1.登場人物たちの会話が実に小気味いい!
軽妙洒脱で、聞いているだけで面白い。
それは決してデリカシーの欠けたものではなくて、相手に対する深い思いやりが感じられる。
大人の複雑な世界を描いた内容なので、言葉を選ぶべき会話が多く登場する。
デリケートな話題については、ストレートに話さず、日本語を柔軟に駆使して、うまくかわしていく。
口八丁でごまかしているとも取れるかもしれないが、どちらかと言うと、相手に対する配慮という意味合いが強い。
この辺の、日本語の妙というか、言葉の使い方、話の逸らし方、褒め方等、作品全体が人に対する優しさで溢れている。
時代の違いと言えばそれまでかもしれない。
しかし、この映画から学ぶべきことは多い。
特に匿名インターネット掲示板などでよく見かける、相手を傷つけるだけの発言。
これとは正反対の世界だ。
内容で一番印象的だったのは、血縁関係のない家庭で幼少期を過ごすということ。
この時代では、案外、よくあった話なのだろうか。
だとしても、実に辛い話だ。
結局、大人になった段階で、誰からともなく知らされる事実。
両親だと思っていた人が、実は血縁的に他人だったという、衝撃の内容。
でも、実の親と今さら会ってみたところで、どうこうできるものでもない。
でも会ってみたい、いや、やっぱり会いたくない。
複雑な思いが交錯する。
その辺の機微を、切なく描く。
強いインパクトを残したり、唖然とさせられたり、余韻をずっと残すといった作品ではないかもしれないが、
人間の持つ孤独感、孤独を知っているからこそ生まれる愛情を、実に丁寧に描いた日本映画である。