17.《ネタバレ》 ここは何処までも限りなくそそり立つビルの48階層。何処にも出口のないその小さな部屋の中央には、食卓がすっぽり入りそうな大きな穴があいている。その穴から上を見上げれば、ここと同じような部屋が何処までも続き、下を見れば同じような部屋が何処までも続いている。そして各階層には、男女も年齢もバラバラな二人の人間。彼らは皆、その“とき”を心待ちにしていた。一日に一度、豪華な食事が並んだ食卓が上の階層から順に下へ下へと降りてくるのだ。当然、下の階層になればなるほど、食卓は食べ残しばかりとなり、100層を越えた辺りになればそこに食事が残っていることはほとんどなかった――。48階層で目覚めたゴレンは、同居人のトリマガシと名乗る怪しい中年男とともにここで暮らし始める。一か月ごとにそれぞれ住む階層が変わるというこの施設。上の階層の食べ残しをいただきながら、ゴレンはやがてここへ来て一か月が過ぎようとしていることを知るのだった。そしてある日、彼とトリマガシは違和感を抱きながら目を覚ます。気が付くと、彼らはなんと171階層に移動させられていたのだ。もはやここまで来ると食べ残しはほとんど残っていない。飢えと不安感から二人はやがて、底知れぬ狂気へと囚われ始めるのだった……。理屈では到底説明できない不条理な事態に陥ってしまった人々の極限状況を禍々しく描き出すシチュエーション・スリラー。まあ同分野の名作『キューブ』がヒットして以来、散々作られてきたアイデア一発勝負の低予算スリラーなんですけど、目の付け所が良かったのか、けっこう面白かったですね、これ。上の階層からの食べ残しをひたすら待ち続けるというこの設定だけで90分持たせたのは凄い。最初は豪華で美味しそうだったであろう食事が、どの階層でも全く美味しそうに見えない、そればかりかほぼ残飯と変わらないと言う描写が悪趣味すぎて大変グッド(笑)。下の階層の人々が極限の飢餓状態からカニバリズムに走るというのもベタながらアリ。また、死んだ同居人たちが主人公の幻覚として現れるシーンもけっこうセンスを感じました。ただ、本作の惜しい点は、肝心のメタファーが分かりやすすぎるところ。先進国と発展途上国、そして最貧国のそれぞれの経済格差からくる搾取構造を描いてるんでしょうけど、それが単純すぎて自分は物足りないものを感じてしまいました。いつだって犠牲になるのは弱い立場にいる子供たちだ、先進国はこの現実から目を逸らすなという最後のメッセージは、余りに説教臭くて好きじゃないです。とは言え、映像的には抜群にセンスが良く、アイデア一発勝負ながらストーリーの見せ方も巧く、映画としての完成度は普通に高い。この監督の次作に期待! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2022-07-30 03:31:10) (良:2票) |
16.《ネタバレ》 私たちの世界は、健康被害がでるほど飽食している人達がいる一方、全く食べ物がなく飢餓で死んでいく人達がいます。 うまく分配できれば世界中で飢えて死ぬ人なんかいないはずなのに…そしてそんな世界はいまだに暴力で満ちています。理想論を語る人もいるんですけどね、と。 うん、それはわかるんですけどね。 単純に気持ち悪いし面白くもない映画です。 内容についてマジメに考察している方もいるようですが、この映画、メッセージ性重視でストーリー上の矛盾は全く気にしてないようなので深く考るだけ無駄だと思います。 ラスト 子供は未来への希望。 そりゃそうでしょうね、うん。 それで? 【あばれて万歳】さん [インターネット(字幕)] 4点(2022-06-19 14:34:08) (良:2票) |
15.《ネタバレ》 予告編を見て「CUBE」のようなソリッドシチュエーションスリラーを期待して見ましたが、ちょっと作りが惜しかったです。 舞台設定と中盤くらいまでの展開は良いですね。異常な環境で極限状態に置かれた人間たちの行動を見るのは興味深かったです。エグいシーンも結構ありましたが、予告編の時点で示唆されていたので大丈夫でした。主人公たちが「この構造を変える」と行動を起こすのもワクワクする展開ですが、終盤のシナリオが杜撰だったように感じました。 【以下ネタバレ】 「プラットフォームに子供を乗せて戻す事が管理者へのメッセージになる」というラストですが、それは成立しないと思われます。食べ物が得られない下階層の人間たちがそこに留まるのであれば「同じ階層の相手を殺して食べる」か「死ぬ」の2択しかありません。ならば「一か八かプラットフォームに乗って上に行く」という3つ目の選択をした人は少なからず居たはずです。仮に100階層で食料が無くなると仮定すると、劇中で確認できる範囲だけでも毎月500人以上がその選択を迫られます。3つ目の選択をしたのが100人に1人だったとしても、毎月5人は上がってくるのです。なので、管理者は上がってきた子供に対して「また誰か来たぞ」といつもの対応(殺すのか戻すのか逃がすのかは分かりませんが)をするだけで、何のメッセージにもならないのです。このラストにするのであれば、「プラットフォームに乗って上がった者は今まで誰も居ない」事を示す必要がありました。 他にも未解決の疑問があります。 ・子供を探して降りて行った女性は何故子供にに出会えていないのか?(嘘だったのならあの子は何?) ・連帯感を育むための矯正施設との事だが、食べ物の量は皆で分け合っても足りておらず、「協力したところで解決できない」のでは施設の存在意義と矛盾している。 あえて未解決のままにして観客に考えさせるのであれば、「この施設は何のために作られたのだろう?」にするべきだったかと思います。 もっとマクロな視点では、この映画のメッセージも不明瞭です。「この階層構造は資本主義社会の縮図であって、それを皮肉っているのでは」とも思いましたが、良く考えると色々と当てはまりません。例えば現実の富裕層は、製品やらエネルギーやらエンターテイメントやらの価値を社会に生み出していますが、この場所の上層階は消費するだけで何の価値も生み出していません。この場所では努力をしても階層を上がる事は出来ませんし、富める者が益々富む事もありません。どの階層になるかはただの運であり、資本主義社会の皮肉とするには不適合でしょう。 と言うわけで、シナリオを楽しむこともメッセージを受け取る事も未解決でモヤモヤが多い感想になりました。起承転までを評価してこの点数です。 【alian】さん [映画館(字幕)] 6点(2021-02-02 12:10:58) (良:2票) |
14.《ネタバレ》 設定だけみると典型的なソリッドシチュエーションスリラーですが、内容的には『社会の縮図』あるいは『地獄』のメタファーなのは明らかです。言い換えるなら、この世はまさに地獄ということ。辛いっすねえ。そんな地獄の中で主人公は革命を目指します。みんなが思いやりを持って痛みを分け合えば、全員が救われると。その理念は崇高ですが、意に従わぬ者は容赦なく殺しました。要するに確信犯のテロリストです。正義の御旗を掲げている分、むしろタチが悪い気がします。しかし、ろくでもない神様に従うのも癪な話。おそらくメッセージ程度では無視されて終わり。聞く耳を持った神ならば最初からもう少し世界はマシなはずですから。いろいろ考えてみましたが、世界を変える手立ては思い当たりませんでした。システムに組み込まれた時点で打つ手無し。そもそも、そんな神様を創らないように民は注意深く生きなくてはならないのでしょう。 【目隠シスト】さん [インターネット(吹替)] 6点(2022-07-06 20:28:21) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 ぱっと見「CUBE」のようなシチュエーションスリラーのような感じも見受けられますが、上下無限に続く階層と謎原理で昇降する台座(プラットフォーム)の存在でこの作品が現実とは異なる世界だということがわかります。 劇中、散々聖書の一節が言及されているようにどこか哲学的。と言うより宗教的な隠喩が多く感じられる本作。 資本主義、と言うより人間社会全体の構図、絶対的な力を持つ管理者(神)、そして管理者の生み出した秩序の中でしか生きられない各階層の人々。 自助努力でどうにかなる場合もありますが、結局立場、状況など時の運。ある時は下層の者を見下し、またある時は上層の者を呪う。 その構図を変えようと大それた野望を持つも(ドン・キホーテのように)、結局現実はより闇深きモノであった。そして欲望のままに生きることを勧める最初のルームメイトの幻影はさながら人間を堕落させた悪魔の如し。 他者のことなどどうでもいい。極限の状態では自分が生きることが第一(現に劇中、「第五の戒(汝殺すなかれ)を破ったな」とセリフにある通り)。そんな極限の状態において、普通であれば真っ先に淘汰されるであろう矮小そして純真無垢な存在(子ども)を、上(天界)へ返すこと=キリストによる救済とダブらせているのだと思います。 、、、などと難しいことを色々と考えるのですが、そんな小難しいことに気を留めなくとも、次々に変わるルームメイトと状況、一体この建造物の構造はどうなっているのか?上/下はどうなっているのか?といった魅力的な謎や、所々に挿入される残虐描写など、ほぼ変わり映えのしないシチュエーションの中とても楽しめる作品だと思います。 【クリムゾン・キング】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-07-01 16:11:22) (良:1票) |
12.《ネタバレ》 非常に観念的な作品。 そもそもあり得ない設定なのですが、登場人物たちの「感情」は非常にリアルで、極限状態に置かれている彼らの「行動」はショッキングなものになりがち。 それらショッキングな部分を見どころにしないと映画として成り立たないので、アリではあるのですが、ちょっとグロい描写が多いため、人を選ぶ作品になってしまったかもしれません。 世の中の不平等、階層、富を享受する人間たちと飢餓に苦しむ人間たち、搾取する側とされる側。それらへの問題提起と、そこに置かれた人間のエゴイズム、生物として生き残るための殺し合い、足の引っ張り合い、侮蔑。 救いは宗教にはなく、心ある主人公ですら原罪を犯す。そこに批判的なメッセージは見当たらない。 原罪を犯しながらも、子どもを見つけるため、主人公と黒人の相棒は命を尽くす。 最下層で見つけた子どもは、「良心」のメタファー。 そして彼らは最上階へ「良心」を届け、役目を終えて死んでいく。 解釈はある程度観客側にまかされており、形而下的な描写で形而上的なテーマを描いているので、観客にきちんと伝わるのかはちょっと疑問に思いました。 深遠なテーマを冒険的・実験的に描いていてとても面白い作品ではあります。ぜひたくさんの人に観てもらいたい作品ですね。 【りりらっち】さん [インターネット(字幕)] 7点(2024-10-26 12:33:53) |
11.メタファー的な要素の強い作品は、感情移入ができないので苦手。 【飛鳥】さん [インターネット(吹替)] 3点(2024-06-26 15:25:36) |
10.《ネタバレ》 ホラー作品と思って見始めたけど、怖いというより、吐き気を催す気持ち悪さしかない。 残飯を食ってた頃はまだ耐えられたけど、死体を食い始めたらもう駄目だった。 それでも、結末が気になるので頑張って最後まで見たけど、気持ち悪さを上回る結論は得られなかった。 解釈を観客に丸投げする消化不良な終わり方で胃に不快感が残る。 【もとや】さん [インターネット(吹替)] 3点(2023-06-21 15:38:10) |
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9.ご馳走の載ったテーブルが上から降りてくる設定はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の短編・華麗なる晩餐のパクリじゃないですか。あっちの映画が社会の上層部の醜さを描いていてこっちは下側という違いはありますが、結局この監督には自分の好きなあの映画みたいな作品を作りたいというモチベーションしかなかったのではないでしょうか。スペイン語を喋っていることとドン・キホーテ以外はスペインらしい要素はなく登場人物の人種も多様で世界市場向けの商品としての最低品質は満たしてはいますがそれだけです。寓話として記号化されすぎた登場人物には共感することも難しいです。階級社会・資本主義・宗教、いろいろ意味深な要素を並べてもそれらに対する作者の立場が明確ではないので曖昧で陳腐な答えしか提示することができていないのです。 |
8.《ネタバレ》 ストレートに受け取れば、この作品は社会の構造的欠陥や資本主義とそこに生きる人間の堕落、歪んだ宗教観等々、いろいろと暗喩しつつ批判的或いは教訓的な色彩を加えているのかなと思いますし、恐らくは作り手はそのような趣旨をもって製作したのでしょう。 肝心の構造物については、登場人物の精神世界を具現化したと思えなくもないのですが(単に禁煙道場でマインドコントロールされている主人公の幻覚とか)、やはり単純に矛盾点をSF的に何でもありにしている実体としての構造物なのだと思います。 必要以上にグロく演出しているように思えて好感度は低いのですが、不条理系SF作品としては大きく破綻してはいないかと思いました。 ただ、邦題は「台座」で原題は「穴」というのは少々気になるところ。配給元としては生きるための糧を載せて各階層を上下する「台座」こそがこの作品を象徴していると解したのでしょうけれど、製作者はあくまでも各階層を良くも悪くも繋いでいるルートとして「台座」よりも「穴」をタイトルに選んだのではないかなと思いました。二者は似て非なるもの。邦題には違和感があります。 それからラストシーン。文字通りのどん底で見出した希望の象徴である幼児を、ゼロ階層に届けることが果たしてメッセージなのか。だとしたら、そこに至るまでのプロセスを考えれば随分と綺麗事過ぎるメッセージであり、恐らくは伝わらないでしょう。少なくとも理不尽な構造を改革するきっかけにはなり得ないメッセージではないかと。 そして、最下層で闇に消えた二人は何処に行くのか。地獄なのでしょうね。であれば、待っていたのは希望のフリをした絶望。救いようのない結末と思えました。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(字幕)] 6点(2023-04-09 12:08:54) |
7.物語の舞台にはかなり限定的な要素しか存在しません。 メタファーにしては設定が明確。 それなのにドキドキハラハラが止まらなかった。 驚かせるためのシーンはないように思えたし、 物理的にも精神的にも閉塞的な状況に没入し まるで当事者のように緊張していたからだろうと思います。 舞台要素が少ないからこそ 登場人物の様々な価値観が鮮明に描かれます。 誰に共感するのか、自分ならどう立ち回るのか、観る人次第で もしかすると緊張よりも苛立ちや絶望を覚えることもあり、 するとラストの感じ方が全然違うのかな。 等等考えていると、語りすぎないラストが良かったと思えてきました。 【えりまきとかげ】さん [インターネット(字幕)] 7点(2023-02-09 17:45:20) |
6.面白い設定だが、最終的に活かしきれていないことと、いろんな矛盾が気になりすぎる。 【simple】さん [インターネット(字幕)] 4点(2023-01-08 23:11:59) |
5.《ネタバレ》 惜しい映画だなあ。設定は最高。ラストに至るまでの展開もなかなかのもの。なのにオチが弱い。何となくそれっぽいんだけど、でも結局何だかよく分からないオチで、煙に巻かれて終わってしまった印象。これがスパッと綺麗に着地できていたら、きっとキューブを超える映画になっていたと思う。それでもインパクトの強さに免じてオマケで8点。 【54dayo】さん [インターネット(字幕)] 8点(2022-12-02 22:18:40) |
4.《ネタバレ》 階級闘争の暗喩だったのでしょうか。なんかピンとこない。■solidaridadという言葉が「連帯感」と訳されてたと思いますが、やっぱりピンとこない。しばらく前からよく聞く「絆」とかでどうでしょうか。「絆を利用している」とかのセリフだと、なんか腑に落ちそうです。「絆」って言葉、あんまり好きじゃないんで(意地悪)。■暴力シーンは当方ある程度免疫ができていますが、食べ物を汚らしく扱うシーンには耐性がなく、生理的にイヤ。やっぱりオラはこの映画好きじゃないなあ。■「子供が希望」みたいなラストシーンも、散々えげつないくせして、最後だけなんの帳尻合わせだよという気分です。 【なたね】さん [インターネット(字幕)] 3点(2022-08-14 22:03:04) |
3.《ネタバレ》 最初は映画キューブのような理不尽な場所に閉じ込められて地獄を見る映画のような雰囲気。ただ、同部屋の住民は2人だけだし、仕掛けと言えば、毎日、天井から降りてくるとっちらかった食べ物なんで、序盤はちょっと冗長に感じました。しかし、次第にこれはそーゆうタイプの映画ではなく、何らかの(例えば世界の縮図とか宗教の)メタファー的な映画やなーって感じるようになり、それにつれて、徐々に展開もエグくなっていき、目が離せなくなり、後半の下階層に降りるくだりなんかはドキドキして観てしまいました。特に。50階以降の階層のエグさや恐ろしさは、ヤバかったです。でもこーゆうタイプの映画って、最後に納得できた試しがあんまないってゆーか、この映画も最後、それで?って感じで、その辺はまたかーってなっちゃいました。 【なにわ君】さん [インターネット(吹替)] 7点(2022-08-05 21:59:44) |
2.《ネタバレ》 適当にAmazonで見つけて面白そうだったので鑑賞。 アイディア勝負でこれだけワクワクしながら見れたのはcube以来じゃないでしょうかね? いろいろ考え想像を膨らませながら非常に面白く最後まで見れました。 あの子供ですが16歳以下は入れないということはここで生まれたってことなんでしょうね。あんまり詳しいことは語られなかったですが、あの母親はずっと子供を探してたというよりは毎月リセットされるたびに子供の元に食事を運びに向かってた感じですかね。管理者側が子供の存在を知っていたのか、知っていて放置していたのかどっちにも考えられそうですが、最下層でセンサーが働かなかった描写があるのと管理者側の女性が知らなかったことからすると知らなかった可能性が高いのかな? ラストは上へのメッセージというよりは神への生贄という感じに見えました。 【映画大好きっ子】さん [インターネット(字幕)] 8点(2022-06-23 21:39:16) |
1.《ネタバレ》 娯楽作品として普通に楽しめました。 確かに、謎が解明されていないし色々と疑問もあるのですが、 あまり深く考えることなく、人間達がくりなす騒乱をただ眺めてるだけで存分に面白い。 社会の縮図とかいうよりも、単なる実験場みたいなものかな、 側から見て楽しんでいる観客がいたりして。 なかなかグロシーンやお下劣なシーンもあり、こういうとき自分だったらどうしよう、、、 と考えながら見ると尚のこと面白いです。 【あろえりーな】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-07-20 15:38:43) |