87.《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。IMAX撮影されたノーラン作品は、IMAXで鑑賞するのが正しい見方ですね。 戦争映画は群像劇と結びつきやすい素材である上に、監督は幾重にも重なる物語を描き続けてきたクリストファー・ノーランだけに、現場や司令部を横断的に描く重厚な作品になるのかと思いきや、なんと話らしい話がないという意表を突いた作風となっています。本作はノーラン版『マッドマックス/怒りのデスロード』とでも言うべき内容なのですが、「ある地点からある地点へ移動する」という単純なストーリーに見せ場をてんこ盛りにした『怒りのデスロード』と同様に、本作も「救助を待つ兵士」「救助に向かう船」「敵を排除する戦闘機」という極めて単純な図式にまで各構成要素を落とし込んだ上で、冒頭からエンドクレジットまで絶え間なく見せ場が続くという男っとこ前な作風となっています。 しかしそこはノーラン、ただ単純な物語を描くのではなく、陸での1週間・海での1日・空での1時間を交互に見せ、ラストですべてのタイムラインを合流させるという恐ろしく難しいことをやっており、相変わらずその構成力には驚かされます。さらには、タランティーノ辺りみたいに「どうどう、凄いでしょ?」というこれ見よがしな見せ方ではなく、こういう難しい芸当をサラっとやってのけてみせるんですね。この余裕に巨匠の貫禄を見ました。 また、戦場での友情とか、個々の兵士の物語や、生きて帰らねばならない背景といった、戦争映画にありがちなドラマ要素がほぼ排除されているという点も、本作の特色となっているのですが、かといって感動的な要素がないというわけでもなく、目の前の描写の積み重ねのみできちっと感情的な山場を作れています。チャーチルの演説が引用されるラストはさすがに甘々すぎやしないかと思いましたが、それでも「良い映画を見たなぁ」という余韻を残してくれます。 【ザ・チャンバラ】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-09-09 15:00:45) (良:3票) |
86.《ネタバレ》 ノーランに1940年のダンケルクに連れて行かれました。 押せ押せのドイツ軍の猛攻から、とにかく逃げの一手のダンケルク。袋小路に追い詰められた鼠のごとく海岸に集まったイギリス兵。 彼らと一緒に息をし、なんとか故国に帰ろうとする自分がいました。物凄い臨場感です。陸にあっては爆撃に怯えて砂に伏せ、海にあっては魚雷によって開けられた横穴からなだれ込む海水に首まで浸かり、あるいは墜落した機体の脱出口が開かず猛烈に焦る自分がいました。106分間もう恐ろしくて恐ろしくて。海原に無数の民間船が見えた時は泣きそうになったもんね。 今作においてノーラン監督は主人公を設けず、柱となる人間ドラマもほとんどありません。出ている人物は皆モブシーンの群像のようです。ドイツ兵すら姿を見せません。雨あられと銃弾が降ってくる描写のみです。このことこそが監督の意図するところなのでしょう。エンドロールに流れる「ダンケルクに人生を左右されたすべての人々へ捧ぐ」が胸に刺さります。 あの場にいた全員が主人公であるけれど、でもその無意味なことに戦争の不条理で非道なことを思い知ります。 映像は美しく、大空や水平線の広がりに目を奪われます。紺碧に輝くドーバー海峡、そこに真っ黒に広がる重油のシミ。かぶさるハンス・ジマーの不吉な音楽。キューブリックの‶フルメタルジャケット”以来の、画と音で迫りくる不条理の極みでありました。 帰投する選択を捨て、同胞らのために燃料を使い切り捕虜となった英国空軍パイロットの立ち姿。お気に入りのトム・ハーディとあってはいっそう涙無くして見られません。 銃口交える戦闘シーンは無し、ただ逃げ惑う戦争映画ですがこれもまたあの戦争のリアルなのでしょう。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-12-01 00:00:48) (良:2票) |
85.《ネタバレ》 この映画には、括弧付きのリアリティと偽りの体験しか存在しない。 執拗に水面に置かれたカメラ、兵士の顔を映すクローズアップや主観的視点。緩急もなく、ひたすら意味ありげに鳴り続ける重低音と音が大きければ迫力があると言いたげな音響。CGに頼らない映像。ヒーローになる事はない名もなき兵士達。 あらゆるものが”リアリティ”という言葉を盾に、これ見よがしに主張し合う。 しかしそのどれもが、映画の画面から飛び出して来る事はない、表面的で小手先のリアリティ。 そもそも、少なすぎる戦闘機の数、観客のカタルシスを満たすが為に示し合わせたように一斉に集う小型船、エンジン停止した戦闘機が不時着する間に寸前までいた砂浜の兵士達がいきなり全員いなくなる、戦場なのにゴア表現が一切ないなど、映画内のリアリティラインすら滅茶苦茶。 体験という視点においてカメラは水面に水中に銃撃戦に度々置かれる。しかし、いざ人が溺れる瞬間、撃たれる瞬間、カットは変わり”カメラ=観客の視点”は直ぐにその場から逃げる。観客は痛さも苦しさも味わう事はない。観客は第三者として、特権的な立場を保ったまま、決して当事者になる事はない。 観客は陸海空を何にも縛られもせず、時制をも超越して自由に動き回る事ができる。そこにはリアリティも究極の体験(あるのは必ず安全圏が確保されている、アトラクションのような体験)も決してない。映画の最後まで、スクリーンと観客の距離が縮まる事はない。 そして、驚くようなショットも表現もない。 インターステラーを観た時も思ったが、この監督は、決められた映画という枠の中で、深く見られがちな主題の皮を被り、メロドラマを軸として、驚きも色気も危うさもない演出と映像で真面目な映画を作る監督なんだろうと思った。 余談だが、ボルトン中佐が怪訝な顔をして空を仰ぐ→カットが変わって敵機が迫り来るという度々繰り返される演出は、鈍重でしかない。 空戦の場面もカットを細かく割り、クローズアップ、主観、引きのショット、別場面を織り交ぜるので緊迫感に欠け、構図が分かりにくい。 【ちゃじじ】さん [映画館(字幕)] 5点(2017-09-22 01:09:54) (良:2票) |
84.《ネタバレ》 3点か4点、まあ、4点かな。確かにスケール感がないんだよな。40万人の撤退戦って感じが全然出ていない。陸一週間、海1日、空一時間の展開を上手く同時進行的に見せる作り方も全然分からなかった。でもまあ、リアリティはかなりあった。特に着弾音がすごい。でも、低空で侵入してくるハインケルを掃海艇や駆逐艦が全然対空射撃しないのは何で?理解できません。 この監督、CGが嫌いなのかな。多分スピットはレプリカ作って飛ばしたと思われ。そこに着弾する機銃の音とかすごい良かった。でも、40万人を小艦艇で撤退させるには海を埋め尽くすほどの小舟を映像化してほしかったな。なんか、30隻ぐらいしかいないんだもの。足りないよ。全然。 【たこのす】さん [インターネット(字幕)] 4点(2023-01-11 09:15:53) (良:1票) |
83.《ネタバレ》 戦争映画はかなり苦手です、話題になった作品も殆ど観てません。 でもこの「ダンケルク」今まで観た数少ない戦争映画とは全く違うものでした、これは敵を殺しまくって、ナントカ作戦で見事に勝利し満身創痍のヒーローがいるという物語ではなく、海岸に追い詰められた30万人の若い兵士たちをとにかく救おうとするのですね。まだ子どもといってもいいくらいの若い兵士ばかりなの。敵を殺して勝ってナンボじゃなく、人を救うことに徹底した戦争映画でした。ここが素晴らしいと思うんですよ。 戦争娯楽作品にしていないの、特筆すべきはここなのよ。 隠れる場所のない海岸の長い長い桟橋に武器も持たずにずらっと並んでいる若い兵士たち、そこへ空から攻撃されるという恐ろしさ、恐怖なんです。やっと船に乗っても攻撃される、重油まみれになり炎に襲われる。いったい何回沈没した船から脱出し大海原に放り出されたのか、怖いです。戦争の無意味さ、不条理がこれでもかと伝わる映画でした。同時期、カレーの部隊は救出されなかったという事実もあるのね。 空から見える海の美しさが一層悲しい。 本作とゲイリー・オールドマンのチャーチルの方と両方観るのもいいかもね。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-01-28 14:11:08) (良:1票) |
82.《ネタバレ》 30万人の決死の脱出作戦。 でもいまいち心に迫るものがないのは、脱出に失敗して沈没したりして命を落とした人たちの描写がライト過ぎるから。 上空からとらえた、海上で転覆しつつある船の様子とか、すでに転覆した船の上で座り込んでる兵士とか、そういうライトな描写で”沈没被害”を描くことが多すぎるのだ。 実際に魚雷が当たって転覆していく様子も描かれたが、いまいち兵士たちの悲惨さが描き足りない。 空爆されてボーンって兵士が飛ばされでも、兵士の腕や足がバラバラになって飛んでくることはないし。 イギリスの民間船に乗ってたあの17歳の少年の頭からの出血も、オランダの船の中に潜んでいた兵士たちが船の外から銃撃された時の出血も、ほんのわずか。 会場で放り出されて船からもれた重油にまみれて、そこに戦闘機が墜落して体に火がついてタイヘンだぁ~っていう場面の迫力もいまいち。 顔が燃えてケロイドになって蕩けていくみたいなCGを使うこともないので、火の向こう側で「うわ~」って顔してる姿しか見えないから、リアリティがない。 それじゃぁ代わりに、登場人物に深みがあって、感情移入できるかといえば、それもない。 イギリス人の民間船を出したオジちゃんも、ずっと桟橋に立ちっぱなしのケネスおじさんも、存在感勝負ってかんじ。 思い出せるのは、2つだけ。 上空からとらえた広大な海。太陽の光で美しく光る海。 そして、蛾みたいな模様のイギリスの戦闘機。 ノーランにしては珍しく、ノンヒット・ノーランの作品。 【フィンセント】さん [DVD(字幕)] 3点(2020-06-05 16:54:34) (良:1票) |
81.《ネタバレ》 一週間・一日・一時間という登場人物三人の時間軸をラストに集約させるという戦争映画では観たことがないストーリーテリングが、いかにもクリストファー・ノーランらしくて斬新でもあります。空や海上の天気は晴れているのにダンケルク海岸は悪天候気味なのは可笑しいなんて、ピント外れのツッコミを入れていた自分でした。ダンケルク撤退の映画というと、自分にはどうしてもジャン=ポール・ベルモンドの『ダンケルク』が刷り込まれているんです。ノーラン版『ダンケルク』のファースト・シーン、ドイツ軍が撒いたビラを拾うところは、完全に1964年版のファースト・シーンへのオマージュになっています。あの映画はフランス軍側の視点で描かれ厭戦感に満ちていました。でも若いと言ってもノーランもやっぱり英国人でして、救助に向かう側の「戦いはこれからが本番だ」というジョンブル魂を前面に押し出しています。考えようによっては、この映画はマイケル・ベイの『パール・ハーバー』みたいな過剰なヒロイズムで撮るという手もあったわけですが、まあ知的なノーランがそんなバカなことする訳もないですけどね。ラスト、やれることはすべてやり尽くして海岸に着陸して捕虜になるトム・ハーディの不屈の面構え、これこそ英国人という感じでした。 戦闘シーンでは、とにかくノーランのスピットファイア愛が凄かったというのが感想です。今までの彼の作風とは違い、CGを使わず実写に拘るという姿勢でしたが、これも良し悪しでしたね。海軍の軍艦になるとさすがに大戦時の実物を撮影に使うのは不可能で、登場する艦艇はもろ現代の軍艦です。せめてこういうところにはCGを使って、第二次大戦の駆逐艦を再現した方が良かったんじゃないでしょうか。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 7点(2018-03-03 22:04:32) (良:1票) |
80.2時間弱、休む間もなく延々と続く緊張感に、映画が終わって大きなため息をつく。長く水中にいて、ようやく水面に顔を出したときのような開放感。まさにダンケルクにいた兵士たちが味わったであろう緊張と安堵を、(もちろん比較にならないだろうが)少なからず感じさせてくれる見事な映像表現と展開力はさすがはクリストファーノーランと言うべきだろう。刻々と時を刻む不気味な音楽は最初から最後まで止まることはなく、終わりのない地獄を垣間見るようなそんな気分にさせてくれる。素晴らしい映画であることに疑いの余地はない。 しかし前回のインターステラーで見せてくれた圧倒的な創造性の前に、物足りなさを感じてしまうのも事実だ。クリストファーノーランならもっとすごいものが撮れるという勝手な期待を含めて、今回は8点としたい。 【ばかぽん】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-01-27 07:02:11) (良:1票) |
79.《ネタバレ》 3つの時間軸、3つの現場から描くダンケルク撤退戦。戦況に関する解説も最低限なので、限定されたシチュエーションのなかで展開する脱出劇として見るべきなのかな。個人的には、『ゼロ・グラビティ』系の映画と期待しての鑑賞。でも、それにしては、物語のなかのぐっとくるポイントが背景知識に頼ってる部分が大きい。脱出できる兵士の数、チャーチルの演説、民間船長の愛国心、帰還兵への市民の対応など、その感動は物語に内在したものというよりはイギリスの第二次世界大戦史の知識があってこそ増幅するもののようにも思えるし、その内容は人間性の根源に迫るというよりは、愛国心やらそっち系に振れていて、あまり深みを感じない。台詞や背景説明を極力廃して、シーンの描写だけで描いてきた物語の感動ポイントが、結局は背景知識がないと盛り上がれない、というのは単に戦略として失敗しているのではないか。その点、同様に台詞や背景知識ではなく、ほぼ映像描写だけで感動まで持っていった『ゼロ・グラビティ』は凄かったと再確認できる。あと、サスペンス自体の単調さもマイナス。敵軍に襲われて水没しそうになって壁やドアをドンドンする展開の繰り返しは、実際の戦闘がそうであったとしても、この凝ったシチュエーション映画としては、もうひと工夫できたのではないかと思える。異なった時間軸の交錯は面白い試みではあったと思うけど、時間軸が気になると映画への没入感を損なってしまう側面もあり、この映画ではあまり成功しているとは言えない。戦争なのに妙にキレイな映像も含め、映画のテーマ・素材とノーラン監督の得意分野が合っていなかったように思えます。 【ころりさん】さん [ブルーレイ(字幕)] 4点(2018-01-12 11:42:25) (良:1票) |
78.《ネタバレ》 クリストファー・ノーランて『メメント』の人だっけ。時間軸をずらす映画、久しぶりに観たけど、やっぱりこの手法はお話が単調なのを隠すためにしか見えないんだよなぁ。 ダンケルクの攻防戦は日本人にとっては馴染みがない上、誰が主人公という訳でもなく舞台があっちこっち移って入り込めませんでした。 そもそも戦争映画というのはどちら側の視点に立つかで見方ががらりと変わる。エンターテイメントらしくドラマティックに仕上げると、戦争のリアリズムから遠ざかってしまう。じゃあ感傷なんて省いて戦争の非情と理不尽を淡々と描けば、映画として面白くない。 結局のところ戦争映画はどう描いても虚構だらけじゃないのかと思ってしまう自分には、このジャンルは合わないのだろうと再確認しただけでした。 でも、どこの場面でも張りつめた緊張感は伝わりました。極限の人間を描き出そうという試みは成功していると思います。 【denny-jo】さん [映画館(字幕)] 5点(2017-10-22 21:29:32) (良:1票) |
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77.《ネタバレ》 ひたすら撤退、脱出シーンのみが延々と続く映画だった。 せっかく逃げられたかと思っても、敵の攻撃どかーん、振り出しに戻る。 でもなぜか飽きないし面白いんだよなぁ。 【おとばん】さん [映画館(字幕)] 8点(2017-10-09 17:51:16) (良:1票) |
76.《ネタバレ》 ■「プライベート・ライアン」以来、戦争映画といえばあのスタイルが王道みたいな感じだけど、その流れでこの作品を理解しようとしても意味がない。これはあくまで「時空の魔法使い」クリストファー・ノーランの映画である。 ■冒頭、主人公が独軍の銃撃から逃げていると、いきなり視界が開けてダンケルクの海岸についてしまった。もうこの時点で時空がねじ曲がった感が凄い。それを皮切りに、いつの間にか数日たってたり、エピソードごとの時間経過が全くバラバラだったり、と、とにかく時空を解体しまくる。 ■それはつまり、「ダンケルクというブラックホール」を描く試みではないか。この地に吸い寄せられるようにさまよい出たり、なんやかんやで中々脱出できなかったり、やっと脱出できると思ったら結局また戻ってきてしまったり。ダンケルクというのはそういう(ホラー映画にでもありそうな)ヤバい場所なんだということを、時空をもてあそぶことで強調しようとしているのだと感じた。 ■しかし、それらはやっぱり戦争の恐怖を伝えるための手段に過ぎない。マーク・ライランスが、「我々の世代が若者を戦場に追いやってしまった」というようなセリフを言うけど、このご時世に生きる人の親として、大変身につまされる。また、兵士たちが本土に戻って歓迎を受けるシーンでは、「よく戻ってきたなぁ」と私も一声掛けたくなった。大変技巧的な映画ではあるが、それにも拘らず、か、それが故に、か、分からないけど、ダンケルクという戦場の閉塞感が生々しく伝わってくる、骨太な戦争映画である。エンドロールでは涙が止まらなかった。 【麦酒男爵】さん [映画館(字幕)] 8点(2017-10-01 16:25:27) (良:1票) |
75.《ネタバレ》 戦争映画の新機軸を出そうとストーリー性が希薄なのはいい。3つのディメンションで時間軸をあえて混交させながらの構成も別にそれはそれで構わない。CGに頼らないポリシーを貫いた絵づくりはむしろ称賛に値するものといってもよい(IMAXで鑑賞)。にもかかわらず、本作に8点や9点、10点をつけようという気にはなれなかった。 どうしてなのか、自分でもきっちりわかっているわけではないが、どうもこの映画の存在意義そのものを制作者たちはどう考えているのか、というところが引っかかっているようである。安易に戦争をロマンやノスタルジーといったもので美化しようとはしない姿勢は見える(ストーリー性が希薄なのはそのためでもあろう)。では、見る者に何を伝えようとしているのか。おそらく一つには、戦争のリアルを再現し、戦争とは実際にはどういうものかを伝えようとしているのだろう。いま一つは、歴史に埋もれた名もなき人たちにもそれぞれ「ドラマ」があったのだと描き残しておきたかった、ということではないだろうか。 しかし、戦争のリアルを追求していても、それでもきっと相当美化されている。本物の戦争はもっとむごたらしく、汚いもののはずだ。「ドラマ」のアーカイブ化のほうも、そういう考えを否定するつもりはないが、かといって、どうしてあえていま大作映画にしなければならないのかがピンとこない。そして、「ドラマ」を残すという時点でやはり美化から免れない。どうも、そういうあたりに腑に落ち切らないものが残った気がする。 【delft-Q】さん [映画館(字幕)] 6点(2017-09-23 11:01:00) (良:1票) |
74.《ネタバレ》 ノーランの新作ということで鑑賞。率直に言うと、面白いとも言えないしつまらない訳でもない、微妙な出来。今回の映画はセリフの少ない「体験型映画」な造りをしている(最初の町中から海岸へ出た時のシーンなんかは、アルフォンソキュアロンの如く観客を映像内の世界へ招き入れる見事な演出!)ので、インセプションやインターステラーのようなものを期待していると肩透かしを食らうと思う。音楽と編集で緊張感のある息苦しいシーンが繰り返し繰り返し展開され、一難去ってまた一難なシチュエーションが単調で退屈。観ていて飽きてくるし、振り返ってみればそんなに音楽で煽りまくるほどの窮地じゃないやん…と思うシーンも多々ある。 見所はCGではなく「本物」を使った迫力のあるリアルな映像や音響と、それぞれの場所を1週間、1日、1時間と時間軸を工夫した編集の妙、それらに面白さを見出だせればいくらか楽しめるのだろうと思う…IMAXでも4DXでもない普通のシネコンで鑑賞したのが良くなかったのかもしれない……。当時はどのような心理的状況で人々が戦争をしていたか、というのが登場人物の言動で読み取れる部分もあるが、何しろ説明不足過ぎたり、各登場人物のミクロな視点(それもイギリス側のみ)の集積でしか情報が得られないため、救出作戦の大規模さが見えず、最後に33万人も救出したとか言われても「えっ!そうなの…へー…」としかならない。 とにかく色んな意味で観ていてしんどい映画だった。 【eureka】さん [映画館(字幕)] 5点(2017-09-14 02:11:27) (良:1票) |
73.《ネタバレ》 うーん、ノーラン監督は大好きですが、予告編等の内容を観た結果、若干期待できないような形で映画館に足を運びましたがやはりこれはあまり頂けませんでした。インセプションやインターステラーでめっちゃ効果的に使われていた音楽がこの映画では終始流れ続けてむしろ若干物語の邪魔してるくらいに思ってしまうこともありました。また、ノーラン監督のこれまでの映画ではまさに現実離れした設定(1時間が地球の7年とか)やビジュアル(町が折りたたまれるとか)によって、日常生活では味わえない世界をスクリーンを通して体感するという壮大なエンターテインメントという良さがあったのに、この映画からはそれがありませんでした。途中、何度か寝落ちしそうになったぐらいです。。。ただ一点思ったのが、戦争映画ではよく出てくる戦闘機ですが、1機が空を舞うだけで地上にいる人たちにとって如何に恐怖なのかはこの映画を観てよく分かりました。 【珈琲時間】さん [映画館(字幕)] 6点(2017-09-13 18:20:49) (良:1票) |
72.「インターステラー」の時もそうだったけど、やたら荘厳で重厚な音楽が終始流れ続けている為、何気ない描写、奥から味方と思しき兵士が近づいてくるだけという何気ないカットでも、もしかしてこいつ裏切って銃乱射したりしないよな?っていう不安が常に付き纏い、終始一貫して気の休まる暇がなかった。しかも、うるさすぎて逆に戦闘描写の邪魔だと感じるところなんかもややあったりして、たまには無音でもいいのにと思ったりなんかしました。映像面ではやっぱり迫力があったので、かなりの没入感でした。体験型の戦争映画ですね。 【ヴレア】さん [映画館(字幕)] 8点(2017-09-12 23:34:55) (良:1票) |
71.《ネタバレ》 生きていればいい。 戦争映画というとプライベートライアンのようなドロドロでグチャグチャなイメージで見に行くのもどうも億劫になる。 だけどこの作品は見たことも無い空気を描き出している。 ひと気の無い街から始まり、砂浜に並ぶ人の列、無数の人、水平線上にポツンとある飛行機。戦争という状況下ながら目に映る映像はどこか乾いて空気が流れており、淡々としている。絵画的にも見えるから不思議だ。 そして本作は最近の映画ではありがちな人体破壊描写はおろか、血すら一部を除いてほとんど写らない。しかし本作の溢れ出る迫力、音楽、臨場感は決して劣ることなく、逆に研ぎ澄まされた映像を体験できる。 ストーリーの構成は三つの視点で描かれているが時間の流れが違うので若干わかりにくさがありました。 また一つ一つの話にケレン味のあるドラマはあまり無く、ありのままの事実のような作りが逆に映像と非常にマッチしていたと思います。 戦争映画という僕的にはあまり惹かれないジャンルでしたがノーラン監督は今までの戦争映画にはない新しい世界を見せてくれました。 とにかくIMAXで観て本当に良かったです。 【えすえふ】さん [映画館(字幕)] 7点(2017-09-12 02:10:25) (良:1票) |
70.《ネタバレ》 「インセプション」「インターステラー」は自分がノーランの世界に追い付いていないと思っていました。 でも史実をもとにしたこの戦争映画では正直この監督の表現不足なのではないかと思ってしまう。 死体や血があふれる戦争映画が正しいとは思わない、ドイツ軍がほとんど出てこないのも意図的なのだと思う でも「3万人助かればいいと思ってる」というセリフから「33万人を救出した」という結果がこの映画では伝わってこない。 スクリーンからは当初の予想の11倍の兵士がどうやってドーバーを超えて助かったのか理解できないし、30万人というスケール感が描かれていない。 私が良作と思う戦争映画は個人にスポットをあててストーリーを分かりやすくしながら、何万人という兵士が母国の為に命を懸けるスケール感が伝わってきたものが多い。 やはりこの監督は自己満足で映画を作ってるとしか思えない、その波長に合うものだけが彼を評価するのだろう。 バーチャルな世界ではその表現を発揮できると思うが、戦争という題材には足を踏み入れないでほしい。 【かのっさ】さん [映画館(字幕)] 5点(2017-09-11 09:43:13) (良:1票) |
69.《ネタバレ》 IMAXで観た。ちらほら評価を見ていると期待外れなのかなという印象で観に行ったが楽しめてしまった自分がいる。 不思議な映画である。敵兵の姿も見えないし陰惨なシーンがあるわけでもない。それどころか人を直接的に殺すシーンってあったっけ?もちろん人が死ぬシーンはあるのだが。カメラは役者に近くIMAXで観れば腹に響くような重低音が続き、冒頭の銃撃からこれは観客に体感させる映画であることに気づく。ノーランらしからぬ上映時間の短さには途中で納得がいく。これが二時間半以上あったらさすがにしんどいだろうと。 大規模な作戦だが焦点は絞ってある。三つの視点から描く。だが同時並行ではない。時間軸をいじってある。そこら辺が「メメント」の時から小賢しいなあと思うところだがこの作品を普通に描いたら恐らく退屈になるのは想像できる。ずらして描き観客の理解を遅らせる。理解した瞬間に刺激が生まれる。この監督はどうしたら映画的な刺激を産み出せるかをいつも頭で考えている監督なのだろう。だからこの監督から純粋な面白さというものを味わったことはあまり多くない。だが凄いとは何度も思わせられるからいつも新作を観てしまう。三つの時間軸を終盤に集約させ畳みかける作りは器用そうに見えてかなりの力技に思えた。成熟や老熟とはまだまだ無縁な感じで未だ若々しい演出の監督だがだからこそ新作の度に注目され話題になるのだろう。 陰惨なシーンの積み重ねではなく生かそうとする行動の積み重ねで出来上がっているので戦争映画を観終わったとは思えない印象が残る。「生き残ってきただけだ」「それで充分だ」本当にそう思う。新感覚の戦争映画と言っていいのではないだろうか。 【⑨】さん [映画館(字幕)] 8点(2017-09-11 01:40:21) (良:1票) |
68.《ネタバレ》 スピットファイアが本当に美しい。 ラスト近くの着陸シーンには感涙。それまでの緊張感から一気に開放される。 大きく三つの視点と時間軸から描いた構成は、最初の内は多少混乱するものの、見事に集約される。 敵兵たるドイツ軍兵士の姿は殆ど見る事も無く、それが逆に当時の混乱を感じさせる。 また、イギリスの港へやっとの事で帰って来た英国空軍のパイロットが、大局を知らない陸軍兵士から「役立たず」と罵られていた時、そこで出会った老紳士に「私は(貴方の活躍を)知っているよ」と言われる場面。 この後の戦史で繰り広げられた「バトル・オブ・ブリテン」に繋がる重要で感動的なシーンであった。 感情の機微や、人の絆といった人間臭さの表現は、一切排除している様な演出でありながら、実はしっかりと観る者に、彼等の深層心理まで理解させてしまうノーランのマジックには驚愕。 戦争映画の新たな傑作! 【こた】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-09-09 23:28:23) (良:1票) |