59.《ネタバレ》 耳が聞こえないというのは、この映画では障害ではなく個性であるのだと思います。これは障害者の映画ではなく、いじめの映画でもなく、個人と個人についての普遍性を持った映画、なので障害やいじめに固執すると矮小化してしまう、そこを山田監督は真面目に丁寧に、バランス良く描いています。 それぞれの自分を守るための戦いが生む摩擦、その戦いから逃走する事で更に生まれる摩擦、ひたすら繰り返される闘争の傷とその痛みの容赦の無さ。映画はそこに真正面からぶつかっています。他者のパーソナリティを受け入れると共に自分のパーソナリティも受け入れる、それがどれだけ大変な事か、どれだけの傷を乗り越えてゆかなければならないか、その闘争について映画もまた表現の闘争を繰り広げている訳です。ゆえに受け手は見ていて古傷が痛む訳ですが、映画が戦っている以上、受け手もまたその戦いに向き合い、見届ける必要があって。 そんな映画の心を示す映像表現の数々が秀逸です。アニメならではの心象風景とリアルとの共存を端的に示す、顔の上のバッテンマークは勿論ですが、足だけ、顔が欠けている、誰かが収まっていていい筈なのに空いている、そんな不安定な構図が重ねられて、ほのぼのとした絵柄とは裏腹なヒリヒリとした痛みを伴う緊張感をずっと投げかけてきます。 同じ監督と脚本家、そして同じ京都アニメーション製でありながら、この作品とは正反対に位置しているとも言える『けいおん!』(摩擦は意図的に最小限に抑えられています)では複数のキャラのモノローグによって人称がブレて、流れがおかしくなってしまう箇所も見られましたが、今回はモノローグにも制限が与えられ混乱をきたす事がない点も成長が感じられます。 決して心地良い時間を運んでくれる映画ではありませんが(そもそも主人公のパーソナリティを受け入れられない人もいるかと思います)、そこに向き合う事に大きな意味のある作品です。その闘争の真摯な姿勢を高く評価したいと思います。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-09-26 21:05:11) (良:4票) |
58.《ネタバレ》 過去は変えられないし、やってしまった過ちも変えられない。 誰しもずっとある心の片隅にある。忘れたくても忘れられない償いようの無い罪悪感。 罪悪感を消す方法は人それぞれ。忘れようとする奴、誤摩化そうとする奴、都合良く解釈する奴、他人のせいにする奴、逃げる奴、死ぬ奴。 子供の頃の過ちは大人のように簡単じゃない。裁判や調停では片付けられないし、金でどうこう出来る問題でもない。 そして謝りも許しもしないまま時間が流れる。ただただ頭に消しようの無いモヤだけが残る。 本作の主人公石田の処遇は当然の報いである。しかし親が弁償した額とその後いじめられた事により誰よりも罪を感じ、それに苦しんでいる。 ヒロインの西宮は己の生まれ持った障害に向き合い、自身の境遇にも毅然と耐えて行く。しかし彼女は人との自然なコミュニケーションがとれない。どれだけ声が言葉や表情以上に感情を持っているのかこれでもかと痛感させられる。そして心の支えであったであろう祖母の死で糸が切れたように彼女を間違った方向へと導いてしまう。そして彼女自身も自分の犯した過ちに向き合って行く事になる。 昔のクラスメイト達もどうすればいいのかわからない。どうせだったら逃げ出したい、己の行動が正しかったと信じたいが、そんなわけがないと知っている。 西宮という人物を中心に彼らは己のしてきた事の取り返し方を手探りで探して行く。それはとても自己満足にも偽善的に見えるし、本当に彼女がそれで許してくれるなんてわからない。 本作は誰しもが持つ醜さ弱さが生々しくぶつかり合い、それでも不器用に立ち向かって行く人々が美しい映像でこれでもかと描かれる。素晴らしい作品でした。 【えすえふ】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2017-06-16 03:01:47) (良:3票) |
57.《ネタバレ》 重たい話は好きじゃないので、原作は(手近にあったにも関わらず)未読です。 さて、話のテーマとかかわる話を自分の経験から先に少し。 仲のいい同僚に聾唖の方がいたんですが、彼が言うには聾唖の家庭にもいろんなスタンスがあって「手話でコミュニケ―ションを取る派」の人もいれば、現実問題としてそれでは実生活で困るので「手話に頼らずなんとか会話でコミュニケーションするよう努力して一般の方と同じように暮らすのを目指す派」の人達もいて、同じ聾唖の家庭でもそのスタンスは結構違うんだとか。 で、その話をしてくれた彼の親は後者のスタンスだったらしいのですが、この映画の中のヒロインの母は多分そのスタンスの人なんだと思います。 だから娘や社会に厳しく接して普通の学校に通わせていた、と。 そのあたりの背景の描写は映画の中ではあまり語られてないと思うのですが(見落としていたらごめんなさい)、そういう事もあるんだと思って観た方が捉え方に幅も出るのかな、と思ったりしました。 で、映画本編の話です。 アニメに詳しい人が観れば「いかにも京アニらしい」で済んでしまうアニメ映画になっていると思います。 想像していたより重い話ではなく、なんか若い子がああだこうだと想いや苦悩をぶつけ合う青い映画。 途中途中の丁寧な描写はさすが京アニです。 問題なのはストーリーです。 最終的にはなんとなく大団円ぽくなるんですが、そこに至る過程が著しく不自然です。 ポイントになるのはヒロインが夜中に突然家を飛び出し橋に向かい、病院で目覚めた主人公がやはりなぜか橋に向かって二人が出会うシーン。 ここで2人が(なぜか夜中に)同じタイミングで橋に向かうのは(映画中の描写を見る限り)テレパシー、第六感、あるいはニュータイプの邂逅レベルの導きによるものであまりにも不自然、超ファンタジーです。 そこまでわりと地に足のついたストーリーを紡いでいただけにここの不自然さは目に余るばかり。 ファンタジーでなんとなく和解してさらに他の人ともなんとなくわかりあえて終わる… …いや途中までのうざい展開はなんなん? そういう思いが抜けません。 そこまではアニメ的なデフォルメはあるにせよ、シリアスな話でつないでいただけに急にありえないファンタジー話にされてもなぁ… とちょっと残念な映画でありました。 もっと軽いテイストの映画やコメディやラブストーリーなら全く問題ないんですけど、この映画のテーマであればファンタジー要素突っ込んじゃだめでしょ。 このあたりの展開が原作と同じなのかどうかが気になるところです。 【あばれて万歳】さん [地上波(邦画)] 6点(2020-08-02 21:49:59) (良:2票) |
56.《ネタバレ》 ずいぶん難しいことをやろうとしてる感じはするし、その試み自体は評価しますけど、作品として成功してるのかどうかは正直よく分からない。原作は読んでいませんが、そもそもヒロインが聾唖である必然性がよく分からないし、彼女が自殺を図ったり、最後に少年少女たちが和解したり、主人公が社会との関係を回復したりする展開に、どんな脈絡があったのかもよく分からない。雰囲気でごまかされた感じもあります。評価しにくいのですが、とりあえず表現の繊細さにちょっと甘めの7点つけときます。 まあ、作品としての出来不出来はともかくとして、生と死のギリギリの狭間で生きているような子供たち(…というより現実に死を選んでいる子供たち)に対して、何らかの表現の形を与えていくことは大事なことだと思いますし、表現だけでなく、そのような弱い子供たちに「生」の可能性を用意していくことも必要なことだと思います。アニメの主人公は命拾いをしていますが、ほんとうなら高いところから落ちて死んでいるのだし、現実の子供の世界でもそういうことが起こっている。そういう社会の状況に一石を投じる意味でなら、この映画の価値はあるだろうと思います。 ちなみに、この物語の受け止め方として、「自分の気持ちを伝えることって大切だよね」とか「他人の気持ちを理解することって大切だよね」とか「自分の存在を肯定することって大切だよね」という理解もありえると思うけど、それはかならずしも作品のメッセージにとって理想的な着地点だとは思えません。そもそも世の中には、自分の気持ちをちゃんと伝えられず、他人の気持ちもちゃんと理解できず、自分自身のこともろくに肯定できない人間が(たとえ大人であっても)たくさんいます。むしろ、そのほうが普通だといってもいい。問題なのは、それだけのことで(子供までが)自殺に追い込まれてしまうような社会のありようです。 異質な人間をいじめようとする排他的な連中も後を絶たないわけですが、彼らをどんなに啓蒙してみたところで、問題は何百年たっても解決しない。 この種の問題を、自分や他人の、つまり個々人の(まして子供の)「倫理感」の問題に還元してしまうのは、議論の方向性として間違っています。それは、どちらかといえば法学的・社会学的な問題です。その視点を逆転させるべきではない。すくなくとも子供の自殺という問題を、ひとりひとりの子供の「倫理感」のレベルに帰着させるような主張は、それがどんなにもっともらしく聞こえるとしても、つねに怪しい(あるいは都合のよい偽善だ)と考えるべきです。子供たちの生きづらさの問題は、結局のところルールやシステムの改善によってしか解決できません。ほんとうの意味で「悪い奴」がいるとすれば、それは個々の子供ではなく、既存のルールやシステムを変えることのできない(おもに大人の)連中のほうです。 【まいか】さん [地上波(邦画)] 7点(2020-08-01 08:22:27) (良:2票) |
55.《ネタバレ》 主人公の再生と成長を、緻密なプロットと繊細な心理描写で丁寧に描く。リアルで深刻な内容ながら、真剣で前向きなメッセージを描き切っており、一つのヒューマンドラマとして文句無しに上等。映画観た後に原作も読んだが、必要な要素を取捨選択してコンパクトに纏めあげた映画版の仕上りは、決して原作に劣るものではないと思う。漫画でも映画でもよいので、是非。 【Yuki2Invy】さん [映画館(邦画)] 9点(2019-11-21 21:23:35) (良:2票) |
54.《ネタバレ》 悔いて改める事によって前に進む、がテーマの様だ。いじめた側もいじめられた側も、自分のせいで相手の青春を壊してしまったと悔いて追い詰められる。苦難を乗り越えた上で和が発生し、良い話だ。 でもこれさ、何が凄いって西宮は石田を好きになってくれてるのに、石田の側には恋愛感情も性欲も芽生えていないという、さすが女性が描いた作品だなと感心する。自責の念ばかりに支配され、簡単にはなびかない骨太な主人公。男なら泣いている女を目の前にして抱き締めてやるくらいの器量は欲しい所だが、このドライさがこの作品の個性でもあるんだろう。(後日訂正:自分が生きるのを手伝って欲しいはほぼプロポーズに近いと思われるので、もしかしたら石田にもそういった気持ちが芽生えていたかも知れない。そう解釈するとなかなかにして微笑ましい展開だ。) しかしまあこの西宮という子は強いな。あれ以外にもいじめはあったんだろうし、神経質そうな母親と暮らしていたら神経も磨り減るだろうに。数多の苦難を乗り越えてきたにもかかわらず死を選んだのは、愛する石田の今後を思い自分はいなくなった方がいいという選択によるもので、せっかく石田と花火を眺めていい雰囲気の所を中座し何の躊躇もなく飛び降りるとは。この強さ一途さは驚嘆。一方の石田は弱いからいじめに走り、弱いからいじめられたトラウマから立ち直れない。本来ならハンデを背負い庇護される立場であるはずの西宮が強くいてくれたお陰で、弱い石田は立ち直るのだ。これまた一般の作品とは逆で、この作品の大きな個性と言える。 原作のハードな部分を上手く省いた上手い編集。かなりマイルドな作品に仕上がっている。この作品にまだ触れてない人には原作よりもこっちを先に観る事をお勧めしてもいいくらい。俺は原作が辛すぎて二度目を読む気になれないでいたが、この映画は何度でもいけそう。アニメ映画を見てこんなに泣けるなんて珍しい。×が取れる演出には心から感動した。 【にしきの】さん [地上波(邦画)] 8点(2018-08-27 02:39:42) (良:2票) |
53.《ネタバレ》 9点(=今年一番の作品)と評してよいかわからないし、賛否はありうると思うし、好き嫌いもあるだろう。デートムービーになるとはいいがたい。しかし、私にとっては制作発表からの期待に十分応えてくれた、すばらしい作品。聴覚障害とイジメという難しいテーマを扱いつつも、“かわいそう”という感情とは違う意味で心が揺さぶられる。本作は障害やイジメで悩んでいる人たちの気持ちが分かるというものではないし、それを意図した作品ではないだろう。その意味ではそれらを素材としてだけ使っていることに不満を感じる人もいると思う。もちろん配慮に欠けているわけではない。協力として日本ろうあ連盟の名前もある(これは原作でも同じ)。また、原作の緻密さを思えば将也と硝子の関係に絞り込まれているし、他の人物も改変や省略されている部分はあるから、物足りないとか不満を感じる人がいるのもわかる。しかし、アニメで二時間超という尺、かつ美しく映像化された本作は恵まれた作品だと思う。初見では原作(2巻以降)を読まないでいたが、映画として完結していた。また、原作に比べてエグい描写が弱まっている面もあるが、もし原作通りに1クールのテレビアニメとして制作しようとしたら、地上波では放送できなくなるんじゃないだろうか。劇場での上映に比べて、地上波というのは制約を受けやすいものだ。 【ネタバレ注意】小学生時代に聴覚障害が理由でイジメを受けていた硝子がイジメていた将也と再開し、やがて恋心を抱くまでになる。「イジメてたやつを許すのはともかく好きになるとか設定がおかしい」という批判も見たが、もともと硝子は将也を嫌がってはいなかったわけで、その批判は当たらないと思う。丁寧に書き込まれた街並み、硝子が告白に失敗して足をバタバタさせているシーンなど細部にまで神経の行き届いた表現、難しかったであろう早見沙織さんの演技、すばらしい面を挙げればキリがないほどだ。多くの人に鑑賞してほしいと思う。 【mohno】さん [映画館(邦画)] 9点(2016-09-21 22:36:20) (良:2票) |
52.《ネタバレ》 コミック版既読、ただし、細かいことはあまり覚えていない。重い内容で何度も読み返したい作品ではなく1回読んだだけのためですね。コミックとの違いは全然わかりません。本作もコミックでも、すごく違和感を覚えたのは、聴覚障碍者の西宮さんが一般の学校に転校してくる事でした、作品を見る限りはかなりの重度と見えましたし、とても一般授業についていけ無さそうなので彼女にとって良い選択とは全く思えなかったし、めっちゃ田舎ならしょうがないかと思えたけど、わりと都会っぽいしそういう学校無いの?(選択肢が無いの?)と思ったためですね。。ただ改めてwikiや55さんの解説によると、そういう選択をする方(ご家族)も居るとのことなので僕の知識不足でした。やはり実体験としてないので知識は得ても消化できずに居ますね。 西宮さんがきっかけかも知れないが、彼女が転校してこなくても同じことが起きたと思われ、問題の本質はそこでは無いのでしょうね。いじめ、標的のチェンジ、人間不信等、気持ちの良い話ではないので、やはりもう一度見たいとは思いません。何となく解決した感じですけど、きれいに解決してはいないし、モヤモヤが残るあたりにリアリティを感じました。社会問題と言えると思いますが、最後は個々でで頑張ったり解決するしかないのかな~とやっぱりモヤっとしました。 西宮さんの告白が伝わらなくて、ジタバタするのが切なくかわいかった。 作品台無しだけど伝わって一気にラブコメ展開でも全然ありでした(やっぱないなw) リゼロのナツキスバルと似てますよね、どこかで見たことあるなと思ったのは本作コミックかも知れないな。 もし「何度でも観たくなる作品」という項目があったら、0点にすると思います。。。 【ないとれいん】さん [地上波(邦画)] 7点(2021-05-06 18:31:15) (良:1票) |
51.《ネタバレ》 原作未読。将也の同級生=主な登場人物がみんな美男美女だ。 これには違和感を感じたが、唯一、永束くんだけはコミカルなカタチをしている。 イジメは複雑な問題で、解決の糸口を見つけるのは大変だから、ついつい『イジメは良くない!!』って簡単なワードに飛びついて、漠然と流してしまう。 実際のイジメ問題で面倒くさいのはグループの存在だ。植野と川井みたいのがもう何人かでグループを組んで、西宮をイジメたり佐原をハブったりが現実に起きていると思う。グループ行動だから、多少の良心の呵責が生まれても流されてしまう、負のスパイラル、悪意の連鎖が起きる。 そしてこの映画の高校編のような、当時のみんなで集まってイジメ問題を振り返る機会なんて、現実には無いだろう。 クラス会があっても、そもそもの西宮が来なかったり、佐原が帰ってから植野の愚痴を川井が聞かされるとか、そんなじゃないかな? 大事なのはイジメを各自が考えること。 この作品では、複雑なイジメをシンプルに考えられるよう、西宮(女子)のイジメに絞り、タイプ別に登場人物をスリム化したんだと思った。 ①イジメを受けていた子。②生理的に嫌いなことを隠さない子。③八方美人でピンチの時は自己保身に走る子。④イジメから助け続ける勇気がなかった子。 この4カテゴリでイジメ問題は成立しそうだ。 容姿による優劣や贔屓目を無くすために、みんな美少女に描かれたんだと思う。極端な言い方をすれば4つの記号。 高校編から将也への具体的なイジメ描写は無い。将也をイジメる側だった島田と広瀬は高校編ではフェードアウトし、真柴くんは(映画では)単なる一般男子代表だろうか?男子のイジメがテーマなら、きっと永束くんも美男子に描かれていただろう。 イジメという大きな問題を、シンプルに解りやすく、コンパクトにスリム化(=タイトルのshapeに結びつけて良いものか?)したのが本作じゃないだろうか? 自分の周りでイジメが起きたとき、この映画を参考に、自分は4人のどのタイプかを考えると、その時どうすれば良いか?が見えてくると思う。 硝子が将也に送ったメールがあまりに普通の子の書くメールだった。耳の不自由な硝子と健常者の将也が同じ条件になるメールって、ある意味魔法のアイテムだなって思った。 たまたま先日『Love Letter(1995)』を観て「メールやスマホって無かったほうが良かったんじゃないか?」なんて思ったばかりなのに。 【K&K】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-04-25 16:58:43) (良:1票) |
50.鑑賞後に違和感を覚えていましたが、何に対してなのかよく分かりませんでした。他の方のレビューでそれが「社会の問題なのに個々の問題であるかのようなすり替え」をされているような印象のせいではないか、と思いました。いつでしたが障害を持った方が「私は感動製造機ではない」と訴えていたのを思い出しました。社会の問題を「自己責任論」にすり替えて美しいオブラートに包んで誤魔化されたような違和感だったのかもしれません。 【果月】さん [地上波(邦画)] 4点(2020-08-01 18:43:07) (良:1票) |
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49.《ネタバレ》 見る前はあまり期待もなかったが、始まるや否や一気に見入ってしまった。内容は確かに障害者やいじめの問題を描いているが、単に差別やいじめは良くないというこういう作品にありがちな単純なメッセージよりも、根本的なテーマはもっと深いところにあり、とても重いが、同時にとても考えさせられる映画だ。小学生の頃、転校してきた聾唖者である西宮に対するいじめの中心人物だった石田がやがてスケープゴートになり逆にいじめられる側になるというのはリアルだし、それが原因で五年たって高校生になっても周囲と打ち解けずにいる石田の西宮に対する贖罪や、彼自身の成長と再生が本作のもう一つのテーマだ。そんな石田の目から見た同級生たちの顔には全体に×印がついているというのも、わかりやすい演出ではあるが、石田の心情をうまく表していると感じるし、そうしていることで、石田にとても感情移入しやすくなっている。そんな中であるきっかけで友達になってくれた永束と、西宮を必死で守ろうとする彼女の妹であるゆづるの存在は石田にとってどれほど心強く、大きな存在だっただろう。出てくる同級生や小学校の担任の教師、西宮の母は問題のある人物として描かれていて、とくに同級生は小学校から高校まででなにも変わっていないような連中が多く、中でもとくに川井と植野は見ていてイライラするほどだったが、同時にそこにリアルさを感じられる部分もあり、映像の美しさや作画の丁寧さもそうだが、人物描写も繊細で丁寧で、作り手が石田をいじめる側の同級生たちも決して完全な悪役のように描かず、どこか愛が感じられる描き方なのがいい。そしてもちろん石田という主人公をきっちりと描いているのが良かった。他人と交わり、完全にではなくても分かり合えることの大切さ、話すことの大切さ、そういうことをあらためて教えてくれる映画で、もちろん、賛否両論はあるのは当然のことだと思うけど、素直に見て良かったと思えたし、じゅうぶん見る価値のある映画だ。最後にこの映画で京都アニメーションの制作作品初めて見たんだけど、実際に作品を見ると、あんなひどい事件が起こってしまったのはあらためて非常に残念で哀しく思う。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2019-12-30 16:02:56) (良:1票) |
48.《ネタバレ》 ステレオタイプを避けたリアルな人達を描こうとしているようにも見えるけど、掘り下げきれずに表層的なので全然リアルには感じない。 あくまで頭の中で組み立てた人たちのようで生きた血が流れているようには感じないので、この中の誰にも共感できず惹かれない。 硝子が自殺を図るのも仕方ないと思えるような描かれ方をしていないし、それぞれのキャラクターの言葉も上滑りしているようで入ってこない。 嘘っぽく感じたり違和感を覚えるシーンも多くて、作品世界に入り込めなかった。 【飛鳥】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2019-06-29 23:39:58) (良:1票) |
47.《ネタバレ》 「障害者問題」や「イジメ問題」に、思春期の少年少女たちが葛藤する物語。とても良い映画です。みなさんこれを観ていろいろと考えましょう。人は皆複雑で簡単な生きものではありません。この作品から多くを学んでください。ということでめでたく各方面から賞賛を浴び、めでたく様々な賞を受賞。いやぁ~立派立派。理解できなかったり低評価する輩はきっと、純粋さが足りない可哀想な人達でしょう。かくいうわたしも多分、その輩の一人かも たしかにね、悪くない作品だとは思いますよ。すごく丁寧な仕事をしているな~と。でもなんだろ~な~、引っかかるんですよどうしても。聴覚障害を持つ硝子を、あまりにも自責の念が強いキャラとして描き過ぎなんじゃないかと。いくら植野にあんたのせいだ!って言われても、いくら将也が誤って友達を傷付けてしまっても、その後二人でいろいろと遊んだり、家に招待してお母さんの誕生日を祝ったり、とても自殺まで追い込まれるような、そんな追い詰められたようには見えなかったし、もし私がどこかで大事なモノを見落としていたとしても、それでもやはりあの自殺のシーンは唐突すぎた。これじゃあまるで、聴覚障害者は周りの人たちを不幸にするかのようで、どうしてもこの作品に対して愛情を持てない。一番酷いのは担任と学校、それと母親。あまりにもお座成りすぎじゃないですか。普通に授業中朗読させたり、硝子をサポートするような取り組みもしないし、大体子供が残酷な行動を考えもせずにするっていうのを大人であり親である母親が理解も示せず、現金を平然と受け取ったり、とにかく大人たちがあまりにも酷い描き方だ。そうすることで主人公、将也を孤立させようという演出なんだろう。て思ってしまう私はやっぱり、純粋さが足りないみたいです。 それから将也が中学生から高校生へとなる見せ方が説明不足で、てっきり中学生のまま話が進んでるのかと、文化祭のシーンまでずっと勘違いしちゃってました。 |
46.《ネタバレ》 虐めは良くない。それをただ見てる奴等も良くない。なんてそんな単純な作品ではない。描いてるテーマがやたら重たい。それだけに誰もが楽しめる様な作品でもない。かつては虐めっ子だった石田が今度は虐められる側になる。よくある話だ。石田の視線から向けられる同級生皆んなの顔に対し、ばつ印が入る。石田にとっての壁の象徴として描いてる。西宮以外で唯一、ばつ印がない。いや、初めはあったばつ印が取られた永束君の存在が石田にとっては大きな希望である訳で、西宮の妹の存在も大きい。この作品が凄いのはいつ自分も石田の様な立場になっても不思議でない。それを石田の視線からきちんと描いて見せている。あれ程までにかつては自分を虐めていた相手を受け入れようとする西宮が声を振り絞り「好き」と言うのを聞いて「月?」とか言う石田の馬鹿ぷりが笑える。それにしても出てくる同級生の女の嫌なこといったらない。障害者から見た立場、それを揶揄う連中、ロクでもない奴等きりだけどそれをあの顔にばつ印で表現する演出、この作品を通して言葉の大切さ、人との接し方など多くの事を学ぶことができるという意味でも、それだけで観る価値の高い作品だ。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2019-04-07 21:07:02) (良:1票) |
45.《ネタバレ》 美男・美女しか登場しないこの世界において一人だけ出来損ないのように描かれ浮いてしまっている緑色頭の永束の存在を受け入れるか否か 私は受け入れる。 そして悪童だった石田のメソメソとした辛気臭い更生の物語を受け入れるか否か 私は受け入れる。 逆に硝子との恋物語の成就に固執せずにエンドクレジット迎えた事にすごく好感得ました。原作では過去未来どうなっているのか分かりませんが そこは気にならないです。私の思いはこれで完結。綺麗過ぎる話にはまとめない。登場人物の一人一人が実に素直で人間らしさをさらけ出していて とても真摯で真面目な作品であったと理解しました。 だけどその中において、難点として、一人だけ気に入らない登場人物を挙げるなら、イジメの実態を把握しながら苛められてる子、苛めている者に対して何の対策もフォローもする事なかった小学校時代の担任教師、あの男だけですね。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2019-02-05 20:02:36) (良:1票) |
44.《ネタバレ》 転校してきた聴覚障害の女の子の気持ちがイマイチ理解できなかった感性の鈍いクソガキ小学生が、自らが苛められることにより自責の念でコミュ障のような自殺願望の強い高校生に成長?しているギャップ。何でも綺麗事で片付けようとする将也と硝子を取り巻く人たち、それはそれでリアルなんでしょうが綺麗過ぎてちっとも人間臭くない違和感。程良い共感にはギャップや違和感が邪魔でした。 【ProPace】さん [地上波(邦画)] 4点(2018-08-27 21:31:11) (良:1票) |
43.《ネタバレ》 原作未読。予備知識なしで見ました。高評価と聞いて居たのでちょっと期待しすぎたかな。 演出のあざとい所が嫌い。演劇すぎて現実感皆無。 物語として見ても表現が希薄で各キャラクターの行動が理解不能。 色々なキャラクターを出しているが全員同じ色しか出せてない。 主人公の石田は因果応報、自業自得。なのだが、あの小学生時代のキャラクターから いきなり虐められる立場になってそれをそのまま受け入れ鬱キャラに移行するには少し無理がある。 植野のみたいな考えの人も世の中に居ることは認めるが、だったらなぜ西宮や石田につきまとう。 つきまとうほど大事にしたい世界だったのならなぜ理解しようとしない。 あのキャラクターで最後まで行くなら、その理由付け的な描写が欲しいが それが無いから植野のような考えをこの話の作者は肯定しているように思えてしまう。 石田と全員が言い争うシーンでも少しは話し合えよ。わざわざトラブルを作ってる感が 見て居てめんどくさい。ただ、なんだかんだ言いながら飽きずに最後まで見れたのでそこだけ評価。 最近映画をみてもレビューをサボり気味だけど、わざわざ文句を書きにくるだけの動機にはなった。 賛否の否も無いよりはあった方が良いのかもしれないと言う事で4点献上。 【デミトリ】さん [DVD(邦画)] 4点(2018-03-21 04:33:13) (良:1票) |
42.《ネタバレ》 原作は未読。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」にストーリー構成がかなり似てますね。あの花の方は好きなんですけどこちらの方はイマイチでした。兎にも角にも石田が図々しすぎる。度を超えたイジメを繰り返しておいて自分もイジメられて改心したから友達になってくれ?はあ?舐めんなよって感じ。ここまで根性腐ってたら改心して素直になるってちょっとリアルではない。他のキャラクターも西宮さんの母親は無理に健常者のクラスに西宮さんを入れてイジメられる原因を作ってしまったのに、それを他者のせいにだけにしていることに疑問を感じますし、まともそうな川井さんもクラス中に石田の過去のイジメを暴露するとか大分イカれてる。植野は問答無用でイカれてる。西宮さんは西宮さんであのイジメでも笑顔でいられたハートの強さがあるのに、急に自殺を考えて飛び降りるって普通じゃない、彼女はそんなに弱くないですよ。話の都合で飛び降りさせられた感じが強くて嫌悪感半端ないですね。基本的に登場人物のみんな話の都合で行動してるためどこか壊れてる感じで怖いです。ちょっと受け付けない作品。 【映画大好きっ子】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2018-03-13 23:38:40) (良:1票) |
41.《ネタバレ》 <原作未読>悲しいかな、自分の心は随分汚れてしまったんだなーと思ったけど、正直に言うと大団円は受け付けない。自分が将也なら植野、川井にはまだ×がついてたと思う。看病してくれたとか関係ない。高校生にもなって難聴者の補聴器投げて遊ぶとか言いだす奴とあえて付き合おうとは思わないし、付き合わなくても人生に何の不都合もない。原作ではどうなってるのか知らないけど、映画だけで言うなら奴らまで救ってやる必要性を感じなかった。ただただ西宮さんや永束など今の友達を大切にしたいと思うだけ。もう一つ注文を付けるなら重すぎかなと…。観終えてしばらくぐったりしてしまった(自覚がないだけで体調が悪かったのだろうか?)。それだけハマって観た証左でもあろうが…。概ね原作ファンからの評判も良いらしく、確かに真摯に作られてる感じは受けたけど、上記のことから採点はこの程度で。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2018-03-10 11:03:22) (良:1票) |
40.《ネタバレ》 これは、つらくて息苦しい視聴体験でした。この手の話、自分の傷に触れないで見ることができた人いるんでしょうか?ワタシ、顔に×こそ浮かんでいませんが、周囲の人々ときちんと関わりを作れているのか、心許ないところがあります。ラストシーンの石田のように、憑きものが落ちるように世界がクッキリ見えることがあれば、そのときはワタシも泣き出してしまいそうです。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 9点(2017-11-19 14:15:26) (良:1票) |