35.「美女と液体人間」、「電送人間」では警察と変身人間の攻防を中心に描かれていたが、この「ガス人間第一号」は、それよりも実験台にされてガス人間になってしまった男と彼を愛する一人の女の悲しいラブストーリーに重点が置かれており、深い人間ドラマが描かれる秀作になっている。正直言ってここまで深い内容だともはや完全に大人向けの恋愛映画である。考えてみれば本多猪四郎監督は最初の本格的な空想特撮映画である「ゴジラ」でも芹沢博士と山根恵美子の悲恋(一応、三角関係ではあるが。)を描いており、ここにこの監督の本質があるのだなと改めて感じる。それにしてもラストシーンは思わず泣けてきた。出演者の中ではガス人間水野を演じた土屋嘉男、特撮作品には珍しい八千草薫はもちろんだが、藤千代に仕える爺やを演じた左卜全がとくに素晴らしく、彼の演技がよりいっそうこの映画の完成度を高めているといっても過言ではないだろう。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-12-27 01:52:19) (良:5票) |
34.ガス人間てっゆういかにも小学生が考えそーな題名につられて観てみたんやけど、脚本は小学生には書けない深い脚本やった(失礼)。でもガス人間ってゆーのはありえへんし、ガスになってしゃべれるわけないんやけど、その辺は荒唐無稽そのもの。でも、この映画はそんなところはあんまり気になれへん。その他の描写が意外とリアルなんで。例えば、ガス人間なんてゆう無敵の人間が現れた時の世間の反応とか(犯罪を犯して全てガス人間のせいにするため犯罪率がふえちゃう)、無敵になったゆえに(自由に普通の人間にもなれる)その能力をいかしてやりたい放題する男のあんちょくな考え方とか。映画は冒頭、銀行ギャングを警察が追いかけるシーンでスピーディーに始まる。ただ、その後は派手な展開を期待するとちょっと肩透かしかもしれん。前半はサスペンスなノリやけど全体的には淡々としてるし。後半、特にガス人間が登場してからは、彼と衰退する家元を中心に描くラブストーリーやし。しかもラストは藤千代(八千草)の舞をじっくり見せられるんで、そーゆうのを観るのがダルイ人にはちょっと退屈かも。ガス人間と警察のテンション高い攻防を期待する人にも不向きかな。しかし人間ドラマは味わい深く不気味ですごくくるものがある。こんな秀逸なドラマが古い特撮映画の中に埋もれてたやなんて。今の時代の映画にも全然負けてないと思うし、特撮すらも、そのちゃちさがむしろ味わい深い。特別な力を手にいれたことで、なんでもできるよーになった屈折した男。社会的に孤立化し夢を実現できない美しき家元、そこに愛があったかどーかは見る人にゆだねられると思うけど、「美女と野獣」が生ぬるいと思う人には、ある意味「美女と野獣」リアルバージョンのこの映画オススメ(美女とガスやけど)。最後の展開は警察のやり方がちょっと非現実的やけど、怖いくらい印象にのこった。最後のシーンを見て、この映画の評価があがった感じ。幸せを手に入れ笑う男と覚悟を決める藤千代と爺の悲しい顔が映画を観終わってもしばらく残った。ちなみに藤千代の舞の題名が「情鬼」。ガス人間はいわば「蒸気」。こーゆうセンスはありがちやけど好きやねん。 【なにわ君】さん 7点(2004-11-02 21:51:36) (良:4票)(笑:1票) |
33.《ネタバレ》 トンデモな題名に興味そそられての鑑賞。オープニングから「これは当たりかも」寄せた期待を裏切られる事無く最後まで一気に見終えました。破滅に向かって突き進む八千草薫と土屋嘉男の恋模様を黙って見守り最期まで付き従う左卜全、3人共々忘れ難い名演です。変身の件は添え物に見えて別にガス人間で無くてもいいような気がしますが、模倣犯が続出する事に対して警察が抹殺決断に至る展開は見事で、やはり必要なキャラクターだったのだと思います。時間が経って湧いてくるツッコミどころも鑑賞中には八千草薫の凛とした女性像の前にはカケラも浮かびませんでした。題名とのギャップが激しい名作です。 |
32.《ネタバレ》 東宝の変身シリーズを製作順に観ると1作ごとにレベルアップしているのが良く分かる。今作は荒唐無稽さがなりを潜め、特撮の先にあるメッセージが感じられる作品です。狂信的な科学者の実験台にされて、肉体をガス化できる能力を持ってしまった男。これまでのシリーズに倣うなら、科学者への復讐のストーリーとなるところをサラッと流します。このガス人間は銀行を襲い、現金を強奪しますが、やがて明らかになるその動機は復讐ではなく一途な愛情でした。落ちぶれた日本舞踊の家元を助けるために、主人公は能力を使います。人を殺してまで。ガス化する体では常人の幸せは望めないという覚悟は、まるで渡辺淳一が脚本を書いているような破滅に向かう純愛としてボルテージを上げて行く。それまでの東宝特撮映画と比べて明らかに異彩を放ち、ガス化する人間を見せることはオマケと思えるほど正統なサスペンスです。家元を演じるのが八千草薫。この種の映画には不似合いな空気を持つ方ですが、あの美しさの説得力はこの作品に必須でした。主人公が意識的にガス化と実体化を使い分けられると気付くシーンや、ガス人間の名を騙った犯罪の増加といった描写も、特撮映画にリアルな背景を与えています。主人公は数多の映画・ドラマに出演した土屋嘉男。生きる意味を女性への愛へ振り絞ってゆく様が抑え気味の演技から滲み出ます。今作は彼の代表作だと思う。スカーレット・ヨハンソンはこの頃の八千草薫さんに良く似ていますな。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-12-15 23:11:23) (良:2票) |
31.《ネタバレ》 ガス人間?何やタイトルだけ見ると下手なB級SFホラーものかと思うが、とんでもない。これは明らかに恋愛映画だ!それもそこらの生温い恋愛ものなんかとは全く違う。人間の持っている矛盾、身勝手さが描かれている。あの博士の自己満足の為だけに犠牲にされてガス人間となってしまった水野(土屋嘉男)の怒り、その怒りの先が自分をこのようなガス人間へと変貌させてしまった博士を殺し、そして、自分をまるで何かの見世物のような眼でしか見ることの出来ない周りの者への怒り、その怒りが観ていてもよく解るし、誰だって、水野と同じ立場になったとしたらきっとそうする筈です。そんな中で出会った一人の女性、八千草薫演じる藤千代との恋、自分がもう普通の人間でないことを知り、それを藤千代にもばらすあの牢屋の場面、藤千代の水野に対する思いが伝わる最後の能の場面、観客の汚い野次にも屈することなくガス人間である水野の為に藤千代が踊りを見せる場面、そんな踊りの横で黙々と太鼓を鳴らす左卜全の老人の姿もやたらと悲しい。例え、恋する相手がガス人間だろうと最後の最後まで踊りを辞めずに死んでいった藤千代こそ本物の人間とてしの愛情を感じることが出来る。タイトルだけでつまらない作品だと決め付けて見ない人がいるのではないかと思いますが、これは間違いなく人間ドラマとして、また恋愛ものとして見応え十分の作品です。個人的感想としては出来ることなら藤千代とあの老人の二人だけでも最後は助けて欲しかった。いや、ガス人間となってしまった水野も元の普通の人間に戻って藤千代と目出度く結ばれてくれたらと願うし、心からあの二人が結ばれることを望んで見ていた。その点が残念ではあるが、それでも素晴らしい映画に間違いはないと思う。最後にもう少しだけ言わせてもらうと、あの歌舞伎の場面、能の音楽を聞いてたら川島雄三監督の「しとやかな獣」が観たくなってしまった。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-02-17 13:26:45) (良:2票) |
30.ガス人間、確かに悪い奴なんだけど、俺は彼に同情しちゃったなあ。ラスト「たった二人で戦って行こう!」なんて台詞言うトコ、逆にクールでカッコ良かったし。こういうシチュエーションに俺は弱いんです、ハイ。この頃の八千草薫ってむきたてつるつるのゆで卵みたいな顔してて(←いや冗談じゃなく本当に!)すっごく綺麗ですね。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-05-26 10:45:54) (良:2票) |
29.正直なところ、この映画の場合、僕はタイトルのインパクトだけでほとんど圧倒されている。“ガス人間第一号”って、まさしくそのまんまなんだけれど、なんて潔くてオシャレな表題なんだろうと。そして、そのタイトルから滲み出る“B級科学映画”という雰囲気をさらりとかわして、繰り広げられる哀しい男の哀しい運命の物語に、予想に反した感慨深さが残る。若かりし故・三橋達也の男臭さ、美しい八千草薫の憂いに魅了されることも間違いない。 ところで、こういう映画がもし同じ時代にハリウッドで作られていたとしたら、間違いなく現在においてリメイクされているだろう。それをしない(むしろ出来ない)日本映画界は、やはり当時に比べて、特に娯楽映画の部分での進歩が無いというよりも後退が著しいのだと思う。 【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-05-07 03:01:32) (良:2票) |
28.最先端の科学の“落とし子”である男と、没落した日本舞踊の家元の女。よくぞ、これほど奇怪なカップルを誕生させたものです。しかも「この二人vs日本の社会全体!」という構図にまで物語は広がってゆくのですが。僕としては、なぜか犯罪者であり社会の敵であるガス人間側を応援してしまうのです。それは、彼が貫き通そうとする“純愛”に、ほだされたから。 “たった二人だけでも戦っていこう”っていうのに、僕は弱い。彼は社会を混乱に陥れる加害者でありながら、でも科学の進歩の犠牲になった被害者でもある、また新しい人類の誕生と捉えばガス人間はマイノリティーであり、被差別Xメンってことになる。同情しちゃうんです、この純愛、成就して!と祈りたくなる。でも…。二人だけの舞踊の発表会の後、「僕達、負けるものか」の台詞…ああ、そして次に見せる八千草さんの、あの眼!なんとも残酷な物語を用意してくれたものです。 【BUNYA】さん 10点(2003-11-13 06:45:17) (良:2票) |
27.《ネタバレ》 終わった瞬間、思わず「おぉー!」と唸ってしまいました。滅びの美学をコンセプトにした哀しくも美しい一級品の恋愛映画で、「昔の特撮モノ=子どもだましのしょぼい映画」という偏見を根底から覆してくれました。 ガス人間になってしまった水野が、藤千代の表現する美に魅かれ、藤千代自身にも魅かれ、そんな彼の一途な思いに命をかけて応える藤千代のすさまじい生き様。とても深い人間ドラマでありながら、不思議と重苦しさは感じられません。そしてラストのインパクトある締めくくり方! この独特のクオリティーは、現代の感覚や技術だけでは決してマネすることができない、当時の空気感・時代性からしか生み出せないような気がします。 また、舞台に立つ人間にとって、自分の芸に惚れ込んでくれる人というのは、自分自身を愛してくれる人以上に大切に思えることがあります。一流の舞台人を輝かせ続けたいという理由から犯罪を繰り返す水野の思いは、最後まで彼女と運命を共にした爺やの気持ちに通じるものがあり、舞台に生きる人なら少なからず理解・共感できると思います(踊りの家元という設定はそこまで狙ったわけではないと思いますが)。 自分が知っている八千草薫は「やさしい感じの上品なおばさん」というイメージでしたが、若い頃は、あんな目力のある凛とした女性(を演じることができる役者)だったことに驚きでした。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-12 21:04:00) (良:1票) |
26.《ネタバレ》 メロドラマにしたことで東宝特撮の変身人間もの3作では一番できがいいと思います。特殊能力を持った人間がその能力を社会のためではなく個人的欲望に使ったらどうなるかを、落ちぶれた舞踊家元への恋慕とからめたドラマ部が絶品です。昭和特撮になくてはならない土屋嘉男氏の代表作でしょう。彼の警察などへの不敵な態度と家元への献身的振る舞いの対比、若い八千草さんの美貌と悲しげな風情も、夜の場面の多い画の中で非常に印象的です。二人で社会を相手に戦う勢いのガス人間に対し家元はもはや生きる気力もなく、ガス人間には明かさずに心中を選びます。滅びの美学に満ちています。 【クリプトポネ】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-05-17 15:42:28) (良:1票) |
|
25.「ヘルボーイ」の主人公の上司がガス人間だったです。ひょっとして、ハリウッドがパクリ?まぁ、クリエイターなら、ガス状の人間って、よく思いつくコンセプトなのかもしれません。自分は小さい頃見た「ウルトラQ」に感動していたので、こういう映画は大歓迎。日本のSF映画は特撮なんかより、コンセプト面で進化して欲しかった。きっと「ウルトラQ」以降、アニメにSF感性を取られてしまったんでしょうね。この映画で思ったことは、たとえガス人間でも、一途に愛すれば、あんな美人でもなびくことがあるんだ、という事。でも女性のほうも半端じゃない。一緒に死のうとする。これだから日本の女性は怖くて美しい。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2011-02-11 22:39:19) (良:1票) |
24.《ネタバレ》 【ガス人間の犯罪】①彼の能力からして、銀行強盗に拳銃を発砲したり、殺しをする必要はない。失神させればよい。②ガス化しても声を出したり、札束を持てるのが不思議。③車で逃げる必要ないし、ましてや警察に追われて藤千代の家に行くなよ。④予告電話と殺害までした模倣犯の動機不明。 【水野】①体格不十分でパイロットの夢破れる。博士に実験に協力すればパイロットになれると説得される。騙されて怪物にされ、博士を殺害。②人生に絶望するものの能力に目覚める。③藤千代に恋するが、不器用で金銭で歓心を買うというアプローチ。殺人は平気で、恋だけが生きる希望。 【藤千代】没落した舞踏の家元。水野から金銭を融通してもらう。お金で元一門の者を雇い発表会を開こうとするが、水野との関係を知られ、元一門の者は去る。水野が全てを捨て、殺人までするほど愛してくれていることを知る。自身が人生に失望していることもあり、共感が愛に。しかし怪物かつ殺人者である彼と幸せに暮すことは不可能。愛の成就のために一緒に死ぬことを決意。結婚の約束をし、発表会終了後に無理心中。 【恭子】最初は藤千代の美しさに嫉妬していたが、次第に2人の恋に同情的に。藤千代に水野を説得して無茶をしないよう、又発表会を辞めるよう勧告。 【感想】隠れた名作。草深の庵、月光、蛍、鬼の面をつけた踊り、そして美女登場。道具立てが素晴らしく、美しい絵物語を見るよう。拳銃をぶっぱなす派手な銀行強盗で幕が開くが、中盤でガス人間の正体は明かされ、サスペンス要素は失せて、以後は恋愛物語に。水野の愛の大きさと暴走に戸惑う藤千代。男の正体と、本当に心から愛されていると知ってからの女の葛藤が見どころ。犠牲者達への責任も感じている筈。どうしようもない恋の行方は爆死という悲劇で終わる。日本的情緒たっぷりな結末。常識破りの恋である。じょうしき-し(死)=じょうき(情鬼)これは冗談で「情鬼=水野」。水野の人間性や葛藤があまり描かれていないのが残念。あまりにも自己中心的で、不敵な振る舞いをするので、共感しづらい。殺人は仕方なく犯す設定にすべきだったろう。警察の爆破装置のスイッチを外しておいたのは若い刑事だろう。それにしても藤千代はどうやって警察の計画をあらかじめ知ったのか?爺やを巻きこんだのはどうしてか。全てを知っている爺やの最後の演技に注目。全ては「古い家の没落」を象徴している。 【よしのぶ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2010-06-05 18:47:27) (良:1票) |
23.《ネタバレ》 本田猪四郎が撮った東宝特撮映画の傑作であると同時にクライム・サスペンスとしても一級の作品。若き日の八千草薫の美しさには見惚れてしまいますが、彼女の演技も他の東宝特撮映画のヒロインとはレベルの違いが際立っています。ガス人間は銀行強盗をくり返して犯行のたびに殺人を犯しているのだから普通の人間なら死刑間違いなしなのですが、「世間ではガス人間のせいにした横領や窃盗が多発している」という警察の嘆きが描かれ、ガス人間が存在すること自体が社会の秩序を乱しているので抹殺しなければならないというロジックが説得力を持って描かれていて感心しました。モンスターになってしまった男の苦悩と生きる希望がここまで切なく観る者の心を揺さぶるのも、土屋嘉男の名演のなせる技でしょう。当時の映画では『正義の味方』みたいに描かれることが多い新聞記者が、下品で軽薄な連中として描かれているのが面白いですね。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-12-11 02:20:11) (良:1票) |
22. わたくしめの見るところ、これは東宝円谷ものの隠れた最高傑作のひとつ。地味だけれども、ほかにはちょっとない深い悲劇性があって、すばらしい。なんといっても八千草薫の凛とした美しさ、くわえて左卜全のおちぶれた哀愁.....。本多猪四郎監督の誠実な演出があいまって、結構でした。 のちテレビ番組『ウルトラQ』に転用されることになる宮内國郎の音楽も、なかなか結構でした。 【goro】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-07-30 07:03:02) (良:1票) |
21.今にして思えば、このタイトルは陳腐以外の何物でもないし、「ガス人間」という発想自体が荒唐無稽を通り越すほどの物なのだけれど、いやぁ、良かったです。ここまで辛く、悲しい物語が展開されるとは、全くもって予想していなかったし、描写の重々しさや力のこもった演出、そして何より全編に渡って展開される悲恋物語…。この辺りは、さすが本多監督といったところ。現在では、隠れたB級映画として、知る人ぞ知る映画になってしまっているが、今、また再評価されて良い作品だと思う。 【ドラりん】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-05-28 00:24:16) (良:1票) |
20.マッドサイエンスによって生まれた怪奇人間の映画と言えば、僕がまず思い出すのはジェームズ・ホエール監督による『透明人間』と『フランケンシュタイン(の花嫁)』です。これらの映画が素晴らしく共感を呼ぶのは、彼らが凶悪で暴力的な顔の裏側に、大きな苦悩を抱えていたから。クロード・レインズの透明人間は凶暴なる自分に嫌気がさしていたし、ボリス・カーロフのフランケンシュタインは常に愛情に飢えていた――だからこそ恐るべき怪奇人間がときに本当の人間よりも人間らしく思え、僕らは感情を移入せずにいられなかったと思うのです。ところが本編のガス人間、自分を化け物にしてしまった科学者に対する被害妄想が強いばかりで、彼の表情から苦悩を読みとることはできません。日本舞踊の美人家元と愛し合っているのに、どうして犯罪を繰り返さなくてはならないのでしょう? 貢ぐために多くの人を殺して、それで彼女が喜ぶとでも思っていたのでしょうか? この映画で苦悩するのは当のガス人間ではなく、彼を愛してしまった女の方。したがって女性的な見方をすれば、辛く哀しいラブストーリーと位置づけられないこともないでしょう。それでもやっぱり前記の作品群と比べると、どうしても物足りない気がするのです。意欲的な特撮に八千草薫の美しさ、オシャレなクルマなど見どころはありますので、決して否定はしませんが……。ちなみに僕は、女性新聞記者を演じた佐多契子という女優さんの魅力に惚れ惚れしてしまいました。昔の映画って、女優さんがホントにキレイですよね。 |
19.《ネタバレ》 うーん…。いい映画を観た感はあるんだけど、それは土屋嘉男と八千草薫がイイ芝居をしていたからで、ちょっと俺の思っていた【東宝科学怪人モノ】とは違ったんですよねぇ。と。文句を言いつつも、マッドサイエンティストに人体実験をされた結果【肉体の変容とともに精神も変容していった男の悲劇】というクローネンバーグ的ホラー悲劇を見れたのでヨシとします。 そして…八千草薫綺麗すぎワロス (;´Д`)ハァハァ 【幻覚@蛇プニョ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-21 00:46:54) |
18.《ネタバレ》 五日市街道を横道に逸れ、山中にひっそりと佇むお屋敷。 夜更け、蛍が舞い、蛙が鳴いている。 そこで踊る八千草薫。 なんと幻想的なことか。 下手したら雨月物語に肉薄する幻想美。 このシーンだけでも特筆に値する。 ストーリーや設定は無茶苦茶。 そこには敢えて目をつむりたい。 【にじばぶ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-05 00:27:26) |
17.アマゾンプライムで発見! 八千草薫の美しさに尽きる、こんなB級カルト映画に出ていたとは意外でした。 只、役柄上でずっと沈んだ顔だったのが残念。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 6点(2021-02-28 00:21:42) |
16.《ネタバレ》 たまたまアマプラで見かけて見始めたら止まらなくなった。 かなり期待してなかったのだが意外に良くできてる。 当時の特撮技術で撮られたガス化シーンがホラーテイストでとても味がある。 今だったらリアルに映像化できるだろうが味気なくなってしまうように思う。 それと他人を利用して生きていく事を正当化してるのがクズすぎる。 全然同情できない。 だんだんと追い詰められていき逃げ場を失っていく悲哀みたいなのは感じた。 【Dry-man】さん [インターネット(邦画)] 6点(2020-06-07 11:49:55) |