4.新藤兼人監督ご本人が登場し、オレはマジなんだぞ、という顔をすればするほど、冗談としか思えなくなってくる、そんな映画です。
谷崎潤一郎の「春琴抄」の映画化。
春琴と佐助の二人だけの世界、もはや句読点すらも、その流れを留まらせることは出来ない、ということなのかどうなのか、とにかく、独特すぎる文体で描かれる、独特すぎる世界。
それを映画化するんだから、相当、独特のコトをしなきゃ、ってことなんだとしても、いやはや、随分と気色のワルい映画にしたもんです。
それともこれこそが新藤兼人スタンダードなのかも知れんけど。
白塗り顔のオバチャン(乙羽信子)が語る春琴の姿は、さらに白塗りで、綺麗だとか神秘的だとか言う以前に、ただ不気味。昔話として語られていた二人の世界が、ラストのオバチャンの三味線の演奏によって現代とリンクする、と言いたいところだけど、イマイチこのシーンが効果を上げているような気がしません。
映画全体を通じ、描写がエキセントリックな方向に走りすぎて、かえって起伏が乏しいような。