9.ミニマリズムの極致。
色のない荒涼な写実主義絵画を延々と眺めるようなもので、ギャラリーに歩み寄らず、誰にも媚びず、
むしろ「無から何かを感じ取れ」と歩み寄らせるスタンスだから、
粗製濫造の娯楽映画に浸かりきった大衆が拒絶するのも無理はない。
現実では仕事に疲れ切って何も考えたくないから、劇中の父娘と同じようでダブってしまう。
だから、本作を「退屈でつまらない」と否定したって問題ない。
あなたの好きな映画を見続けても、第三者がケチつける権利はない。
反面、今日評価されている芸術に対して、何も疑わず追従する大衆もいるという矛盾。
ゼロベースから形を変えて、後世に影響を与えているのならその価値はあるかと。
物質主義も精神主義も棄てた先にある答えを、後世の人たちが見つけるかもしれない。
そういう意味でのタル・ベーラの"遺作"。