意味を推測する手がかりとなるのかもしれません。 思うにオスカルの母親アグネスこそが、ドイツ人のアルフレート、ポーランド人のヤン、ユダヤ人のマルクスに愛され、彼女こそがダンツィヒという都市を体現しているんじゃないかと思います。そのアグネスが産んだオスカルが実はヤンの子だということは、ドイツとポーランドの間で帰属が揺れ動いたダンツィヒの歴史の擬人化なんだと思います。今の眼で見ればさほど刺激は感じませんけど、なんか癖の強いエロティシズムが当時は衝撃的だったのは理解できます。オスカル役のダーヴィッド・ベネントがまた映画史に残る怪演子役で、とくにアンナとの絡みは北米で児童ポルノ認定されたってのも判らなくもないです。オスカルがサーカス団に加わって戦場慰問でフランスへ行くシークエンスには独特の味があり、そこで出会う団長べブラが私にとってはこの映画でもっとも印象深いキャラでした。彼こそが肉体的成長を止めたオスカルの完成形なのかもしれません。 二時間四十分のDC版での鑑賞でしたが、観終わってみて私の大好きなエミール・クストリッツァの『アンダーグラウンド』に似ている感じがしてなりませんでした。ユーゴスラヴィアという国家とダンツィヒという都市の違いはもちろんですけど、一つの共同体の崩壊というのは共通のテーマです。でもこの映画には『アンダーグラウンド』でクストリッツァが訴えた哀愁とノスタルジーは微塵もなく、時代に流されて消えてゆく人間像が前面に出ていたように感じます。これは監督シュレンドルフというか原作者ギュンター・グラスの個性なんでしょうね。
S&Sさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-22 23:07:12)
83.《ネタバレ》 極めて特異で奇怪な主人公が設定されているが、彼が紡ぐ物語はこれまた外形的にも内面的にもこの上なくグロテスクで、ハッキリ言って本作はグロ映画の類だと言って過言ではない。主人公本人からして極めて不愉快なサイコパスで、目なんて(子役の癖に)半ばイっちゃってるし、あくまで日常風景をベースにしていながらも、とにかく映像がグロテスクで中々観るに堪えない。個人的に特にキツかったのはウナギ(シュヴァンクマイエルとかでも思うことだが、マズそうな食物ほど意外と心を「エグる」ものは他に無いようにも思う)。また、性的にも中々インモラルで、これほど濡れ場が全然嬉しくない作品もある意味珍しい。

ただ、この奇妙な設定と醜悪な演出によって本作が描き出そうとするものは、この時代のドイツ(取り分けて大きな社会的矛盾を孕んだダンツィヒ)の病的で狂った「時代の空気」なのだということはより良く理解できるように思う。その意味では、これだけ荒唐無稽な話でありながら、その伝えんとする雰囲気が寧ろより直感的で鮮烈に伝わって来るのは確かであり、映画としてテーマ面の表現が優れていることは間違い無いと言える。文芸映画としては屈指の傑作。
Yuki2Invyさん [DVD(字幕)] 8点(2020-01-16 22:24:54)
82.《ネタバレ》 壮大な叙事詩というかホラ話。一人の男(でも、少年)を通じての年代史で面白くないはずがない。長いが退屈せず。
にけさん [映画館(字幕)] 7点(2019-01-22 13:00:01)
81.《ネタバレ》 原作では判りませんが、映画においてはサーカス団、後の慰問団でオスカルの師となるベブラ師との邂逅が大きな意味を持つように思います。身体は成長しないけど精神は成長するオスカルにとって、その存在を見抜いているベブラ師というのはオスカルの完成形でもある訳です。オスカルはブリキの太鼓を叩いて大人の欺瞞に近づく精神の成長をも拒否しようとするのですが、子供染みた行動でオスカルを保護してくれる周囲の大人を死に追いやってしまう狂気に、戦争と父親の死をきっかけに別れを告げて西側?の新世界で成長を再開して生きて行こうとする所で映画が終わります。私は反ナチズムとか反戦がこの映画の主題ではなく、この時代の狂気とオスカルの狂気が同じ位で違和感がない、と言う所がこの映画の主題なのかなと感じました。ややグロテスクで難解なのでこの点で。
rakitarouさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-29 16:33:15)
80.第二次大戦下のいろんな民族が混在している東欧地域で、フリークスの目から観たドイツ、ソ連とポーランドの間で翻弄される人々を描いた異色作。地域の特性や歴史的背景を知らないとわかりにくい描写も多く、鰻やらグロい場面もあるので万人向けではないでしょうが、映像的に観るべき場面は多いと思う。
映像から独特の東欧の空気感みたいなものが感じられ、どよんと曇りがちの空模様、ラスト近くの平原の景色、シワの刻まれたばあさんの表情の余韻も良い。
クリプトポネさん [DVD(字幕)] 7点(2017-08-13 13:46:27)
79.《ネタバレ》 これほど重苦しい暗黒史を体感した映画は他にはない。ただ性や暴力を過剰で陰惨に描けば良いのではなく、皮膚感覚で訴えるタールみたいな異臭と粘り気が正確なのだ。大人の醜い世界を覗き、成長を拒んだ少年はいびつで異質な存在。いつまでも大きくならず、太鼓と奇声でガラスを割る光景がどれほど不気味なことか。馬の頭で鰻を獲ることの不気味さ、"子供同士"で性交していることの不気味さ・・・現実と寓話の区別が曖昧だからこそ"不気味"で、如何に不安に覆われた時代かを物語っている。第二次世界大戦後、少年は大人になることに再び向き合い、家族と共に西側の新天地に向かう。ハッピーエンドになるとは限らないが、姑息な社会不適合者が如何に現実と折り合いを付けるかを一定の距離間で見届けているようだった。
Cinecdockeさん [DVD(字幕)] 7点(2017-08-02 22:52:36)
78.《ネタバレ》 時代の発狂を体現したかのようなオスカル少年。戦争の終結とともに、成長を始めるラストが印象的。例え戦時下であっても、人間ドラマは紡がれていく。弱い青年と鈍感な男性と一人の女性。この三人の子とも言えるオスカルは、鈍感なお父さんに発狂し続けていく。鈍感なお父さんが、ナチに迎合して、歴史に翻弄されるのは当然だろう。だけどオスカルは鈍感なお父さんの遺伝子を引き継いでいるので、鈍感に子どものままで居座り続ける。(時代の発狂を、自分に許したオスカルが、それでもまだ発狂し続けていられるのが、矛盾してるようで分からなかった。そんなもん?)父への報復が終わるまで彼は「愚鈍」に子どもで居座り続ける。しかしお祖母さんはそれを見抜いていたのかもしれない、このオスカルの鈍感さを。かくして彼もまた孤独な一人になってしまう。最後の別れのお祖母さんの表情のアップは見事だった。あれで話が引き締まった。面白い作品だと思う。
トントさん [ビデオ(字幕)] 8点(2015-04-19 05:55:28)
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【点数情報】

Review人数 97人
平均点数 6.86点
022.06%
111.03%
211.03%
355.15%
477.22%
51313.40%
688.25%
71717.53%
81616.49%
91111.34%
101616.49%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 7.00点 Review8人
2 ストーリー評価 8.22点 Review9人
3 鑑賞後の後味 5.55点 Review9人
4 音楽評価 6.71点 Review7人
5 感泣評価 4.20点 Review5人
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【アカデミー賞 情報】

1979年 52回
外国語映画賞 受賞 

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