41.戦時中に作られた阪妻主演の前作は、当局の検閲により大幅にカットされたと聞きます。そのことが余程悔しかったのでしょか、作り手のこの作品にかける意気込みと愛情が充分過ぎるほど伝わってきます。美しいカラー映像を彩りのあるメロディーで包み込んだタイトルロールからしてヤラれてしまった。監督稲垣浩の手作り感に満ちた演出が冴えに冴えており、存在感たっぷりの無法松を演じた三船敏郎に名女優高峰秀子のしっとりとした演技、そしてカメラワーク、音楽、セット美術ともどもすべてに於いて申し分ない。光陰矢の如しというか、過ぎ去る年月を人力車の車輪でもって表現するシーンは抜群に美しく、監督稲垣浩のセンスの良さを遺憾なく発揮している。松五郎が万感の思いを込め祇園太鼓を打つシーンは大いに盛り上がるわけですが、個人的には運動会のエピソードが好きですね。松が子供の頃、唯一大泣きした話をぼんぼんに聞かせた後、パッと開放的な運動会の場面に切り替わる。松が徒競走に飛び入りする。「松、負けたら承知せんぞ」と酔客から声援が贈られる。ぼんと夫人の期待に応えて一等になる。ぼんは小躍りして喜び(この時の笑顔が最高にイイ)、夫を亡くしふさぎがちだった吉岡夫人の瞳までがキラキラと輝く。松を中心にぼんと奥さんが唯一三人一体となった場面で、この瞬間、松はぼんにとって父親以上の存在となる。この感涙を誘う一連のシークエンスが、この映画のヤマ場でしょうね。ラスト、貯金の話しも泣かせてくれた。名作です。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-12-17 15:54:57) (良:2票) |
40.《ネタバレ》 「無法松」というからにはもっとハチャメチャな人物を想像していたのですが、意外とまともで気骨ある人物だと思いました。その分、ストーリーは平坦に感じてしまったのが残念です。團伊玖磨の音楽も、変に力が入っていて耳に障る感じがしてしまいました。高峰秀子演じる吉岡婦人は、残酷な人だと思ったのは私だけでしょうか。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-10-05 22:09:55) (良:1票) |
39.《ネタバレ》 <阪東妻三郎版は未見> 敏雄(ボンボン)が幼かった頃の楽しい日々から一転して、敏雄の「親離れ」と「松五郎離れ」によって寂しくなっていく二人の気持ちがよ~く伝わってきた。ボンボンじゃなく、若大将でもなく、吉岡さん… 「他人みたいだ」、と元気がなかった松五郎が忘れられない。明治~大正時代だとまだ身分の違いがあったようで、おかしな事ではないだけに切ない。そういえば奥さんも自分の息子なのに「さん付け」で呼んでいた… 家督を継ぐ者ってそういう扱いだったんだよね。そんな時代の叶わぬ恋を三船敏郎と高峰秀子の共演で描く豪華な一作。松五郎の死に場所は一番楽しかった頃の思い出、運動会が行われた学校だったと…。涙を誘う。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-16 23:05:52) (良:1票) |
38.《ネタバレ》 未見にもかかわらず、何故か観たようなつもりになっていた映画っていうのが自分の中に結構あるんですが、これもそのうちの一本。オリジナル=モノクロ阪妻版は大昔、子供の頃見た記憶があるけど、あまりに昔過ぎてよく覚えてないや(笑)先日観た川島雄三監督「わが町」(8点)で辰巳柳太郎が演じたタアやんと同じく、いまやほぼ絶滅種となった「正しい日本快男児の美徳」標本のような魅力的な男の一代記。画面作りや演出も、非常に厚みがあって丁寧で感心。内務省の介入で肝心なシーンをカットせざるを得なかったという、オリジナル版への稲垣監督の熱き想いが伝わってきます。憧憬の対象、吉岡未亡人が高峰秀子っていうキャストも文句なし。今の感覚だとこの未亡人が都合のいいように松五郎を使っていると感じてしまうのはどうしても無理からぬ事だが、明治時代ならこういう身分の格差はごく自然的なものだったはず。ジレンマに懊悩する三船の無償の献身愛っぷりに、とにかく自分は泣かされました。多分、序盤ちょっとだけ出てきた吉岡大将=芥川比呂志の男っぷりに惚れたせいじゃないかなあ・・・。あの旦那がたいした事のないフツーの亭主だったら、あそこまで未亡人に対してストイックな態度を取らなかったんじゃないかと自分は思うんですよね。それだけに花火の夜、遺影の前でうなだれる、彼の苦悩の大きさが実感として観客にも伝わってくるわけです。「正しい日本映画の美徳」が顕著に現れた秀作として高く評価させて頂きます。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-03-07 11:30:47) (良:1票) |
37.損得の埒外で人のために尽くして生きることが出来たなら、それこそが仁義である。車屋であろうが軍人であろうが任侠であろうが八百屋であろうが、である。言葉で評する事すら下卑てしまうが、その「仁義」の体現といっていい「無法松」の美しくも不器用な生き様に、泣いた。泣けた。という事は、一応、自分の中にも無法松のDNAらしきモノが存在しているという証拠なのか。ならば、「一生」を生き抜くという素晴らしさ、ストイックさ、美しさに、少しでも近づきたいと、思った。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 10点(2007-04-07 22:57:50) (良:1票) |
【ケンジ】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-12-25 22:03:34) (笑:1票) |
35.祭りの太鼓はすばらしい。太鼓の醍醐味が味わえた。 松五郎の晴れ舞台。ここに何故、吉岡の奥さんが居合わせないのか? この男(松五郎)の心情は痛いほど理解できるが、現代の若者にはいかに・・・ 学生の頃、高峰秀子が大好きであった。恋心か否かは今では判らない 今ではそこまで感じないが・・・ 【ご自由さん】さん 8点(2004-06-19 20:10:57) (良:1票) |
34. このセルフ・リメイク版も名作なんだけど…矢張り1943年のオリジナル版には残念ながら遠く及ばない。阪東妻三郎の豪快で奔放な松五郎を観た後では如何に三船が熱演しようと所詮二番煎じの域に止まる。ただ、オリジナル版は戦時中の検閲カットに加え、GHQからのカットも加わってズタボロにされたものなので、コレ(58年版)なくしてはカットされた箇所も分からない有様なのも又事実。どちらも名匠・稲垣浩が同じカット割りで監督しているのが大きかった。監督も二度の検閲カットが余程無念だったのだろう。小津安二郎監督の悪口を言うつもりはないが、彼の戦前・戦中の監督作が殆ど無事だったのは、ぶっちゃけた話フィルムが擦り切れるまでロングランされる程の人気作ではなかったため、松竹大船の倉庫に保管されて埃を被っていたお陰。これも又皮肉な事実。「名作」って何だろう? 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-19 22:52:44) (良:1票) |
33.《ネタバレ》 期待値が高かったせいで逆に。確かに胸にぐっと来る部分はあるものの。きっぷのいい人を際立たせるための演出がえぐい、しつこい。これでもかこれでもかと。わかったからいやもういいって。 【ほとはら】さん [DVD(邦画)] 5点(2023-06-19 20:24:20) |
32.《ネタバレ》 この作品も良いが、未見の阪妻版の方が期待大。阪妻にあって、三船が弱いもの。おかしさ、切なさ。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 7点(2019-01-18 19:45:36) |
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31.《ネタバレ》 これが九州男児なんですかねえ。東京下町の寅さんを見慣れてると、乱暴で粗雑な所がちょっとアレで粋や美が感じられないですけど。『シェーン』や『遥かなる山の呼び声』のように立ち去るわけでもなく、小倉に留まり続けて少年から青年まで成長を見守り、夫人に心情を吐露して死んでしまうストーリーはあまりにも切ない。太鼓のシーンはインテリ先生への対抗意識、己の存在のアピールなのかなと考えると人間臭さも感じます。全体的に駆け足でもあり、心情表現が弱く、やや人間の機微が感じられないところが難点かな。それにしても奥さん鈍感にもホドがあるだうよ。歌子(吉永小百合)のような女子大生じゃないんだからさ。 |
30.抱いていたイメージとちょっと違ってましたがなかなか面白かったです。松五郎に無理なく感情移入させてくれる三船は見事ですが、当時の映画に子役の自然な演技を期待するのはやっぱり無理なんですね。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-13 23:02:52) |
29.《ネタバレ》 前作「阪東妻三郎」の無法松から15年。 バンツマ以上のエネルギーと荒々しさを持ち合わせた三船敏郎が松五郎を演じきった。 いつも一本調子などなり声で叫ぶ(そこが良いのだが)三船が、今回は方言も見事にまったく違う三船を見せてくれた。 悪党から正義感、屈強な無頼漢から優男まで動きで魅せてきた三船敏郎の真骨頂とも言える作品の一つ。 表向きは博打に興じる暴れ者、本当は女子供に優しい繊細な男。その二面性が見事。 そして極めつけの祇園太鼓! 太鼓も上手な三船の腕が唸る唸る! あばれ太鼓のように太鼓を打ち鳴らす様は迫力満点。 園井恵子と違った切り口で良子を演じきった高峰秀子、涼子の夫の小太郎に扮する芥川比呂志、撃剣師範役の宮口精二の演技も良い。 前作が不本意なカットで泣かされた稲垣浩にとって、今作は前作以上のパワーと映像(+カラーとシネマスコープ)で完成させられただろう。 これほど血が騒ぐ日本映画は滅多に無い。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 19:00:37) |
28.阪妻を見た後、再度三船を見る。(最初に見たのは何年も前) ほとんど同じ内容なのに阪妻よりずいぶんわかりやすい。三船の方が少々荒くれだがその方が原作に近いのかも。小倉祇園太鼓のシーンは実に鮮やかだし、終盤の松五郎の思いも十分伝わってくる。しかし阪妻より作りすぎかも・・・。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-10-24 21:04:18) |
27.松五郎と吉岡の奥さんとの関係って要するに、ヨハネス・ブラームスとクララ・シューマンみたいなもんですな(笑)。とは言っても、不器用なところ以外は、全く違うキャラクターですが。こういう「武骨で豪快で気風が良くて、でも奥手」というキャラは、本当に憎めない(これでモテモテだったら、許せない)。内容的には、短いエピソードの積み重ねで、いわばオムニバスと言ってもいいくらいのもの、しかも長い映画ではないので、その点、やや軽い印象はあるのですが。でもそれを補うのが、若き日から年老いるまでの松五郎を全身で演じ切った三船敏郎で、流れる歳月を実によく表現しています。そしてまた、映画において、「主人公の内面」なんて実はどうでもよいということ、そんなものを表現するのが役者の仕事ではない、ということ。「内面」が宿るのは、登場人物の中ではなくて、映画そのものの中であることが、よくわかります。撮影も見事ですね、時代を表現する屋外の光景もいいですが、屋内シーンのセット撮影は、何だか、空気が澄んで感じられるような。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-06-17 10:23:39) |
26.ず~と、観たかった作品、やっとBSで鑑賞..思った通りの作品でした..無骨な松五郎を上手く描ききっていました... 【コナンが一番】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-22 12:57:38) |
25.《ネタバレ》 エピソードを連ねた構成なので、途中でちょっと飽きてしまいました。テレビドラマ向きの題材でしょう。作品としては優れていると思います。ポスターの使い方などうまいです。三船敏郎の「野性的でありながらシャイ」というキャラクターが生きています。ただ、高峰秀子はベストな配役だったかどうか……。最後の泣き崩れるところはさすがにすばらしいので、そのための出演だったのかな? 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-11-03 11:22:38) |
24.せつないですなー。宇和島屋のおとら、いい味だしてるなー 【ホットチョコレート】さん [地上波(邦画)] 6点(2011-05-25 20:41:23) |
23.真っ直ぐでさっぱりした男松五郎に、時に楽しく時に切なくさせられました。運動会や太鼓のところは名シーンだと思いますが、印象に残ってるのは序盤にあったシーンで、軍の偉い人を乗車拒否して棒で頭をどつかれて痛がる松五郎が子供のようで可愛くて笑えました。 【さわき】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-20 12:39:57) |
22.《ネタバレ》 運動会のシーンでも、太鼓のシーンでも、その底にじっと抑えた慕情と悲哀がそこはかとなくにじみ出ている。そこがいい。だから、ポスターのシークエンスが、何ともいえない重みをもって静かな光を発している。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-05-17 23:24:57) |