1.《ネタバレ》 秋葉原の歩行者天国に車で突っ込み、更に車から降りてナイフで何人も切り付けた実在の人物をモデルにした、社会派ドラマ。
シリアスな作りかと思ったが、コミカルな部分が多勢を占め、予想を外した。
非正規雇用が生み出す社会への怨念と鬱屈から、無差別殺人に到った主人公の心の闇を、シリアスに描き、そこに一つの整合性が見られたならば、もの凄く味わいのある作品になったに違いない。
中村獅童似の乱暴なサブキャラが終始出てきたが、このキャラは、ほんと不要。
無差別殺人鬼を生む過程において、何ら関係性を見いだせない。
先にも書いたが、コミカルなシーンがとにかく多い。
笑えるシーンもあったが、この題材の映画に、そんな笑いは期待していない。
数々のコメディなシーンのおかげで、ラストシーンにおける秋葉原の歩行者天国に突っ込む寸前の息の詰まる時間は、まったくもって真実味がなかった。
思うに、この作品は、無差別殺人という凶悪な犯罪を犯した人間にも、ユーモラスな人間性が備わっていて、普通の人間とそれほど変わらないんだ、ということを主張したかったのかもしれない。
監督が意図したことは定かではないが、やはりこの題材を描くのなら、もっとドキュメンタリータッチで、シリアスに描くのが自然であり、傑作に成り得る方法論であったように思う。