20.《ネタバレ》 まんまとハメられました(笑)でもそれはこの映画の評価には影響を与えません。
騙される映画は深読みしすぎず一度素直に見て騙されてないとおもしろさ半減と言う事にするとして…。
この映画、ミステリーでもあると言われて居る訳ですが
そこに巧妙なトリックがあるわけではありません。ミステリ小説、百戦錬磨のような人からすれば
簡単に見破る事でしょう。後々考えると伏線も多めですから。
ただ、私の好みは、複雑怪奇な知恵の輪を解くような複雑なミステリ物よりも
むしろトリックは単純でもそのトリックが見ている者にどのような影響を与えるか、または物語に
そのトリックがどういう影響を与えて居るかの方が重要で、この映画でそれは成功している。
そう思えます。ただこの映画の残念な所はミステリを強調しすぎているがゆえに
トリックを見破る方に関心を向けさせててしまっている所が少し残念な所でしょうか。
ミステリ好きが手に取るには物足りないでしょうし、後で騙されると言うオチを知って居る以上
答えを聞いたとき驚きよりも「ああ、そう来たのね」という心境がつよく効果半減でしょうか。
しかし、それらを差し引いても、この映画はとても面白かった。
映画のタイトルになっているイニシエーションラブ。つまり通過点の恋愛を題材にしている事が面白くしている。
過去を振り返った時、特にあの時代に生きた人は男も女も主人公達の姿に少し既視感のような物を感じないだろうか。
多くの人が最初の恋愛は不慣れで、相手の心より自分の気持ちを優先したり傷つけたり傷つけられたりするものだ。
堕胎はともかくとしても、これらの話には多くの人が多少なりとも身に覚えがありそうな話。
デブでいけてなかったハズのたっくんが、少し社会を知ったからって生意気にも・・・。
前田敦子の不幸な境遇を見を見せる事で、一方では可哀想と思いながらも
もう一方では自分の過去の様々な出来事を思い出しモヤモヤしたものを感じさせる訳だが、
最後の最後でトリックのネタバラしで女性のしたたかさを解き明かされる事によって
モヤモヤを感じていた自分の事や様々な事が、ちょっと馬鹿馬鹿しく思わず笑い飛ばせるような。
そんな仕上がりが何とも上手いと思いました。また、80年代後半に設定した事も上手いと思いました。
このストーリーは平成生まれのラブストーリーでは共感を得られる人が減っている気がする。
今となっては、その年代の恋愛は、昔話のおとぎ話になっている訳ですから。
物語の続きは描かれて居ないが自然と物語を心の中で勝手に描いてしまうような、そんな巧妙さがある。
そして、その物語の続きは人によって違うのだろう。
前田敦子と松田翔太にとって二人の恋はイニシエーションラブだった。
松田翔太は実直な青年だったが都会に出て住む世界が変わっていき気持ちが離れて行く事を感じるも
それを受け入れるしかない悲しい結末の見えた恋。日頃の報われない寂しさを
何でも自分の思い通りに動いてくれる夕樹君を手のひらで転がすことで心の穴を埋めている部分もあったのだろう。
結果的にもう一人のたっくんが現れた事により、様々な事を知り悟ってしまう。
人生初の女性と過ごす幸せなクリスマスに、こんな過酷な現実を突きつけられるとは・・・。
夕樹君もまたイケメンとは違った形のイニシエーションラブの真っ最中・・・嗚呼・・可哀想・・・。
しかし彼は大手企業に内定を貰って都会に行くことが決まって居る。また新しい環境で色々あるのかな?
なんて私は物語の続きを、そんな想像で締めくくりました。とても面白い作品でした。