42.《ネタバレ》 アカデミー賞外国語賞を受賞している世界的に評価されている作品。
一切飽きることはなく、興味深くストーリーを追うこともできる。
時代背景が必要なところもあるが、さほど難解さもなく、ストーリーは大体理解できたと思う。
しかし、受け手側である自分の人生経験不足ということもあり、個人的には世間的に絶賛されているほどハマることはできなかった。
自分は、まだまだ過去や思い出に生きるほどの熟した年齢ではないということか。
劇中においては、瞳の奥に刻まれた過去や思い出に囚われて生きる男の悲哀や空虚さのようなものが感じられる。
妻を殺された男性、その事件(もちろん事件だけではない)を忘れられない男性という二人の男性が印象的に描かれている。
彼らは“a”が打てないタイプライターのようなものかもしれない。
重要な部分のどこかが壊れている。
過去から一歩抜け出せれば、『怖い』→『愛している』のように何かが劇的に変われるのだろうか。
しかし、過去をどんなに忘れたくても、過去からどんなに抜け出したくても、簡単に抜け出せるほど、単純ではないということもしっかりと描かれているような気がした。
妻を殺された男性の場合には、『愛している』→『怖い』へと変わってしまったのだろう。
この事件によって、彼は“a”を打てなくなってしまったようだ。
冒頭の駅における別れのようなシーンが観客の瞳にも刻まれていくような仕掛けも見事である。
この印象的に描かれたシーンがどのように結び付いていくのかと、観客は考えざるを得ないだろう。
それぞれのキャラクターの瞳の輝きや微妙な表情など、セリフで描かれていない部分なども多く、それらも評価されたのだろう。
また、サッカー競技場における撮影方法についても見所があった。
上空のヘリコプターから撮影しているのだろうと単純に思っていたら、徐々にズームしていき、いつのまにか雑踏の中に視点が移っている。
「今のどうやって撮影したのだろう。どこかで切り替えたとは思うが、初見では分からないな」などと撮影技術などについても感心させられる。