62.《ネタバレ》 『ションベンライダー』が思春期一歩手前の少年少女の子ども時代との決別を描いていたとするならば、『台風クラブ』は望まぬ思春期を真っ只中にむかえてしまった少年少女の反撃の映画である。画面には常に後ろめたいような性の匂いが横溢し、いまだ無邪気に見える彼らの背後には、小学生でも高校生でもなく中学生特有の自分の体が大人になっていくことへの畏れと悲しみがそこはかとなく漂う。そんな台風到来直前の思春期的性衝動と渦巻くような胸さわぎ、そして後半の原始的な台風がもたらす不思議な昂揚感と開放感、さらにはそれらをねじ伏せんばかりに見せつける生々しい映画的興奮とがないまぜとなり、まさに台風のように徐々に強大化し、また収束していくさまが圧巻だ。この規格外の豪速球っぷりは、ただごとではない。それほど衝撃的で、それでいてこの映画の粒子一つ一つがまるで自分の細胞の一つ一つであるかのような、あたかも自分の心象風景をまるごと映写されているかのような、そんな懐かしさがこみあげるのはなぜなんだろう。夜のプールの空気感、木造校舎のたたずまい、大西結花が朗々と読みあげる高田敏子の詩「忘れもの」もたまらなくいいが、相米印の型破りな選曲センスも抜群だ。バービーボーイズからはじまりPJのレゲエ、歌謡曲わらべの「もしも明日が」に、エンドロールは運動会の実録音源って!そんな破天荒なDJされちゃった日にはもう、全面降伏でシビレるしかない。恐るべし相米慎二。台風がのこした爪痕である校庭の巨大な水たまり。それを軽々と進んでいく工藤夕貴は、心にのこるであろう爪痕もまた乗り越えていくんだろうか。 【BOWWOW】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-07-23 21:58:42) (良:3票) |
61.《ネタバレ》 製作当時の80年代にはなかった言葉だけど、この映画は中二病を患った中三が集団発作を起こすお話しだと思います。その中で彼ら彼女たちは性の目ざめや人間の根源的な生死の問題に苦しみ、そしてその中の一人はその問題に決着をつけたってわけです。この物語は徹底的に中学生たちの世界を描いていて、大人は実質的に三浦友和が演じる数学教師とその関連人物しか登場しませんでした。この三浦友和の演じる教師がいかにもいそうないい加減な俗物で、実にリアルです。山口百恵との共演でアイドル俳優というイメージが定着していた彼がよくこんな役を引き受けたと思いますが、本人の回想にもあるようにこの役が現在まで続く俳優人生の大転機となったことは言うまでもありません(当初は糸井重里にオファーしていて断られたそうです)。半面、工藤夕貴ら生徒たちの親は家庭内のシーンがあっても全くといっていいほど登場せず(寺田農だけが暗がりで誰だか判らないようになってワンカットだけ映る)、これが本作の独特のテイストを形成しています。またこの映画には有名な『犬神家の一族』のパロディとしか思えないカットやオカリナを吹く白装束の男女など理解に苦しむところが多々ありますが、相米慎二は脚本にはほとんど異議を唱えない監督だったそうなので、これは脚本家にそういうクセがあったってことでしょう。まあ、土砂降りの中で下着姿になって『もしも明日が』を踊り狂うところをワンカットで見せるという相米らしいシーンもあるので、これは良しとしましょう。とにもかくにも、本作は日本の80年代青春映画の最高傑作だと思います。 この映画は、長野県佐久市の中学校で夏休みに集中してロケしたそうで、在校生もエキストラ出演しています。完成後に体育館に生徒を集めて披露試写会を学校は企画していたそうですが、中身やストーリーを知らずに協力していた先生たちが怖気づいてけっきょく企画は立ち消えになったそうです。これはぜひ実現して欲しかったですね、きっと家族団らんで観ているTVに突然濃厚なラブシーンが流れて気まずくなるような雰囲気だろうなと、想像しただけで笑えてきます。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-12 18:43:46) (良:2票) |
60.《ネタバレ》 狂気!狂気!狂気!映画全体に只ならぬ狂気が充満している。まずはいきなり夜のプールでの訳の解らないダンスで始まるのには驚かされた。この訳の解らなさこそがこの映画の主人公である彼ら、彼女ら中学生の大人への不満、大人になりたいけど、大人にはなれない中学生の有りのままの姿であると思う。奴らにとっては大人社会への不満以上にこれから先への不安の方が多いのである。だからそんな不安を取り払おうとする為に大人には理解できない行動ばかりをするのである。夜のプールでの踊りに始まって、授業中にいきなり鼻血を出す奴もいるし、いきなり女子生徒に対してケガを負わせたり、二人きりの校舎内で襲いかかったりと、やってくる台風と同じように物凄い危険性を感じさせる。相米慎二監督はこの台風の襲来する風景の中にある日常的で且つ、非日常的な両面を見せることでこれから先の不安というものを暗示させ、そして、観る者にどうすればその不安を消すことが出来るのかという答えを考えさせようとしていたと私は思います。ラスト、台風が去った後の学校のグランドでの工藤夕貴の姿には他の生徒とは違う普通のままの姿を観ることが出来る。作品全体に漂う不安定な感じこそが監督の狙いだとすると、相米慎二監督という人の持っている人間的観察力の鋭さ、どこから見ても破錠しまくりの映画的なスリルとリアルさを両方持ち合わせた凄い映画だ!本当は9点でもいや、10点でも良いとさえ思える凄い映画だが、個人的好みという意味ではどうしても9点以上は付けられない。しかし、何度も言うように凄いスリルとリアルさを持つ映画である。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-09-08 22:00:33) (良:1票) |
59.台風の接近と青春の衝動の爆発やねじれを重ね合わせるというコンセプトはとても面白く、また描写のインパクトも強いので、低い点はつけられないのですが、作品として普通に楽しめたかと言われたら、ノーです。特に、やたら暗い映像と、役者の表情などどうでもいいと思っているかもしれないロングショットばかりのカメラに参りました。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-01-08 01:57:31) (良:1票) |
58.この訳分かんなさが思春期の頃の微妙な心理状態を物語ってんだろうなぁって思いました。中途半端なエロも欲求不満にさせるだけでした。なんか深い感じがして通ぶって高得点をあげたくなる錯覚に陥り易いタイプの作品だが、ダマされんぞ!! 【憲玉】さん [DVD(邦画)] 4点(2006-11-01 00:28:28) (良:1票) |
57.《ネタバレ》 夜のシーンでもはっきりと顔を照らす光は月明りや街灯や教室から漏れる明かりであるように演出され全く不自然さを感じさせずに見せている。生涯、照明に拘った相米監督作品の中でも出色の出来。お話は相変わらずの子供の成長過程における葛藤。1人の無邪気な少女が一足早く大人の女へと移り行こうとする自分に戸惑い、わけもわからず家を飛び出し何もなかったかのようにそのことを受け入れるまでを台風によって表現する。すべての事柄を理論付けようとする大人びた少年はこの説明不可能で不可解な現象を無理やり理論付けようとした結果、窓から飛び降りる。もう1人の少年の異常行動を見ても、体がその変調をゆるぎない現実として見せてくれる女のほうがスッと受け入れてしまうのかもしれないと思った。自分の中だけで通り過ぎてゆき知らぬまに忘れてしまう通過儀礼・・自分にもあったんだろうなぁ・・と思う反面、あの男女半裸で踊る輪には入れなかっただろうなぁとませた少年時代を懐かしむ。もし輪に入ったとしても間違いなく前かがみで踊れない。 【R&A】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-08-23 12:56:11) (良:1票) |
56.途中で何度か、ビデオを止めようかと思った。なのに、この点数。減点法でいくと5,6点なんだけど、加点法だとこうなっちゃう。奇蹟の一発。歴史に残る一本。知り合いの死を知った日は、空が抜けるように青いというだけで、泣けてきませんか? さあ、観終わったら、元の怠惰な日常へ帰っていこう。 |
55.《ネタバレ》 これぞ映画です。相当完成度の高い青春映画だと思います。相米監督の個性とでもいいましょうか、このスタイルはまさに映画です。映画とはこういうものだと思います。「台風クラブ」という題もセンスあると思います。この映画はいろいろな意味でとても大切な人から薦められました。出会えてよかった。 【もちもちば】さん 9点(2003-07-15 00:42:57) (良:1票) |
54.台風?クラブ?何が言いたかったか良く分からなかったけど、思春期の少年少女の心を語りたかった・・・・・のかな? 【cccp】さん 3点(2003-01-09 23:53:20) (良:1票) |
53.映画の最大の欠点である「退屈さ」満載の作品。 【死亀隆信】さん 3点(2002-06-12 20:36:18) (良:1票) |
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52.あなたのハートには 何が残りましたか?・・・・・ 何も・・・・ 【白うなぎ】さん 5点(2002-01-14 02:10:07) (良:1票) |
51.《ネタバレ》 今だったら「コンプライアンス」的にはヤバい描写が満載で、正直「引いて」しまう部分もあるのだけれど、1980年代に中学生だった自分としては、その時代・年代の「危うさ」の表現に唸るしかない。冒頭のプールでの「イジメ」にしか見えないシーンやら職員室で女子生徒が襲撃されるシーンは今の感覚ではかなり見るのが辛いし、あれを「ノスタルジック」に「あんな無茶なことしたよな」と見る人とは、たとえ同世代でもたぶん友達にはなれないと思う。ただそんな嫌悪感を抱きながらも、この映画からはどうにも目を離せない。 どっちかというと、自分としては、できたらもう二度と戻りたいとは思わない中学生の感覚を、ここまで生々しく詰め込んだ映画はなかったように思う。人間として自分がどうなってしまうのかわからない、明日になったら「普通」でいられるかどうかわからない(だからベタ歌謡曲の「もしも明日が」の選曲には恐ろしさすら感じる)、そういう危うい感覚に満ち満ちている。なのに、周囲の「大人」はなんの助けにもならないどころか、問題の根っこになるような存在。そんな状況を、一人「真面目に」観察していた三上君の最期。長尺での椅子を積み上げるシーンから中二病爆発の台詞の後の「アレ」は、「個だ、種だ」なんて大きなことを言ってみたり、大人たちに「お前のようにはならない」と宣言してみたところで、その顛末は喜劇にしかならない、という大人なメッセージにも見える。自分の思い出したくない部分をえぐられるような2時間。嫌いだけど目が離せない。やっぱり傑作なんだと思う。 【ころりさん】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-11-02 07:10:59) |
50.《ネタバレ》 中学生がそれぞれ抱えているであろう悩みが分かり辛い、顔と名前がなかなか一致しないままに終わってしまった。三上君は死んだのかどうかもわからない。ただ、土砂降りの雨のシーンでカメラのレンズに水滴がつかない点や、安定したカメラアングル、闇の描写など素晴らしかっただけになんとも中途半端な印象で終わってしまった。 【ブッキングパパ】さん [インターネット(邦画)] 4点(2022-09-30 16:16:09) |
49.《ネタバレ》 よくわからなかったというのが正直なところです。 なんとも言えない、不思議な映画ですね。何度か見たらわかるようになるかしら。 スタイルがとても独特で、映画的な作りを排してるんですよね。 みんな素人臭い演技で、カット割も少ないから、その教室に自分もいて 彼らを覗き見してるかのような感覚になってくる。 【あろえりーな】さん [インターネット(邦画)] 5点(2022-04-04 19:19:49) |
48.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で30年ぶりぐらいに視聴。初見のときは画面が暗すぎて誰が誰だか判別できなかった記憶があるけど、今回はだいぶクリアな画面で見ることができた。 これが公募による脚本だというのもすごいですよね。脚本そのものがすごいのか、それを力技でまとめ上げた演出がすごいのか分からないけど、公募シナリオだからこそ出来上がった異常な傑作という気もします。 いびつな思春期の、まともに説明のつかない行動原理で動き回り、理性的なコミュニケーションも成立していない子供たちが、台風の夜に裸で踊り狂い、やがて生と死が循環するという物語。この映画の内容を「祝祭」と解釈したりもするけれど、ベルトルッチが共鳴したのも、イタリア人の中に残酷なカーニバルの感覚があるからかもしれません。狂気にリアリティがありすぎて、「シャイニング」や「犬神家」の悪ふざけのパロディも、たんなるパロディでは済まなくなってトラウマになりかねないほど強烈だし、10代でこの映画に出演させられた人たちは、精神に異常をきたすんじゃないかと心配にさえなるレベル。 とんでもない映画だけど、狂気をセンセーショナルな見世物にする制作動機が好きじゃないので1点減点。 【まいか】さん [インターネット(邦画)] 9点(2022-03-30 13:29:07) |
47.《ネタバレ》 初めて観たのは、私が登場人物と同年代のときだったから、自分の延長を見ているようで、なんか嫌だったんだな、きっと。 そもそも相米監督作品とは相性がイマイチだから、今回の再見も何の期待もしてなかったんだけど、それがまぁ、すごい映画だったんだわ。 台風、子供の頃は怖くて仕方がなかったけど、中学生くらいになるとワクワクして待ったっけ。ここ(家の中)は安全だけど、明日になったら外の世界や日常生活が吹き飛んでしまうのではないか?という淡い期待。 教室から見える台風直前の揺れる木々。極端に照明を落とした夕方の職員室の暗さ。学校に取り残される心細さ。壊れていく理性。大人の居ない世界。深夜のバカ騒ぎ。 主人公は三上くんだ。勉強が出来て、女の子にモテて、野球部で彼女も居て、優等生でもありバカも出来る。何不自由無い中学生活を送る三上くん。 そんな三上くんに、身近な大人の梅宮は「お前は15年も経てば今の俺になるんだよ」と言い放つ。「僕は貴方にはならない」と言い返す三上くんの出した結論。「死は生きることの前提」。死んだような大人になるより、今の自分のままの死を選ぶ。あぁいかにも中学生な結論。 翌月曜日の明の話から、三上くんは生きているんだと思う。けど、犬神家やっちゃって、社会的には死んだのかも。 中学生。まだ学力で分けられる前の、雑多な集団生活。まだ子供でもあり、身体は徐々に大人になりつつある。ヒョロヒョロの身体にブラジャーを付けた工藤夕貴ほか主演の子達、子供っぽさを残した彼らがとてもリアルに当時の中学生を演じている。清水の「おかえり」「おかえりなさい」「ただいま」。子供にもそれぞれの世界があることを思い出させてくれる。 思春期に起きる副作用。大人と子供の中間。今でこそ中二病という言葉でくくられているけど、この年代の難しさ、脆さ、危うさは、エヴァ辺りがしっかり描くまで、“そんな時期もあるから”と、適当に描かれていたと思う。 教室越しの揺れる木々は、彼らの内面のざわめきを表現し、職員室の暗さは彼らの将来に対する不安感を描いていたのかもしれない。 私の世代には直球ド・ストライクな、中学時代の“何も経験してないのに妙に悟りきった”こっ恥ずかしい過去を思い出させるトリップ映画。 【K&K】さん [地上波(邦画)] 9点(2022-03-13 17:28:54) |
46.情緒不安定な子供たちの話。感情移入できるところもあって、少し甘酸っぱい。 【クロ】さん [地上波(邦画)] 4点(2022-01-02 09:43:39) |
45.《ネタバレ》 いったい自分は何を見せられているんだろう?という感覚が終始つきまとう。年齢的なものなのか感性的なものなのか、何が原因かは分からないですが、個人的には意味不明でした。 【いっちぃ】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2021-11-12 19:53:20) |
44.自分には合わなかった。 言わんとする事はわかるけれど、気色の悪い作品に感じた。 学生たちも全員演技が下手で終始「中学生日記」スピンオフな感じ。 【movie海馬】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2021-09-17 17:43:33) |
43.こんなワケワカラン系の映画も昔はゴールデン洋画劇場とかで放送してて、うわっ、この映画、キライだなあ、なんて思ってました。意味ありげな思わせぶり、そういうのに当時はなんか、イライラしてしまう。しまいにゃ「これが死だ!」なんてブチあげられちゃうと、「いやいや、そんなのは『死』じゃないんじゃないの?」とイジワルの一つも言いたくなったり。 結局は、この登場人物たちと年代が近く距離感が近かったからこその違和感であり、反発・反感だったんでしょう。 そのくせ、そういや自分もまた、高校の時に真夜中にこっそり学校のプールで泳いだことがあったんだよなあ。 今では自分も親の世代になり、この作品を貫く不安定な危うさを、ある距離感をもって眺めるようになって。そう、自分が思春期の頃には、思春期が危ういなどと思わないもの。距離感があってこそ感じられる危うさ、ってのもある訳で。しかし一方では、やっぱり記憶の底をチクチク刺されるような感覚もあって、イライラしないと言えば嘘になる。 だから、大人だから正しく鑑賞できるなんてことは金輪際、言いたくない。あの当時の「そうじゃないんだ」という気持ちは否定したくない。 今では、「キライだけど、面白いんだから、仕方ない」ってなところ、でしょうか。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 8点(2021-05-30 17:23:48) |