5.《ネタバレ》 邦画界隈における「新人監督のデビュー作」という点では、増村保造「くちづけ(’57)」の次に好きなこの作品。成瀬己喜男/マキノ雅弘/本多猪四郎等の助監督業をしてた岡本監督のデビューのきっかけは、当時文学界における脅威の新人石原慎太郎が「自作を監督として映画化する」という企画を東宝経営陣が立てた事。素人が映画を撮る事に猛反発した所属助監督たちがストライキを起こしそうになった為、上層部は助監督の中から監督デビューをさせる折衷案を示し、岡本監督が推薦を受けたという流れらしい。ただ準備にはあまり余裕の無い状況で(手間がかかるだろう)好みである西部劇/フィルム・ノワールでは無く、急ぎで脚本を書いたこの艶笑劇が第一作となったわけだ。 この映画の欠点を話してしまうと「新しい恋愛のかたち」を求める新劇女優の卵/雪村いづみを主演とし、その姉役として朴念仁である夫(上原謙)から得る愛情の薄さに悶々としている人妻/新珠三千代、二人に巻き起こる理想の恋愛・結婚の行く末を描いた話なのだけど、主演の雪村いづみよりセックスレス(どうみても)に悩み、周りの状況によろめきやすい新珠三千代の話の方が流れとしてメインになってしまっている為、「で新しい恋愛は?」と解決しないままラストになるのが自分にはちと惜しいのでこの点数。但し私がこの作品が好きだ、というのはまず「喜八節」と呼ばれる細やかなカット割り/マッチカットの鮮やかさ、そしてユーモア溢れる可笑しさが処女作から見受けられるところ。庵野秀明にも多大な影響を与えた点、楽しんでいただきたい。そして最後に新人監督の作品にしては物凄く配役が豪華な事。小林桂樹/ナレーターだけで笑えるのに中丸忠雄/三橋達也/藤木悠/佐田豊/田崎潤/ミッキー・カーチスといった、後の喜八組の面々。三船敏郎+仲代達矢には驚かされた。天本英世とか岸田森がいないかなと探しちゃったよ。今年2022年10月に初の廉価版DVD発売。機会が有ればぜひ。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 6点(2022-08-01 06:04:35) |
4.岡本喜八監督のデビュー作は何と男臭い活劇が得意な監督からは考えられないような女性映画になっていて驚かされた。出ている俳優陣の顔ぶれを見ると、如何にも岡本喜八監督が好みそうな感じ、後の岡本喜八監督作品に出てくる俳優やら日本映画全盛期の頃の顔ぶれやらと色んな顔ぶれが見られるという意味で貴重な映画でもある。台詞回しのテンポの良さは既にこの監督デビュー作から見られる。テンポが良いのでただでさえ短い上映時間がより一層、短くも思えてしまうぐらいです。ただ岡本喜八監督らしい才気や爆発的な面白さはまだここでは影を潜めている。ところで三橋達也と新珠三千代の二人が同じ映画に出てくると、どうしても川島雄三監督の顔が浮かんできてしまいます。団令子もこれまた川島映画を思わせるが、団令子ってそういや岡本喜八監督の傑作「血と砂」での印象が物凄く強烈に残っていて、ここでもこの女優が出てくる女優さんの中ではダントツに面白い上に魅力的である。これで遂に岡本喜八監督のデビュー作と遺作の両方を見たことになる。岡本喜八監督による女性映画ももっと見たかった。そう思われるのは私だけじゃないはずです。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-12-19 22:13:30) |
3.《ネタバレ》 この監督らしいと思ったところは、歩行シーンに合わせてラジオの時報のポ・ポ・ポが重なり、次のポーンでラジオのある茶の間のシーンにブリッジするとこ。まったく無意味なおかしさ。あるいは団令子が鉄工場のリズムに合わせてお尻ふりふり帰ってくるカット。ああデビュー作からして、こういう無意味なリズム合わせの好きな監督だったのだ。虫の音と炭坑節が対比されたり。ただドラマとしての決着は、同時期で似たタッチの崑の鋭さと比べるとかなり保守的で、旧世代の新世代めぐりを経、最後は旧世代に寄った視点が確保されている。脚本は白坂依志夫、白坂はこの年『巨人と玩具』の脚色も手がけてるんだけど。若水ヤエ子がいい。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-11-08 12:11:20) |
2.「結婚のかたち」についての考え方を主題にし、新珠三千代と上原謙の「見合い夫婦」、新珠の妹の雪村いづみと三橋達也の「自由恋愛」の考え方・ジェネレーションギャップを対照的に強調して描いていて、これを早台詞でテンポが早く、かつ、コミカルに。また、各テロップも同時に進行させ、音やリズム・画の同調で繋いでたりと、とにかく小気味よい。これらに驚き、気持ち良く鑑賞できた印象があります。上原謙に、新珠、三橋達矢に団令子・仲代達矢など、監督デビュー作なのにキャストが豪華。ナレーションは小林桂樹。三船敏郎もチョイ役で登場。新珠三千代がこんなに美しいとは。私もNFCで鑑賞しました。DVDでもう一度観たい作品です。上映後に、主演の雪村いづみさんと岡本みね子さん(岡本監督の奥さん)を交えたトークショーがありました。(NFC「岡本喜八特集」) 【サーファローザ】さん [映画館(邦画)] 7点(2007-10-11 15:20:49) |
1.東京京橋フィルムセンターの岡本喜八特集にて先日鑑賞。デビュー作という事ですが、その後数多くの著名作品を送り出されたこの監督の才気を充分感じさせてくれる、勢いある面白いプログラムピクチャーに仕上がってました。新珠三千代という女優さんは、自分の世代だと、映画女優としての全盛期も知らないし、かの有名なドラマ「細腕繁盛記」にも縁がなかったので、女優としてのイメージがいまいちはっきりしなかったんですが、これまで観た映画が全て傑作秀作揃いなんで正直びっくりしてます。この映画でも、一応主役の雪村いづみを完全に喰っていて、彼女なんて脇でちょろちょろしてる小娘にしか見えません。ストーリーは結婚という形態の旧世代、新世代の考え方の相違を問うというテーマになってるんですが、上原謙&新珠組旧世代派の演技力存在感が圧倒的なので、雪村いづみ代表の新世代組がまるで霞んでしまったいう結果に。「ジャンケン娘」では結構可愛かった雪村いづみがイマイチだったのが残念。世界のミフネがほんのちょい役で、ゲイ風の舞台演出家として顔を見せているのもお楽しみ。顔が濃い仲代も、ごくフツーの善良な役なのに、何かたくらんでるみたいで怪しい事この上ないW。鬼才川島雄三映画の新珠三千代をすごく観たくなってきました! 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 7点(2006-12-03 12:11:09) |